中学二年の頃だった
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ーーあれは、中学二年の頃だった。
あの頃も、今ほどではないけど、周りと比べるとあたしはデブで、周りの異性から悪口を言われたりするのは日常茶飯事だった。
でも、五十嵐和馬って元男友達だけは、まともに、あたしを人間扱いしてくれた。
読書が趣味で、たまに本の話とかで盛り上がったりもした。
そんな話してくれんのは、周りの女友達にもいなくて、あたしにとっては稀少な存在だった。
中学三年になると、クラスが分かれて、わざわざ会いに行くようなことはしなかったけど、仲がよかった女友達が五十嵐と同じクラスだったから、その子に会いに行くついでに五十嵐とも話した。
……いや、どっちかといえば、女友達は五十嵐に会いに行く口実だったかもしれない。
あたしは、五十嵐が好きだった。
ただ、自分の身の程はわきまえてたから、付き合いたいとか、告白しようとか、そんなことは考えてなかった。
こうやって、話ができる存在がいてくれるだけでよかった。
しかしながら、中学生って多感な時期なもんで、五十嵐の周りの男子たちは、あたしと一緒にいる五十嵐をここぞとばかりにからかった。
「五十嵐、女の趣味わっる!」
とか言われてる五十嵐を見て、あたしはキレたことがある。
でも、
「は?お前のことなんか話してねえし?きっもwww」
だとか屁理屈言われて、さらにからかわれるだけだった。
五十嵐は五十嵐で、物凄い迷惑そうにしてたし、あたしも申し訳なくて、自分から五十嵐に話しかけることはしなくなった。
それから、そのまま卒業式間近のバレンタインの日。
あたしは、なんとか、卒業してからも五十嵐と友達でいたくて、バレンタインの日に手作りチョコを持って行った。
もちろん、女友達たちの分も。
それで、「余ったからやるよ」って、ものすっごい可愛げなく五十嵐に渡した記憶がある。
「お返し、期待してっから」
とかなんとか言って、そのまま他の男子友達に見られてない間に逃げた。