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6話

よろしくお願い致します(*・ω・)*_ _)ペコリ

 シャトレー王国王都ステイル。別名「水の都」とも言われる街並みは、王城を中心に水路が張り巡らされており、街を五つに分断している。

 一番街は商業地区、二番街が観光地区、三番街が貴族地区、四番街が平民地区、五番街が娯楽地区となっていて、それぞれの移動手段は水路による小型のボートだ。


 商業地区には武器、防具専門の鍛冶屋、冒険者ギルドや商業ギルドなどがあり、食品や日常雑貨などを売っているお店が多い。

 観光地区は各国や国中の有名ブランド店や装飾品、特産品、洋服などを売っている。そして寺院や聖堂、神殿など宗教や芸術遺産となっている建造物の観光地帯でもある。さらに様々な宿泊専用の宿があり、一般家庭からちょっとしたお金持ちが泊まれる高級宿まである。

 娯楽地区にはちょっとしたテーマパークのようになっている。おしゃれなカフェがあったり、カジノがあったり様々である。

 貴族地区には学園や学院が建設されていて、貴族街と呼ばれる貴族が住んでいる住居から学校に通う人もいる。


 そしてそんな水の都と呼ばれる王都ステイルの一角、観光地区にて目立つ一組の男女。


 男性の方は真っ黒な燕尾服を着込んでいる紅髪の美少年。そして真っ白なドレスに身を包んでいる薄紫色の髪の美少女。

 そう、デリトとサラシャである。


 一応身なりの上では二人の関係が従者と主人であることなどは一目瞭然ではあるのだが、二人の容姿が視線を引きよせ、さらにはサラシャの行動が人々を錯覚に落とし入れている。


「お嬢様、お出かけになるときに毎回思っていることなのですが……何故そこまでして腕を組みたがるのでしょうか?」


 サラシャはまるでカップルのようにデリトの腕を組み、さらにはデリトの肩に頭を預けている。

 もちろんそれを見ていた街の男性は嫉妬と怨念、そして明らかに呪いを掛けてくるような視線をデリトに向け、周りの女性も嫉妬と羨望の眼差しをサラシャに送っていた。


「だ、だからぁ、もし私に何かあったら困るでしょ? だからこうして腕を組んでいれば安心できるし、何よりも安全でしょ? ……それにデリトと密着したいし」


 デリトは最後の方はぼそぼそと聞こえるだけで最後の方は聞き取れなかったが、つまり何か野蛮な連中がきたら護衛しなくてはいけないから側にいろと言うわけだ。


 そして毎回言われる理由がこの「護衛しなくちゃでしょ?」と言われると何も言い返せない。しかしデリトであれば数メートル程度離れていてもサラシャを守りきる実力がある。そのことを一番理解している彼女が何故顔を真っ赤にしてまで腕を組みたがるのか、デリトはそのことについて毎回疑問に思っているのだ。


「いいから、いいから。さ、デリト、次の買い物は何?」


 結果的にいつも流されてしまうのだが、デリトは仕事の話が出たので仕方なく話題を変えた。


「そうですね、先程学生服は新調しましたのでお嬢様が個人的に買いたいと仰っていたブランド店になりますが……どうなされますか?」


「当たり前じゃない、そこに向かうわよ」


 にこやかに笑いながらデリトの腕を引っ張っていくサラシャにデリトは苦笑いを浮かべながらついて行く。




 ☆★☆★☆★




 {ブランド店、眼鏡コーナーにて}


「お、お嬢様。そんな高い物頂けませんよ!!」


「いいから、いいから。ほら似合うじゃない?」


「そういう問題ではございません! 私のような一介の執事には高すぎる品ですよ!」


「いいじゃない! 私がデリトに買ってあげたいの。……それとも私からのプレゼントはいらない?」


「そ、そんなことは……」


 二人がいる店は観光地区で一番有名なブランド店である。

 今二人がもめているのは片眼鏡を買うか買わないかでもめている。


「いくら私の誕生日だからと言って、そんな……。というより高いのです! お嬢様に申し訳ありません!」


「なんで受け取ってくれないの? これデリトに似合うと思ってオーダーメイドしたのに」


「うっ……」


 そう、今日はデリトの誕生日だったためサラシャがプレゼントを用意してくれていたのだ。

 内容は片眼鏡という執事がよく着けている片方だけの眼鏡である。

 一般的な、つまり眼窩にはめるタイプのモノクルには縁なしタイプのもの(単なるレンズとも言える)もあるが、金属フレームに金属製の脚を張り出させて、かけやすくなっているものが多い。


 しばらく押し問答していると店員がやってきた。


「執事様。高い物を受け取れないという理由は分かりますが、片眼鏡は執事のステータスです。デザインもシンプルで落ち着いていますし、ありがたく受け取るのが用意して貰った側の礼儀という物です。何より女性に恥をかかせてしまいますよ」


 そう言い残すと店員は来たときと同様にするりと去って行った。


「お嬢様、申し訳ありませんでした。この様なものをいただけて私は幸せ者です、有り難く頂戴いたします」


「そう、……良かった」


 サラシャははにかみながら笑うとデリトに片眼鏡を手渡した。


「いつまでも私の側にいてね、いつもありがとう」


「…………」


 デリトは無言でうつむき感動によって泣いた。

 そして改めて決めたのだ。この方に一生仕えようと、一生守りきろうと、そう自分に誓ったのだ。


「お見苦しいところをお見せしました、これからも宜しくお願いします、お嬢様」


 顔を上げたデリトの表情は泣いてなどおらず、晴れ渡った空のように澄み切っていた。



ありがとうございました(*・ω・)*_ _)ペコリ

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