八羽 「天狗」
「朽葉くん、あっちでとても可愛い雑貨を見つけたの! 見に行ってもいいかしら?」
「ああ」
「朽葉くん、これはどうかしら?」
「黒のワンピースか。似合ってる」
「朽葉くん、そのチェックのシャツ、似合ってるわよ」
「そりゃどうも。……高っ」
「朽葉くん、あーん」
「…………わかった、食べるから。食べるからあーんはやめろ」
「朽葉くん、どうしたの?」
「好きな作家の新作だ。買ってくるからそこで待っていてくれ」
「朽葉くん、この時計なのだけれど……」
「値段も手ごろで電波時計か。わかった、壁掛け時計はそれにしよう」
「朽葉くん、下着は――
「見ないし選ばない。どうしてもと言うのであれば一人で見てきてくれ」
「疲れた……」
「あら、私としてはまだ見足りないくらいよ」
「元気があるのは良いことだとは思うが、あいにくと僕はもう限界だ」
ただでさえ人が多い休日のショッピングモールを一日中歩いて回れるなんて、やはり四辻麗華はどうかしている。
僕なんてもはや昼の時点で限界だったというのに。
そもそも、昼にライフをごっそり削ったのは誰だと思っている。
わざわざたこ焼きをあーんして食べさせなくてもいいだろうに、四辻麗華が僕の口の中に出来立てを突っ込んでくるものだから……ちょっと火傷してしまったかもしれない。
「完全に暗くなる前に帰るぞ」
「そうね」
そんなこんなで、四辻麗華の生活に必要なものを買うという当初の目的から少し逸れて、寄り道をしながら買い物を済ませてショッピングモールを出る頃には、既に辺りは暗くなり始めていた。
夕焼けがオレンジ色に燃え、鴉が鳴き始める時間帯になった。
僕と四辻麗華は両手いっぱいに荷物を抱えてバスに乗り、自宅に近いバス停で降りて帰宅の途についているところだった。
「全く……こんなに買うとは思ってもいなかった」
「そうね――私もよ。少し買い過ぎてしまったかしら」
「いや、まぁ、そのための僕だ。そうでなくては荷物持ちの意味がないからな」
四辻麗華に――というよりは自分自身に言い聞かせ、荷物に引っ張られる両腕にもう一度気合いを入れ直し、ふらつく体に鞭を打って踏ん張る。
しかし一方で、四辻麗華も僕と同じくらいの荷物を持っているはずなのに、全くと言っていいほどに体力を切らしていないように思う。その細い体のどこにそれほどの体力があるのか……。霊力が強い人間は生じて運動神経が高いという統計もあるようだが、四辻麗華はそれとはまた違っているような気もする。
まぁ、霊媒体質については玄関先を覗いた程度の知識しか持たないので、僕の認識や理解が間違っている時もあるだろうな。
「朽葉くん、男の子でしょう?
これくらい頑張らなくちゃ」
いや、苦笑いしながら言われてもですね。
「……そうだな」
しかし不思議と、四辻麗華の隣を歩いているというだけで、僕はへこたれる気がしなかった。
そう、四辻麗華と微笑み合おうとしていた、その刹那。
何かが四辻麗華の腹部を貫いた。
「――ぇ……?」
四辻麗華がドサリと嫌な音を立てて地面に崩れる――その前に、僕は反射的に荷物を地面に投げて大きく後ろへ跳んだ。
「誰だ……!」
「――答える義務はないねェ!!」
曇った汚い声で怒鳴り散らしながら、僕のほうへ向かってくる黒いローブを纏った男。
僕と四辻麗華のあとを、霊力と気配を消してつけていたのか……!
黒ローブの距離はおよそ五メートルといったところ。僕では逃げられないだろう。
「くそ……っ」
しかし、仮に逃げられるとしても、四辻麗華を置いたまま逃げられるわけがない。
「遅い!」
こいつ……速いッ!?
