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黒白のカルラ  作者: 輝輝
一章 「覚醒」
5/13

四羽 「七野」

 僕がトイレから出て教室に入ってみると、まだホームルームは始まっていなかったようだ。 

 というのも、自分が思っていたよりも時間は経っていなかったらしく、実際に僕が教室に入ったのはホームルーム開始の五分前だったのだ。

 まぁ、遅刻にならないで良かった。と安堵しながら、窓際から三列目一番後ろの自分の席に着いた。

 ホームルームが始まるまでの僅かな間ケータイをいじっていると、克人と涼貴からそれぞれメールが来ていることに気づいた。どちらも僕の具合を気遣ったもので、こんなにも良い友達を持てて、二人には感謝するばかりだ。二人にはひとまず良くなったと返信しておいた。

 僕がケータイの電源を落としてバッグにぶち込む(僕の通うこの高校は進学校なので、ケータイの持ち込みは禁止されている)のと同時に担任が教室にやって来て、今日の日程の連絡をしていく。その中で、確かに全ての部活動は来週水曜日まで活動停止、という連絡もあった。どうやら涼貴の予想は当たっていたようだ。四辻麗華に、早めに家に帰る旨を伝えておいて良かった……。

 と、連絡もそこそこに授業はいつも通りに進行した。

 それなりに聞き流しながらぼけーっと過ごしているといつの間にか昼休みになっていて、とりあえず昼食を克人と涼貴と食べた。

 そうして昼休みもあっという間に終わり、今は五時間目。

 またしても気を抜いてぼけーっとノートを取りつつ話を聞き流すだけだった僕は、自分に向けられている視線に気づく。

 この教室内であることは確かだ。

 ならば、克人か涼貴か――と思いながら教室内を控えめに見回す。

 しかし、二人ではなかった。涼貴はやはり真面目に授業を受けている……おい克人、起きやがれ。よだれ垂れてんぞ。

 そして教室をある程度見回したところで、廊下側の列の前から三番目の女子生徒と目が合った。

 七野(しちの)(かえで)

 黒髪ショートカットの、大和撫子といった感じの美少女。ちっこい。中学二年生くらいでも通じると思う。ただし頭の出来はとても良いらしい。あくまで噂でしか聞いたことがないから、真偽は定かではないのだが。

 常に一人で読書をしていて、クラスメイトと話すのも必要最低限の内容だけ。男子と話しているところなど見たことがない。かくいう僕も喋ったことはなく、同じ教室で授業を受けているだけ……といえばぴったりだと思う。

 向こうも僕を気にする要素などないだろう。ある一つの要素を除けばの話であるが。


 そう、彼女も霊能力者だ。


 霊力の強さで言えば僕と変わらないし、普段から目立たないように生活していることもありごく普通の人間のように思える。僕含め、霊媒体質は他人から蔑まれる要因にこそなれど全く誇れるものではないので、霊能力者は極力目立たないのが暗黙の了解となっている。

 話がズレてしまったので戻そう。

 とにかく彼女は霊能力者といえど僕と同じ一般人よりの霊能力者ってことだ。そして、僕ら霊能力者は互いに互いのことを霊能力者だということは一発で見抜ける(霊能力者は特有の霊力を放っている)のだが、実際それで声をかけることは稀だ。霊能力者の中にも同族を利用してお金を稼ごうなどと考えている不届きな輩もいるからな。本来あまり霊能力者どうしは仲良くなれないものなのだ。

 で、まぁ、うん。霊能力者霊能力者言っててすまない。

 ジロジロとさっきから七野楓の視線が非常に痛い。視線に物理的な干渉能力があったら僕は既に全身串刺しになっているレベルまである。

 何となく手持ち無沙汰になった僕は、七野楓に向けて会釈のつもりで軽く手を振ってみた。

「……」

 ガン無視。

 ぴくりとも反応しなかった。

 ……嫌われているのだろうか…………?

