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12話

本日二話目です、筆者的には糖分多めで、書いてて砂糖を吐きそうになりました。


 学院に向かう時間帯となったのでサラシャとデリトは広大な学院内の学生寮から出て、サラシャのクラスへと向かっていた。

 そして校舎への道中にあるのは「憩いの苑」である。

 この広大な学院内には、憩いの苑という小さな街がある。敷地内には喫茶店や洋服店、その従業員の居住区やその他生活に必要な店舗まで揃っている。『中流貴族から上流貴族が必要としたものを必要とした分だけ詰め込んだ街』をサラシャとデリトは歩いていた。


 雑多に溢れかえる学生達は皆様々な制服を身につけていて、しかも少女しかいない。どの生徒も必ず従者であるバトラーか侍女が付き添っている。

 ここが普通の街中であったら異様な光景とも言えるが、女学院であり、この学院の生徒で無くとも貴族地区の他の女学院に通っていれば入街することが出来るため、慣れている者にとってはそこまででも無い。

 石畳と白い土壁で出来ている三角屋根の建物の羅列は一種の造形美を感じさせる。そしてこの王都は「水の都」と呼ばれている。この学院はその水の都に沿って綺麗な水路が通っており、時折ゴンドラなどが流れている。水路は朝日できらきらと光っていて、水面に光石でも散りばめられたかのような錯覚を覚える。


 そんな街の朝の和やかな登校時間の中、燕尾服を着た青年と最難関と言われる学院の服に身を包んだ美しい少女がまたしても腕を組んで歩いていた。

 その光景は学生の目を集め、行儀がなっていないと思う生徒や執事は鼻を鳴らして無視を決め込み、自分もそのように腕を組みたいと思う生徒はその青年と少女を羨望の眼差しで見つめる。

 よく観察すると執事は困り顔で少女のみが蕩けるような笑みを浮かべていることが分かるが、周りはそのことに気付いていないようだ。

 勿論サラシャとデリトだ。

 二人が通ろうとすると周りにいる執事は一瞬顔を赤らめ、少女(生徒)は青年に見惚れていた。


「ねぇねぇ、デリト、あそこの噴水綺麗だよ! まるで物語にある神界の噴水みたい!」


「お嬢様……、他の生徒の方々が見ております。このような児戯はおやめになって下さい」


「え~~、デリトのけち。もう少し楽しもうとか無いのかしら?」


「ありません。見て回りたいのであれば放課後になさるべきです」


「む~~。ま、いっか。……今日は腕を組んでもらえるだけでも周りに牽制掛けられるし、だってデリトってば自分に自覚がないんだもの」


「えらく納得が早いですね、そして申し訳ございません、執事として失格なのですが、最後の方を聞き取れなくて、もう一度お願いできますでしょうか?」


「ん? ううん、何でも無いよ? それよりもあのお店で売ってるクレープはおいしそうね」


「そうですね、とてもおいしそうに見えます」


 サラシャとデリトは楽しそうに(デリトはもう諦めている)会話を交わしていたのだが、サラシャは頬を膨らませてデリトをじ~っと見ている。


 じ~~。


「な、何でしょうか?」


 じ~~~。


「お、お嬢様?」


「おいしそうねって言ったんだからクレープ買ってくれても良いと思うの」


「か、かしこまりました」


 ん、と満足したのかまた頬を赤くしてデリトの肩に甘えるように擦りつける。

 デリトは苦笑いを浮かべながらそのクレープ屋までサラシャをエスコートした。名誉を挽回しようとデリトは気合いを入れる。


「お嬢様、お好きな種類をお二つ、お選び下さい」


「二つ? 私二つも食べられないわよ?」


「お嬢様、私を信じて下さい」


 どこかに戦争に行くようなこの上ない真剣な表情で告げるデリトに、信じるも何も若干混乱して分からなくなってしまったサラシャはとりあえず好きな種類を伝える。


「チョコバナナとイチゴホイップですね、少々お待ち下さい」


 言うが早いかデリトはするりと腕を解くと(サラシャはその瞬間少しだけ寂しそうにしていた)クレープを二つ注文して戻ってきた。

 当然だが、これはデリトのポケットマネーから出した。

 デリトはサラシャにどちらを食べたいか聞くとサラシャはイチゴホイップと答えたので、そちらを手渡すと、サラシャは小さく口を開けてはむはむと食べ始めた。

 デリトはもう片方のチョコバナナクレープを食べ始める。以前は執事として主人と共に食事をするなど許されないことなのだが、サラシャが二人きりの時は一緒に必ず食べること、と命令を出されてしまっているので、最初は断っていたデリトだったがそのたびに何故かサラシャが拗ねるので、こうして一緒に購入したというわけだ。


「デリトありがと♪ ん~~おいしいかも。……そっちのも食べてみたかったなぁ、それよりも何で私に好きな種類二つ聞いたの?」


「お嬢様、そのこともきちんと考慮しております故、ご安心下さい。先程はとんだご迷惑をおかけしましたが、今回はばっちりです。……では失礼します、お口をお開け下さい」


「……ぇ」


 呆けた顔でサラシャが固まる。

 この現状。

 この差し出されているクレープ。

 これはまさに。

 いわゆる「あ~ん」と言うやつでは無いだろうか。

 ついでに「間接キス」的なものまでオマケされていなかろうか。

 いや、的などころか事実だ。


 サラシャは態度には出していないが、急激な動揺で心臓をバクバク鳴らしていた。ここまで動揺したのはかなり前に自分から「それ頂戴」と言ってデリトが持っていたクッキーを「あ~ん」して貰ったとき以来だ。

 その時は自分からお願いしたので心の準備もしていたが今はいきなりすぎて頭が追いついていない、さらに間接キスときた。サラシャの頭はパンク寸前である。


 もう一度クレープを見る。

 サラシャはパンク寸前の頭で考える。

 これを食べるのだろうか?

 沢山の生徒が今二人を凝視している中で?

 こんな公共の場で?

 これではまるで……。


(こっ、こっ……! 恋人みたいな……!?)


 この国でもどの国でもそうだが貴族では恋愛結婚は珍しい。ミネラス公爵とミネラス夫人は恋愛結婚だったため自分の娘にも恋愛結婚をして貰いたいと考えてはいるようだが、実際サラシャは無理だと思っていた。

 しかし目の前の現実は思い人にクレープをさし出され、自分はそれを食べようとしている。

 そう想像した瞬間サラシャは耳の先まで真っ赤になり、叫ばなかった自分に何かご褒美をあげたくなってしまった。


 しかしこのまま無反応なのも人としてどうかと思ったので、サラシャは意を決して口を開いた。


「あ、ありがと……」


 若干うわずってしまった声にサラシャは頭が瞬間沸騰してしまったのを自覚した。

 しかしデリトにその表情を向けることは不可能なわけで、しかしその表情を向ける人間は近くにいないわけで……。

 結果、サラシャはクレープを急いで食べると、珍しくデリトを置いて一人で歩き出してしまった。


「あ、あれ? お嬢様? な、何かご不満だったでしょうか?」


「…………」


「お嬢様~~?」


 どれだけ声を掛けても反応が無いサラシャに、デリトは選択肢をミスしたかなと思い、後を追いかける。

 こうして学院初日の朝が始まったのであった。




どうでしょうか?上手く描写が出来ていたのか不安です。

違和感なく、サラシャのデレが楽しんでもらえたら嬉しいのですが……。

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