僕が危険を察知してその場から飛び退くよりも早く、
「えっ?」
間抜けな声とともに、
僕は、
僕の、
左腕を、
斬り落とされ――
目が、覚めた。
体に痛みはなく、斬り落とされたはずの左腕も当然のようにくっついている。動かすのにも支障はない。
だがしかし、自分の体に視線を落として、僕はこの世界が異常であることに気づいた。
この世界には、黒と白しかなかった。
見慣れたはずの町の風景が黒と白だけで構成され、一切の色彩を捨てた世界が僕の視界に広がっていた。
目の前から、誰かが歩いてきた。
あぁ、僕を狂おしいほどに優しく呼ぶ声。
君の名前は――
『僕を呼んだかい、朽葉くん?』
朽葉真夜だ。
でも、僕とは違う存在だと一瞬でわかった。
そいつは――腰まである長い黒髪を持ち、瞳から色素をそのまま抜いたかのような、赤色の絵の具を塗りたくったかのような真っ赤な目を持ち、ニヤニヤと余裕ぶった気色悪い笑みを浮かべた奴だったからだ。
『このままじゃ死ぬよ?』
「お前は……どうしてここに」
『ここが僕の世界だからさ。この白黒で黒白の退屈な世界がね』
朽葉真夜は、髪の毛をいじりながら呟いた。
呆気に取られている僕を気にも留めずに、彼は言葉を続けた。
『……ムカつくなぁ』
「何がだよ」
髪の毛をぐしゃぐしゃにして、それから――朽葉真夜は、目にも止まらぬ速さで僕の目の前に現れて、僕の首に左手の指を回していた。
右手には、いつ握ったのだろうか日本刀が握られていた。
『このままじゃ死ぬって言ってんのに、呑気な顔してることに』
「まさか」
『腕、千切れてるんだよ?』
その言葉で、僕の体に突然激痛が走る。
「う……がぁ゛あ゛あ゛ぁ゛ぉ゛ぁ゛あああ゛あ゛!!」
絞首からは開放されたが、その代わりに、
――左腕が、地面に落ちていた。
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い――痛い。
腕から流れる黒い液体(この世界における血だろうか)が、たちまち地面に血溜まりを作っていく。
目の前の朽葉真夜は日本刀を握ってはいるが、これは彼の仕業ではないと断言出来る。
彼の握っている刀の刀身に血がついていないからだ。
これはつまり、現実の僕との同期。
体が少しずつ現実に引き戻されているということだろうか。
違う、違う違う違う違う。
そうじゃない。
『このままじゃあ四辻麗華さんも死んじゃうね、もしかしたら涼貴や克人も死ぬかもね』
クスクス、と朽葉真夜は汚く微笑んだ。
「……それは、嫌だ」
『だったら僕を受け入れろ』
「でも」
『でももだってもない。死ぬか生きるかどちらかを選べ』
長い黒髪を揺らしながら、彼は微笑んだままに言う。
その辛辣な物言いは、一々僕の心の柔らかい部分に鋭いナイフとなって深く突き刺さる。
結論を出さない僕にいらいらしているのか、彼は何か思いついたような顔で言った。
『……そうだな。僕と戦え』
朽葉真夜がそう言って刀を空中で真一文字に振ると、まるで時間が巻き戻ったかのように腕が傷口から生えてくる。一瞬で元の僕の左腕と変わらないほどに再生したソレは、僕が少しだけ人間に背を向け始めていることの証明に覚えた。
『武器はほら、ソレ使え』
目の前に、突然一本の日本刀が現れる。
僕はそれには目もくれずに言った。
「何で、お前と戦わなくちゃならない」
『決まってんだろ。……僕が戦いを望んでいるからだよッ!!