 僕に何か用事でもあるのだろうか、何てとぼけたことは言わない。きっと七野楓も怯えていると思う。今日学校に来ている霊能力者は全員死ぬのかもしれないのだからな。

 しかし、恐ろしいからといって、学校は休めない。

 なぜか?

 学校にいたほうが安全だからだ。

 何度も述べているが、生きようとする力が強い人間が固まっている学校という空間は、一人で家にいるよりかはよほど安全なのだ。霊能力者は、悪霊にとってはただの美味しい餌。贄。

 そういう孤独な霊能力者は、生の力に縋るしかない。僕も含めて。

 やはり人は誰かに頼らないと生きていけないのだろう――霊能力者はそのことを強く理解している。

「はぁ……」

 黒板に書いてある、本来整頓された美しいはずの数式の羅列が、ひどく歪んだものに見えた。

 僕の心の中で、誰かが囁いた。


 羽バタケ。


 ……誰だッ!?

 七野楓ではない。霊能力者は万能ではない、つまりテレパシーなど成立はしないものなのだ。

 咄嗟に窓の外に視線を向ける。

 誰もいない。いや、いるのだろう――今の僕には見えないだけで。 

 七野楓の小さな体が、一瞬だけぴくりと動いたのを、僕は見逃さなかった。当然、彼女も霊能力者である以上視界にセーブはかけているはず。そんな彼女でも気配を察した、ということから、導き出される答えは一つ。

 すぐ傍まで、来ている。

 ということなのだろう。

 自分自身の視界は誤魔化せても、しかし、頬を伝う冷や汗までは誤魔化せなかった。

 ひとまず、放課後になったら、七野楓にコンタクトを取ってみようか。

 四辻麗華を待たせないように、早めに帰らなければいけないのだけれど。


 そうして時間は刻々と過ぎていき、七時間目の授業を終えて、放課後に。

 克人と涼貴は大会が近いこともあって自主練習をするらしく、野球道具を持って早々に教室を飛び出していった。

 他のクラスメイトたちもそれぞれ放課後の予定を立て、カラオケだったり買い物だったり、各々が好きなように過ごそうとしている中、僕は荷物をまとめて帰ろうとしている七野楓に声をかけた。

「七野さん。ごめん、ちょっといいかな」

「……朽葉。わかった」

 そのまま二人で教室を出る。

「どこで話す?」

「……近くに気に入りの喫茶店がある。そこで」

「わかった。じゃあ、案内してもらえるか?」

「……うん」

 二人並んで廊下を歩いている間も、僕らの間に言葉はなかった。廊下を歩きながら話すこともなければ話すほど親しいわけでもないからだ。

 すれ違うのは、部活がなくなったために一人で下校しようとする男子生徒や、ヤバイよヤバイよねといや正直何がヤバイのか全くわからない話をしながら帰る二人組の女子生徒や、恋人繋ぎをして帰る美男美女のカップル。

