15話 モナ・ルビー24時
モナの一日を書いてみました。
ーーーモナ・ルビー視点ーーー
朝、鐘の音で眼が覚める。
ここ、ルノアール王国にあるスラム街は、常夜の街として有名だ。夜はもちろん、昼も王城が影になり、日の光が届かない。
なのでここの住人は毎日6時、9時、12時と言うふうに3時間毎になる教会の鐘を基準に生活している。
《明かりよ灯れ》
魔法で明かりを灯す。
カーテンは常に締めてある。窓を開けてたところで入ってくるのは日の光ではなく歓楽街の明かりだけだ。
人間とは逞しいもので、政府や役人の手が入らないのをいいことにスラム街には色々な店が軒を連ねている。
歓楽街を筆頭に売春宿、危ない薬品を売る店、不法奴隷、ひいては個人的な趣味全開の店まである。
たまに役人が歓楽街に入り浸っていたりするらしい。興味はないが……。
そして月に一回、3日間、大規模な闇市が開催される。
かく言う自分もその闇市で流れる薬品や素材が目当てでここに住んでいる。
この前も闇市で流れていた椿の香油を使ってシャンプーを作った。
朝、目覚めてはじめにするのはシャワーを浴びることだ。シャンプーからはいい香りがする。やはり作って正解だった。
「ふぅ……」
シャワーから出ると、髪を乾かしながら、作り置きしていたスープとパンを温める。
《暖かく冷たき風よ吹け》
《温まれ》
髪を乾かす時は暖かい風と冷たい風を交互に使うとツヤツヤになると最近知った。
「いただきます」
そのまま朝食へと移行する。
ここまでが毎朝やっているルーティンだ。かれこれ数十年になると思う。
「ご馳走さまでした」
食器を片付けると、今度は身仕度をする。今日は月に一度の闇市の日だ。
服装は
「うーん、今日は青コートの気分じゃな」
上は青に映えるように白のニット・セーターにする。
パンツは何にするか迷ったが、濃紺のデニムパンツをロールアップにしてはくことにした。
ベルトは茶色にしようかな?
そして青のステンカラーコートを着る。
靴は青に映えるよう、ベルトと合わせて茶色のブーツを履くことにした。
帽子はデニム生地のキャスケットをかぶる。
荷物入れ用に黒のカジュアルなリュックを背負う。
「まぁ、こんなもんかの?」
ちょうど9時の鐘が鳴った。闇市は10時からなので、出るには丁度いい時間帯だ。
「いってきます」
鍵を閉めてモナは家を出た。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
スラム街は常に破壊と再生を繰り返している。昨日まであった店がなくなっていたり、いつのまにか店が建っていたりする。
一年後、旅から帰ると違う場所になっていたなんて当たり前のようにある。
それは、魔法による建築の高度化によるものだ。
何故そんな話をしているのかと言うと、
「こんな店、昨日まではなかったよのぉ?」
ビキニアーマー専門店が開業していた。
「ま、すぐに無くなるじゃろう」
そもそもビキニアーマーなんて誰が着るのだろう?局部しか守っていないし、なんなら布の服の方が優秀なくらいだ。
そんなことを考えいると、太ったハゲの男に話しかけられた。
「ヘッヘッヘッ、お嬢ちゃんちょっとお時間いいかい?」
レザー生地の服と、トゲトゲ肩パットの世紀末のような服が似合いそうな男だ。
「なんじゃ?なんかようか?」
「実は最近自分の店を開いたんだ。それでよぉ、開店記念サービスとしてふくを丸々一着プレゼントしていてな?」
「なんじゃと!? タダでか!?」
「そうなんだ、ちょっと寄ってかないか?」
モナはタダという言葉に釣られてその男について行った。
…………ダダより高いものは無いという言葉を忘れて……………
長いので一旦ここできりますね。