刀を取れ。殺気を込めろ。僕を殺すためだけにその刀を振るえェ!!』
叫びながら、朽葉真夜はこちらへと突っ込んでくる。
やるしかないのか。
僕は握った刀に力を込め、朽葉真夜を迎え撃った。
使い方など知らないが、ひとまず刀を正中線で構えて朽葉真夜の日本刀を受け止める。
金属が擦れ合い、火花とともに嫌な音が鳴り響く。
「……っ!」
隙がないのならば作り出す。
その思いを込めて放った突きは、しかし朽葉真夜がバックステップしたことによって躱されてしまう。
一瞬にして静寂が空間を支配した。
『へぇ、まだ生きてるとはね』
「しぶといだろ」
『ああ。今頃お前の首は僕の足元にあると思ってた――よッ』
身の危険を感じて、咄嗟に水平切りを繰り出す。
『反応が良い。死に損ねたな』
水平切りを繰り出していなければ、今頃僕は心臓を一突きされて死んでいた……その事実が、僕を恐怖に陥れようと鎌首をもたげる。
『――おらぁッ!!』
朽葉真夜のその叫びとともに、彼の霊力が凄まじい勢いで膨大化し、彼の背中に――黒い翼が生えた。
彼の黒かった目も、真っ赤になっている。
……まるで色素をそのまま抜いたかのような、赤い絵の具をそのまま塗りたくったかのような。
黒と白しかないこの黒白の世界で、目の前にいる朽葉真夜だけが、色彩を手に入れたかのようだ。
あの夜に見た鴉のような風貌となった朽葉真夜は、僕を睨みつけながら言う。
『あぁ、この姿の僕を見るのは初めてなんだっけ』
「なん……だよ、それ……っ!」
『わからないか? 僕は君自身だ。君だって、この姿になれるさ』
そんなものにはなりたくない。
と、言おうとしたが――それは言葉にはならなかった。
速い、いや、速過ぎる。
先ほどまでの朽葉真夜ではない、と直感した。
僕は殺されるのか?
こいつに。
いや、さっきこいつは言った。『君にだってなれるさ』と。
だったら、その言葉だけ信じてみようではないか。こいつに殺されないようにするにはそれしかない。
勘違いするなよ朽葉真夜。
僕がこの力に呑まれるんじゃない。
僕がこの力を従えるんだ。
『――あ゛?』
決意を決めた僕は、刀の鋒を朽葉真夜に向ける。
僕に少しだけ力を貸してくれ――名前も忘れてしまったけれど、僕にぬくもりを思い出させてくれた人よ。
「……返せ」
『はぁ?』
「返せよ。朽葉真夜を返せ……朽葉真夜は」
「この僕だッ!!」
一瞬のことだった。
僕の切り落とされた左腕は、まるで見えない糸で繋がっているかのように傷口から引き寄せられて元通りにくっついた。
指を軽く動かしてみるが、何の違和感もない。
「なッ!?」
驚いていようが驚いていまいが、僕には関係のない話だ。
だって。
「お前はここで死ぬんだから』
僕の背中に、光をも呑み込むぐらいに黒い、漆黒の翼が生えた。
視界が一瞬だけ赤に染まって、元に戻る。
いつの間にか僕は右手に日本刀を握っていた。
絶対にこいつだけは殺す。四辻麗華を傷つけたその罪は、己の命で償ってもらう。
「所詮は素人だよなァ、遅いんだよ!」
鋭い拳が飛んでくる。