 彼ら彼女らから見て、僕と七野楓はどう映っているのだろうか。

 まぁ、僕と彼女では、つり合うも何もないのだが。頭と容姿の出来が違いすぎるし、な。


 昇降口で靴を履き替え、外に出る。 

 七野楓がこっちに走ってやってくる。

 たった四メートルほどしか空いていない。何もそんなに急がなくてもいいのに――そう思った矢先、段差に足を引っ掛け、今まさに前に転ぼうとしている七野楓がいた。

 条件反射でこちらに倒れてくる七野楓の肩を押さえ、転ぶのを阻止する。

「だ、大丈夫か?」

「……うん、ありがとう」

 なぜかはわからないが上目遣いになってますよ七野さん。

 つーか可愛いだろ、ドキッとするだろ、心臓が高鳴っちゃうだろ。小学生の初々しい初恋レベルだ。

 咄嗟にとはいえ肩を触ってしまったので、そこだけは謝っておくべきだろうか。

「すまないな、肩、触ってしまって」

「……気にしないで」

「そう言ってもらえると助かるよ。さて、喫茶店だな……とは言っても悪霊……避けては通れないよな」

「……そうだね」

 どうしようもないのは事実だ。

 僕はあいにくと除霊出来ないし、この様子を見る限りおそらく七野楓もそうなのだろう。

 誰か人間がまとまって校門を通る時にそれに紛れて通ることが出来れば良いのだが、あいにくと僕にそんなに器用なことは出来そうにない。

 そうだ、四辻麗華に来てもらって、悪霊たちを退かしてもらおう。あの人の霊力ならそれが出来るはずだ。

 ついでに七野楓と話すことがあるからちょっと帰るの遅れるわごめんなさいをすればいいんじゃないか? 我ながら名案だ。

「七野さん、ちょっと待っててくれ」

 人目のない場所へ行き、ケータイを取り出して自宅にコールする。

 またしても四辻麗華はニコール目で応答した。

「はいもしもし朽葉くん」

「もしもし。今から学校に来れるか?」

「私は朽葉くんが通う学校の位置を知らないのだけれど……」

 あ、そういえばそうだったな。

 僕としても言葉で案内するのには難しいものがあるし、今回は帰るのが遅くなりそうだという要件だけ伝えるか。

「そうだったな――すまない。

 あぁ、そうだ。わけあって、今日は帰るのが少し遅くなると思う。五時半くらいか」

「彼女でも出来たのかしら」

 四辻麗華が受話器を持ちながら、ニヤニヤと意地悪く笑っている姿が容易に想像出来た。

「そうじゃないが……まぁ、とにかく迷惑をかけてしまってすまないな」

「構わないわ。ごゆっくりね」

「あぁ、ありがとう」

 通話を切り、七野楓のところへ戻る。

「すまない、待たせたな」

「……大丈夫。それで、どうやって学校から出るの?」

 そう、それが問題だ。

 万策尽きたか――と考えたその瞬間、十人くらいのリア充グループがいくつかまとまって歩いてくるのが見えた。

 リア充は一般人よりさらに生の力――というより馬鹿騒ぎしたいだけだろうから霊も迷惑ものだ――が強い。普段はうっとおしいだけだが、今だけは天使にも見える。

「よし、七野さん、あれに紛れて帰ろう」

「……それしかない。でも、多少の精神への介入は覚悟するべき」

「わかってる」

 悪霊が蔓延る空間を抜けるのだ、僕たち霊能力者を喰おうと精神に負担をかけてくることくらいは覚悟しなければならない。

「っ、く……」

 胸の奥のほうが、じわりじわりと古傷のように痛む。

(心を無にするんだ、何も考えるな、感じるな……)

 イメージとしては、心の中の世界を全て黒一色に染めきってしまう感じだろうか。黒というのは何者にも染まらない色だから、霊能力者は黒を好むと聞いたことがある。

 もちろん、精神へ介入されることはそう良いことではない。

 今は軽いものだからまだマシなほうだが、ひどい例になると精神をそのまま壊してしまうということもありえないわけではない、らしい。実例を見たことがないから何とも言えないのだが。

