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ホムンクルスの考察

実は、”コボルト無双”や”蘇り転生の魔王”の元型でもある作品です。

ユニークで100pvとあまり読んでいただけませんでしたけど(笑)


その時に、読んでいただけた多分100名の皆様に感謝です!!

人生は才能と努力と結構な比率の運で結果が出ると思う。才能だけで万事を成せるはずはなく、努力は必要である。されど、努力のみで結果が出るかと言えばそうでもない。要するに才能と努力の組み合わせが肝要である。


そこに加えて運という不確定要素が絡んでくる。才能は十分、努力も厭わない、でも病気で短命に終わるなどの傑物も世の中にはいるだろう。結局のところ自身に与えられた環境下で生き足掻くしかないのだ。恨み事を言うよりも、一歩前へ!


まぁ、そう簡単にいかないのが心を持った人という生き物だろうけど…


その点で考えるならば、コルト・ベアリット(29)の人生は恵まれていたと言えるかもしれない。ごく普通の商家に生まれ、仕事の合間に学問を学び、魔術の才能があったようで遅ればせながら国立の魔術学院に進学し、それなりの成績で卒業したのち現在に至るまで魔術師として生計を立てている。


ただ、何をしても大抵は人並み以上にこなせるのだが、何をしても一流にたどり着けない。器用貧乏というやつである。より高みが見える位置にいるのにいつも手が届かない、その無力感に苛まれるのは贅沢なのだろう。


「つまり、俺の才能は総じてその分野で100人いれば7番目ってところだ」


思わず独り言が口から出てしまう。まぁ、魔術師自体、そんなに母数はないんだが……


7番手という数字は一見、それなりに色々とできそうな印象はある。が、ちょっと考えて欲しい。1000人いれば70番手、1万人いれば700番手、微妙に半端である。もっと言えば、町や都市にある初等学校で考えると大体が30~35人を一組単位とするので、その組で2番手となる。小規模集団ですら2番手なのだ。


こういう言い方をするともっと後方の方々から怒られてしまいそうだが、実に微妙な位置取りである。事実、自分には何かが成せるのではないかと、公的な研究職や魔術師として雇ってもらえる様に色々と東奔西走したものだが、運が悪かったのか実力不足なのか、どれも上手く行かなかった。


ただ、衣食住に当面の問題がないという環境があれば、趣味…… もとい個人的な研究に時間とコストを費やす事ができる。幸い、近年の人類の発明である魔導銃は生活を楽にしてくれた。これに使用する“銃弾への魔力籠め作業”は魔術師達にとって金の成る木なのだ。


魔霊銀で出来た小円柱の先に窪みを作り、そこに鉛玉を乗せ、その接合部を樹液性の接着材で固定したものが銃弾である。その魔霊銀部分に魔力を凝縮して籠め、一定以上の衝撃を与えると籠められた魔力が魔霊銀から開放される状態に仕立てる。これが“銃弾への魔力籠め作業”だ。


それを黒鉄製の魔導銃に装填し、撃鉄を上げて引き金を引くと銃弾の魔霊銀部分に衝撃が与えられる。そして、魔霊銀に凝縮して籠められた魔力が開放され、その際の圧力が先端部の鉛玉を銃身から高速で射出する。その命中精度に多少の難があるが、その威力と射程は既存の武器を凌ぐ。


この武器の画期的なところは誰でも使用できる点にある。一見すると、魔術師の活躍の場が減りそうだが、銃弾に魔力を籠めるのは魔術師であり、その手の仕事はここ数年、着実に量を増してきている。


近年、数で勝るがその質に於いて他種族に劣るとされる人間がこの魔導銃を量産する事で勢力圏を広げているらしい。今はその使用が限定的だが、今後は改良を重ねて戦場の主役となるのだろうか……


「ま、食うに困らん以上、世情はどうでも良いけど」


では、本題に移ろう。

何の話かと言いうと、人工生命の錬成における考察である。


この世界の様々な生物は少なくとも生命の根源を宿している。それは種族ごとに異なる特質を持っており、種族的な特徴を決定づける。この生命の根源、及び其処から派生する魔力には“種の生命図”、個を越えて無意識の深層に存在する先天的な“種の元型”が含まれるとされる。


「血液を媒介した魔術による賢者の石の錬成実験において、偶発的に有機生命が生じた事例も、恐らくは魔力に内包される“種の生命図”、“種の元型”が影響していると考えられる」