なるほど確かに早い。先ほどまでの僕だったら、腹部を貫かれて死んでいただろう。当たり所が悪ければ胸に穴が空いていたかもしれないな。
だが、今は遅く感じる。
とても遅い。
ゆっくりと動く世界の中で、僕だけが軽やかに動いていた。
「暴力はいけないよ』
軽く左にステップをして、奴の拳を躱す。
そして刀を振るって、まずは奴の右腕を斬り飛ばした。
空中で何回転かしたあと、ボトリ、という音を立てて男の右腕だった肉の塊は、切断面から溢れる血とともに地面に落ちた。
やってみると案外簡単に斬り飛ばせるものだ。
「うぎゃぁあ゛あ゛あぁああ――ッッ!?」
「あは。あはははははははははははははははは。どう? 痛い? 痛いよね?』
そのまま、お返しとして奴の腹部に思い切り刀を突き刺す。
地面に刃が刺さって抜けないくらいに深く、突き込んでやる。
肉がぐちゅぐちゅと嫌な音を立てながら、真っ赤な血が滝のように溢れ出す。
「君は何で四辻麗華にああいうことをしたの?』
「そっ、それは……ぐぇ、げほっ」
もう少し痛いことをしないと、情報を吐いてはくれなさそうだ。
そうだな、とりあえず左腕も千切っておくか。
「別に答えたくないなら答えなくてもいいけど、どうなっても知らないからね! ――ほら、もうちょっと頑張れ』
言いながら、男の左腕を力を込めた両手で引っ張ってみる。すぽん、とまるでトイレで使うラバーカップのような音を立てながら簡単に左腕は千切れた。というかもげた。
「う゛ぉ゛ぁ゛あああああああああああ゛あ!!!」
血が大量に溢れ出すが、僕からしてみればただの邪魔な液体なので、翼を振るって弾き飛ばした。
「うるさい。それで何で? 君、霊とかそういうレベルじゃないな。もっとそれよりも上の存在だ』
「はァ……? お前、妖の存在を知らないのか?」
初めて聞く言葉だった。妖。
しかし、なぜだかとても耳に馴染む言葉だと思う。
「知らない。だから教えろ。教えないと次は両足だからね。右足でも左足でも好きなほうからもいであげるよ。まぁ最終的にはどっちももぐんだけどね!』
「言う、言うからよぉっ。……妖ってのは、お前の言うとおり霊よりも上の存在だ。悪霊だとかそういうものではなく、存在の強さ自体が霊よりも――そして人間よりも強いんだよ」
「なるほどね。で、その妖ってのは霊じゃあない。つまり霊能力者じゃない人間にも見えるってこと?』
「そ、そうだ。霊力を持たない人間にでも俺たちは見えるし、俺たちは人間と変わらない暮らしを送ることも出来る」
苦しそうに血を吐き出しながら喋る黒ローブの男。
自分でここまでやっておいてなんだが、少し可哀想になってきた。これ以上生かしておくと辛そうだ。質問はあと少しにして殺してやろう。
「最後の質問ね。僕は黒い翼を持ってる。これは妖にもそれぞれの違いがあるの?』
「正確に言えば、違う……。妖は全員、どれかの一族に属している。俺は蛇だし、他にも狐とか狗神、んでお前の族する天狗とかな……ぐほっ、げほっ、ぐ、が……っ」
「ふーん。ありがとう』
僕は天狗らしい。
確かにこの黒い翼はそれっぽい。
「それじゃあ次の質問ね。……連続殺人事件の犯人って、君でしょ?