 しかしそれさえ乗り切ってしまえばあとは簡単だった。

 僕も七野楓も、もともと存在感がないので、普通にしれっと校門を通ることが出来た。悪霊たちは相当悔しかったはずだが。

 しかしそこは生きている者と死んでいる者ということで我慢していただきたいものだ。

 そんなこんなで学校からどうやって出るかという問題は思いのほか簡単にクリアすることが出来、七野楓のお気に入りだという喫茶店へ向かうことにした。

 学校を出て、十分ほど僕の家とは正反対の方向に歩くと位置している閑静な住宅街の近くにその喫茶店はあった。

 ドアを開けてみると、これぞ喫茶店――とでも言わんばかりにチリンチリンと流麗な音が僕と七野楓を迎えた。

 七野楓が向かうままに窓際の席に座り、メニュー見る。向かい側に座った七野楓はメニューを見ようとはしない……いつも頼んでいるものがあるのだろう。

 ブレンドでいいかな。贅沢は一人暮らしの敵だ。

 店員がお冷を持ってきた。

「ご注文は決まりましたか?」

 僕が注文を言おうとする前に七野楓が注文を言う。

「……ブレンドで」

「じゃあ、僕もそれで」

 どうやら注文は一致していたらしい。

「かしこました」

 店員が下がる。

 それを見てから、僕は話を切り出す。

「七野さん、なぜ今日の授業中に僕を見ていた?」

 何というか自意識過剰のナルシストのようになっているが、真剣に問うているつもりだ。

「……朽葉から、いつもと違う霊力が感じ取れたから」

 四辻麗華のものだろうな。

 なおも七野楓は続ける。

「……気をつけたほうがいい」

 見たところそこまで強くない霊能力者の七野楓ですら感じ取れるほどなのだから、実際には僕の霊波(体から滲み出ている霊力の波動)にはかなりの変化が生じているのだろう。

「わかった、ありがとう」

 しかし、それほどまでに四辻麗華の霊力は強いということか。

 他人の霊力に影響を及ぼすほどの力なんて、今まで十六年と少し生きてきた中で聞いたこともないのだから。

「……もし朽葉がこれから先、霊に怯えて暮らしたくないというのなら、方法はないでもない」

「それは、本当……か?」 

 もしそんな方法があるのなら……いや、無理だろう。あっとしてもノーリスクではいかないはずだ。


「……朽葉が私に喰べられてしまえばいい」


 さっきまでと同じ声音だった。 

 きっと冗談なのだろうと思う。

 だが、しかし――僕の中にどこか深く隙だらけだった部分に、その言葉がまるで鋭いナイフのように突き刺さったのを感じた。

「冗談キツいな。さすがに死は選べない」

「……それが嫌だというのなら、朽葉は力をつけるべき」

「あぁ、それも――わかってはいるんだ」

 現状、僕は誰かに頼り切るしかない。自分一人では弱い霊すら除霊出来ないから。しかし、四辻麗華がいつでも僕の傍にいてくれるわけではない。僕一人では何も出来やしない。

 僕は、無力だ。

「お待たせいたしました」

 一人気落ちしていたところに、店員がブレンドを持ってきた。

 湯気を立てながら揺らめくコーヒーの黒が、昨夜僕の家を訪れてきた四辻麗華の姿と重なってフラッシュバックする。

 いやいや、四辻麗華のことなんてどうでもいいだろう。

 七野楓はミルクを垂らしていたが、僕はとりあえず何も加えずに一口。

 美味しい。

 少し苦目に淹れたコーヒーを好む僕にとってはとても美味しく感じられた。そして、これで値段もそこそこ。何だかんだ言って、このお店とコーヒーを僕も気に入っているようだ。

「コーヒー、好きなのか?」

 僕と同じコーヒー好きなら良いのだが。

「……うん。落ち着く」

「そうか、いや実は僕もそうなんだ」

「……朽葉も?」

「ああ。素晴らしいよな、コーヒーって」

「……うん。淹れたての香り、すごく好き」

「僕もだ! あの芳醇な香りは最高だよな!」

 あぁ、僕は七野楓と仲良くなれそうだ。もしかしたらコーヒーが飲めないという克人や涼貴以上に仲良くなれるかもしれない。

 霊能力者で良かったかもな、とちょっとだけ思った。


 そのあとは支払いも済ませ(七野楓の分も無理を押し通して払った。女性にそうそう払わせるわけにはいかないというプライドだ)、帰宅の途についていた。

 玄関のドアの鍵を開けようとバッグの中から鍵を取り出そうとしたところで、気づく。 

 そのままドアを引くと、やはり開いていた。

 あぁ、人がいるんだもんな。

「ただいまー」

 とりあえず帰ったぞーと所在を示しておく。

「おかえりなさい。お風呂沸いてるから、早く入って」

「あぁ、ありがとう」

 当たり前なのはわかっている。

 ただいまと言えばおかえりが返ってくるのは当たり前のことだ。でもその当たり前を経験していない(していても覚えていない)僕には、こんな当たり前が、本当に心に染み入るのだ。