過去、偶発的に人の手で生み出された人工生命の記録も極少数ながら残っている。それは人工の精霊や、強大な魔力を扱う超人として記されており、歴史上に出てくる砂漠の賢者も造られた存在であったと自ら語っている。


「なお、魔力は一部の鉱石に籠める事が可能である。それに魔力を凝縮していけば、より精度の高い“種の生命図”、“種の元型”が含まれるのではないか? それこそ、生命の錬成が可能な程に……」


人工生命の錬成の核となる緋色のガーネットには限界を超えない様、注意深く魔力が籠められている。その籠められた魔力は数年を経て凄まじい密度になっている。この緋色の魔石を俺はその目的から“生命石”と名付けた。


「ここで言及しておくと、魔力から構築される魔術も鉱石に籠める事ができる。そこに籠められた魔術に指向性を与えて発動させる事が可能だ」


因みに、教会の連中は魔力を神力と称し、魔術を神術と呼ぶ。この神術を鉱石に籠めたものは聖石であると主張している。今回は生命石の他に、高位の代謝促進系神術が込められた聖石も用いる。


俺に回復系統の資質は無かったので、近隣の都市の教会で購入してきた。因みに、高位神術を籠めるためには品質の良い鉱石が必要であり、結構な出費となったが……


そんな事を考えながらも実験の準備を進めていく。

主に用いるのは生命石、自らの血液、聖石、水である。


今まで、様々な条件を少しずつ変化させて実験を行ってきたが、結論から言えば成果は芳しくない。しかし、全くないわけでもなかった。もちろん、何も反応が起こらないケースは普通に多かったが、最近は生命石に込められた諸々が何かしらの閾値を超えたのか、実験に用いた血液から数ミリ程度の小さな器官の錬成に至るという進展もあった。


「前回、そこで錬成が止まったのは水が足りなかったからだと予測する。そもそも生命は海より生じたとされており、水は大切な要素だ。胎児も体重の90%は水だからな」


前回の結果を考察しつつ、実験に取り掛かる。


「さて、始めるとするか……」


先ず、自身の血液が入ったガラスの容器に緋色の生命石を入れる。暫し意識を集中し、魔力干渉による操作にて、容器の中身を浮遊させる。そして、緋色の生命石に濃縮された魔力を血液と溶け合わせつつ、聖石を握り込み、魔力干渉を起こして代謝促進の神術を発動させる。


この状態を維持しながら、生命石の魔力を血液に注ぎ続けるとその血量が増して、生命石を取り込み血球状となる。さらに用意してあった水を魔力で操作し、その外殻として纏わりつかせて、血と水の二層構造のスフィアを形成する。やがて血液が蠢き何かしらの器官を構築し始める。


「………」


外殻の水の層が僅かに薄くなる様を見て、それが何かしらの活動に消費されている事を確認しながら、追加で代謝促進の神術が籠められた聖石を発動させるとそれは唐突に起きた。


「…… っ!」


次々と数ミリ程度の小さな臓器が出来上がり、60㎜ほどの胎児が形成される。生命石から魔力が凄い勢いでその胎児に吸収されていく。次第にその生命力は強まっていき、外殻となっている水の層を消費しながら、その胎児が急速に成長する。やがて、赤子となり、幼少期を経て、思春期の頃合いで成長が止まる。


気が付けば、一糸まとわぬ少女が実験室の床に倒れていた。


「………、成功、か?」


目の前で起きた現象がいくらか意図していた事とは言え、直ぐには信じられない。早まる鼓動を抑え、その少女に近づき、少し震える手を伸ばしたその時……


意識が無いように見えた少女がおもむろに顔を上げ、逆にこちら側に色白の手を伸ばす。その美しい銀髪と整った顔立ち、緋色の瞳に見惚れている間に彼女の手が頭に添えられて……


「グッ ―――― !?」


突如、激しい頭痛が起こり、体の自由が効かなくなる。動揺しつつも状況を把握しようとするが思考は纏まらない。薄れていく意識の中で、頭の中を好奇のままに覗かれている異様な感覚がある……


「……っ、精神干渉(マインドハック)かっ!」


その認識を最後に意識が途絶えた。


………………

………

読んでくださる皆様には本当に感謝です!!

一応、10万文字、小説一冊分程度の第一部を連続して投稿する予定です!!


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