現場に残ってた霊力、あれは全部君のだよね。すぐにわかったよ』
天狗になっている時は、とても五感が優れているように感じる。
いや、正確に言うのならば五感だけではない。
霊力を感じ取る能力も、格段に強くなっている。
「そう……だ」
「何でそういうことするの?』
純粋な疑問だった。
なぜ人を殺すのか。
「そ、それが上からの命令だったんだよぉっ! 指示したタイミングで人間を殺せ、って言われたんだよ」
「上、って何?』
「下っ端の俺よりもずっと強い、一族の中でも五指に入るくらいの妖たちだよ……逆らったらまず間違いなく殺される」
妖の世界にも上下社会というものは存在していて、やはり彼もその中のパーツの一つだったらしい。
となると、やはり僕が属している天狗の世界にもいるのだろうか。強者は。
「あぁ、必要なことは全部教えただろ? なぁ、頼むから……」
「殺してくれって? 言われなくても殺すさ』
いつの間にか、僕の周りの民家の屋根には鴉たちが集まってきていた。
そう、赤い瞳を持つ鴉たちが。
「……やれ」
僕が目配せをしただけで鴉たちは黒ローブの男に向かっていき、次々に男の肉を喰んでいた。
まさに、鳥葬。
僕もおこぼれに預かろうかとも考えたが、あの男の肉を喰うなんてさすがに無理だ。
喰うならもっと美味しそうな人がいい。
例えばそこで倒れている、あの人のような。
「四辻、麗華……喰わせろ、奪わせろ、喰わせろォォォォォォォ!!』
腹部を貫かれて気絶している四辻麗華の上半身を抱き抱える。
愛しい恋人のように。
そして、彼女の細く白い首筋に歯を――
「――終わりだ」
『そうみたい、だ……。強いじゃないか』
僕は、朽葉真夜の腹部に刀を突き刺していた。
全身から力が抜けたのだろう、こちらに体を預けてくる朽葉真夜を優しく抱き抱えた。
『似合ってるよ、その姿――黒い翼も赤い目も』
「ありがとう」
朽葉真夜を見るのではなく、白黒で黒白の世界を眺めながら、僕は礼を言う。
『へっ…………せいぜい死なないように気をつけろ……!』
ニヤリ、とあとを引くようないやらしい微笑みを残して、朽葉真夜は僕の目の前から一瞬で消えた。
世界の主が死んだのが合図だったのだろうか。白黒で黒白の世界に、亀裂が入り――そして、世界は真っ二つに裂けた。
僕の背中の黒い翼が一瞬にして散った。
鴉も何かに合図されたかのように一斉にどこかへと飛び去っていく。
……さっき一人妖を殺したばかりだというのに、思考は恐ろしいほどにクリアだった。
四辻麗華を抱き抱えたままに、僕は自分が天狗の状態ではなくなったということを実感した。
「やめなさい……朽葉くん……」
目を覚ましたのだろうか、血を吐きながらもゆっくりと微笑む四辻麗華。
傷口に目を向けると、先ほどまで穴が空いていた腹部はすっかり塞がっていた。
常人ではありえないほどの再生速度と肉体の強度。
やはり、か。
「あなたも……妖だったのか」
四辻麗華の背中にも、先ほどまでの僕と同じ二枚一対の黒い翼が生えていた。
そして、四辻麗華の黒い目は、いつの間にか真っ赤になっていた。それこそ色素をそのまま抜いたかのような、赤の絵具をそのまま塗りたくったかのような。
「そうよ……黙っていて、ごめんなさい。でも、あなたが必要だったの」
「どうして」
「詳しいことは言えないわ」
「僕を妖にしたのは、あなたか?」
四辻麗華は重々しく頷いた。
「そうか」
僕はそれを聞いて、なぜだか安堵していた。
「こんな体にされたはずなのに……不思議とあなたを憎めない。なぜだろうな」
満ち足りた気分ではない。
決して清々しいわけでもない。
しかし、不快なわけでもなかった。
「……ごめんなさい、朽葉くん」
「なぜ謝る」
「これからあなたには、辛いことが待っていると思う」
「……」
辛いこと。
それが何を意味しているのか、今の僕には知る由もない。
だけれど、その「辛いこと」から逃げる術がないということだけは、四辻麗華が浮かべる悲痛な表情からはっきりと見て取れた。
「大丈夫だ、四辻麗華。僕は逃げない」
四辻麗華を見つめて言う。
それは確信と言っていいほどの、僕の気持ちだった。
「……すっかり強くなったのね」
「あなたのおかげだ」
僕があの世界で殺した朽葉真夜が何だったのかは、よくわからないままだ。
だがこれから先、妖の世界に足を踏み入れることで、何かわかることもあるかもしれない。
「でも、あなたはまだ、妖としては未熟よ」
「……あぁ」
「強くならないといけないわ」
「わかっている。……悪いが、そういう話はあとにしてくれ。今はとりあえず――
「――帰ろう」
【天狗】
黒い翼と赤い目が特徴的な妖の一族。
覚醒した朽葉真夜が属することになった一族でもある。