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7話

更新が遅くて申し訳ありません……orz

そしてご報告がございます。なんと読者の皆様のおかげで日刊ファンタジーにて45位を獲得させていただきました!

本当にありがとうございます!!


では第七話をよろしくお願い致します(*・ω・)*_ _)ペコリ

 聖ディーレイラ女学院。王都ステイル三番街貴族地区の中心に設立されたこの学院は、中流貴族から上級貴族、王族までもが通うお嬢様専用の学院である。

 王国一入学が難しいと言われているこの学院だが、卒業後の就職率が高く、通っていただけでも箔がつく名門学院だ。

 しかし毎年各国中から貴族の令嬢が受験をしに来るのにも関わらず、倍率は二十人に一人しか受からないと言う鬼畜仕様である。去年も百人という募集人数に対して約二千人の受験生が王都に訪れ、王都中が貴族の馬車で溢れかえったという。


 ミネラス公爵家令嬢であるサラシャ・フォン・ミネラスはこの学院に今年首席合格した。


 そして入学式当日。


 ……………………。

 …………。

 ……。


 聖ディーレイラ女学院の敷地内にて男性と女性の口論が繰り広げられていた。


「お嬢様、他の生徒の皆様が見ています。私の腕を離して下さいっ」


「いやっ」


「いやっ、って子供ですか! お嬢様にはミネラス公爵家の御令嬢という自覚を……」


「そんなの気にしなくても良いじゃない。ここには私とデリトしかいないし」


「お嬢様の目は節穴ですか!? どこを見ても生徒で溢れかえっていますよ!」


「えへへ~」


「褒めてません!」


 この男女こそ、今年の首席合格者であるサラシャ・フォン・ミネラスとその従者、デリトである。

 二人は入学式が行われる大広間に向かう途中だ。

 最初はいつものようにサラシャがデリトと腕を組みたがっていただけだった。だが普段の買い物ならともかく、今回は貴族の令嬢が各国から集まるため、常識と公爵家令嬢としての品性を考え、デリトはサラシャを思いやんわりと断ったのだ。


 しかしなんとしてでも腕を組みたかったのかサラシャが命令として「私と腕を組んで」と言ったため、どうしても断ることが出来ずにいたデリトは妥協点として「学院に着いたらおしまい」と言う約束をしたのだが……。


「え~、じゃあ入学式終わったら、ね?」


 今現在は諦めたものの、入学式を終えてからと言う交渉をしてきた。

 彼女はかわいらしく小首を傾げ、上目遣いで見つめてくる。その様子は見るものの心を奪い、思わず惚れさせてしまうような綺麗な笑みだった。

 しかしデリトは、


「ダメです」


 サラシャの笑顔に自分も笑顔で返すとばっさりと切り捨てた。デリトは幼少期からサラシャに仕えている身、それ故大抵の笑顔や表情の変化はもう見慣れているのだ。

 これに対してサラシャは口先をツンと尖らせ、拗ねてますアピールをした。


「……けちんぼ」


「何度言ってもダメなものはダメです。それよりもお嬢様、後七分ほどで入学式が始まります。急いで大広間へと向かいましょう」


「はぁい」


 若干項垂れつつもサラシャはデリトの腕を放すとデリトと共に大広間へと足を運んだ。




 ☆★☆★☆★☆★




 入学式はつつがなく進み、新入生代表の答辞も終えたため、残るは生徒会長の挨拶のみとなっていた。


「生徒会長のフィリア・ティン・ラームスと申します。今年の……」


 生徒会長の挨拶が始まる。

 新入生答辞は当然首席であるサラシャが務めたが、その感想を一言で表すとしたら「完璧」だろう。


 サラシャは見た目もさることながら、すべての一連の動作が美しいのだ。


 序盤では挨拶の腰の曲げ方からして他の生徒とは違った。斜め四十五度、これを完全に完璧に再現できるとしたらそれはもう大人の領域だ。

 デリトが大広間をパッと見たところ、それが出来るのはサラシャと生徒会長を含めて数名と行ったところだ。


 そしてサラシャの聞いていて心地の良い柔らかな声は、新入生や教師、もちろんデリトも聞き惚れるような、まるでお日様に干したふかふかの布団に包まれるかの様な安心感をもたらした。


 サラシャは一回も噛むこと無く自分に任された新入生代表の答辞という大役を務め終え、盛大な拍手に包まれて壇上を降りた。

 このように始めから終わりまでの流れは、本人の持つ可愛さをベースに美しい動作を伴って「完璧」と言わせるだけの理由となったのだ。


 ……本人(サラシャ)はただデリトに自分を可愛く、美しいと思わせるために必死に練習しただけ。そのことはサラシャと練習につきあってくれたメイド(王都に買い物に行くときにレティキュールを用意して待ってくれていた人物)のみぞ知る秘密なのだ。


「……以上をもちまして生徒会長としての挨拶とさせていただきます」


 生徒会長の挨拶が終わり、大広間がサラシャの時と同じくらい拍手の海に飲まれた。

 デリトがそれを見届けていると、最後に生徒会長――フィリアは壇上からはっきりとデリトの目を見て(・・・・)微笑んだ。


(ん……? こちらを見ている? フィリア・ティン・ラームス様は確かラームス公爵の御令嬢だったはず。そのようなお方が何故私のような一介の執事に……。以前からこちらを知っている、いや、まるで親しい友人(・・・・・・・・)に再会したかのような……、謎です)


 少なくともデリトの記憶には彼女と知り合った記憶は無い。

 デリトは何かに対して不安を感じつつも、新入生代表席に座っているサラシャを迎えに行く。


 サラシャとデリトの学院生活はこれから始まるのだ。一瞬感じた一抹の不安よりも今はサラシャの学院生活をどうしたら安全に楽しく過ごせるかを考える方が大事だ。そう思いデリトは気持ちを切り替えた。


 まだまだ彼女たちの学院生活は始まってすらいない。

 デリトはいつもの笑顔で主人を迎えに行くのだ。


「お嬢様、お見事でした。新入生答辞、お疲れ様です」


「ありがとう。……それよりも答辞ちゃんとできてた?」


「ええ、素晴らしかったですよ」


「でしょでしょ? じゃあ、デリト、腕組ませて?」


「ダメです」


「ええ~、デリトのケチ!」


 確かに始まってすらいない。が、デリトの気苦労はとうの昔から始まっていたらしい。

 しかしデリトは主人にしか見せない笑顔でこう言うのだ。


「また、お買い物の時まではお預けです」


「~~~!? や、約束だからね? ……でも急な笑顔は反則だよぉ」


 こうして彼女と彼の学院生活は幕を開けたのだった。



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読んでいただき、ありがとうございました(*・ω・)*_ _)ペコリ

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