表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/11

花村はにやりと笑った

9


え?嘘でしょ。

ぜんっぜん知らなかった。


あたし、もう一度ベンチに座る。


「物凄い束縛したがるから、俺から別れようって中二の時にフったんだけど、ちょくちょく連絡とか来たり、家に来たりしてたんだよね」


「……証拠は?」


「ない。まあ、信じなくてもいいや。これで、お前が来なかった理由がわかったから」


来なかったって言うのは、卒業式の日のことだろうか。


「で、でも、ちゃんと写真だって送られて来てたんだから。あたしがあげたチョコがゴミ箱に入ってる写真」


「あの日、お前からもらった後、鞄の中に入れておいたんだけど、帰ったらなくなってた」


「……ま、まなえが?」


「多分ね。俺、それがどうしてもお前に言えなかった」


うーん、嘘言ってるようには見えない。


というか、昔から五十嵐は嘘が下手くそだった。

からかい方もど直球だったけど、人の褒め方もそうで、素直にあたしの考えを認めてくれる奴だった。


そっか……なんだ。


「卒業式の日に、全部話すつもりだった。でも、メールの返事も卒業式の日も来なかったし、成人式では逃げられるし……そういえば、お前のあの時の逃げ方凄かった。よく振袖であんなイノシシみたいに走れ……」


「うるっせえんだよ!!」


イノシシってなんだイノシシって!!


「……ぷっ、あはは」


あたしと五十嵐、お互いに顔合わせて笑う。


ばっかみたい。

ほんと、女って男絡むと面倒なんだよなあ。


……あたしもそうか。


「俺さ、中学の頃、お前のこと好きだったよ。お前と話してる時が、一番楽しかった」


「……他の男子たちにからかわれて、迷惑そうにしてたくせに」


「俺もまだガキだったんだよ」


違いない。

あたしも五十嵐も、あの頃は自分の世界を守るために必死だった。


「んじゃ、俺そろそろ行くわ。久しぶりに会えてよかった」


「あっ、あたしも花村のおつかいの途中だった」


「お前、いい友達持ったな」


「え?」


「俺のことここに呼んだの、あいつだよ」


……はっ?

あたしの話聞きながら端末いじってたのって、もしかしてこいつのこと呼び出してたの!?


うわ、謀ったな花村の奴。


「今度俺が働いてる店、遊びに来いよ」


「ああ、そのうち行くーーそれじゃ、ね」


あたしは、五十嵐に背を向けた。


「なあ、月川」


と、再び五十嵐に声をかけられて振り返る。


「彼氏、大事にしとけよ」


「……おう」


あたしは、左手の薬指を見せびらかしておいた。


「食わせ過ぎて太らせねえようにな!」


「うるせえ!ばーか!」



そうして、あたしと五十嵐は、笑顔で手を振って別れるのだった。



買い物を終えて、花村宅へと帰宅後。


「おっせえわ!」


戻って早々、花村にどやされた。


「さーせん。ーー花村、あとでちょっと台所貸して」


あたし、スーパーの袋をどすんとテーブルに置く。


「チョコ作る」


花村はにやりと笑った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