ぐっどらっく!
10
「花村、巧さんになんて言って渡すの?」
「ストレートに好きですかな」
「告白すんの!?」
「なんのために作ったと思ってんの?」
「いや、それにしては冷静だから……」
「冷静じゃねえよ?」
煎餅をラッピング袋に入れる花村の手は、ぷるぷると小刻みに震えていた。
「あの……あたしにできることは?」
「うちが逃げ出さないように、待ち合わせの駅まで一緒に行って」
「承った」
ということで、あたしと花村は各々手作りの煎餅とチョコを持って駅に向かった。
駅へと向かう途中、何度も帰ろうとする花村を引き止めるのが大変だった。
「ほらもう駅だから!もう直ぐそこ!」
「あー!やだやだやだやだ!フラれたら生きられない!!」
「大丈夫!ダメでも明日は来る!」
「そういうことじゃない!」
巧さんとの待ち合わせ時間まで、あと数十分ある。
しばらく花村の相手してたけど、そろそろお邪魔になるから帰ろうと花村から離れた。
「じゃあね?あたし、帰るからね?ちゃんと巧さんに渡すんだよ?」
「……うん」
「報告待ってるから!ぐっどらっく!」
そう言って、あたしは花村と別れた。
なんか、こっちまでドキドキすんなあ。
あたしは後ろ髪引かれながら、宗旦狐が待っているであろう家に戻った。