 あーやっぱり僕ってチョロいんだよなぁ。

 そう心の中で呟いて、着替えを持ってお風呂に入ることにした。


「あ゛ー、いい湯だ……」

 僕がいつも設定していた通りの温度にしてあった。

 ありがたい。 

 昨日から今日にかけて、いろいろなことがあり過ぎた。

 霊能力がものすごく強い美女がいきなり家に訪ねてきて、生きるか死ぬかビクビクしながら寝床について、朝起きたらその人がご飯を作ってくれていて、学校に行ったら人が一人亡くなっていて、悪霊が学校に集まっていて。クラスの美少女が僕のことを見ていて、話を聞いてみたら四辻麗華のことを嗅ぎつけていて、家に帰ったら美女のおかえりなさい。

「これ何てエロゲ、って感じだな……」

 自分でまとめておいてなんだがとても現実だとは思えない。

 まぁ、さっさとシャワー浴びて出よう……四辻麗華が晩ご飯を作ってくれているらしいからな。それに、上がったら、連続殺人事件の被害者が全員霊能力者だったか否かも聞かなければならない。

 すっかり忘れていたが、朝に頼んでいたからな。

 着替えを済ませ、最近ほっといて伸びてきた髪を拭きながら食卓を見ると、朝食と一転して用意されていたのは和食ばかり。

 たくあん、焼き魚、かぼちゃの煮物、冷奴、ご飯にお味噌汁。

 自分は晩ご飯にここまで手を入れていなかったため(男一人の晩ご飯なんぞ普段は適当である)、不覚にも感動してしまった。

「朽葉くん、上がったのね」

 キッチンから、エプロン姿(エプロンの下には朝と変わらず僕の寝巻き替わりの黒いジャージを着ている)の四辻麗華が二人分の湯飲みを持ちながら出てくる。

「あ、あぁ……これは全部、あなたが?」

「そうだけれど」

「ありがとう。本当に、ありがとう」

「どういたしまして」

 その笑顔は卑怯だ。

 心を許してはいけないとわかっているのに、信用してしまっては隙が出来るというのに、喰われるかもしれないというのに。

 ……憧れていたのだ。

 自分以外の人間にご飯を作ってもらって、一緒に食べるということに。二人で、いただきますをしてみたかった。

 いつのまにか、僕の目からは――涙がこぼれ落ちていた。

「く、朽葉くん!? 泣くほど食べたくないのっ!?」

 四辻麗華の驚いた顔は初めて見ると思う。可愛い。

 だけれどそんなことも気にしないほど、僕は嬉しかった。感動していた。

「……いや、違うんだ。すまないな」

 髪を拭いていたタオルで顔をゴシゴシと拭き、ついでに抱えている猜疑心も今だけは拭っておこうと思う。

 美味しいご飯を僕のために作ってくれた。その事実だけで、僕は幸せじゃないか。

「驚かせたな。さぁ、食べよう」

 やや強引にではあるが、四辻麗華を椅子に座らせ、合掌する。

「いただきます」

「ふふ、どうぞ」

 箸を持ち、まずはかぼちゃの煮物を口に運ぶ。

「ん、美味しい……この味付け、どこで覚えたんだ?」

「秘密よ」

 もし、本当は四辻麗華が僕を喰うつもりでも、今はこうやって騙されておこう。

 知らぬが仏という言葉もあることだし。

 こうやって彼女といることで僕の憧れていたことが少しずつ現実になってきてるだけでも、僕は今充分に幸せなのだから。 

「なぁ、四辻麗華」

「何かしら?」


「――ありがとう」


 例えあなたが僕を殺そうとも、僕はあなたの腕の中で幸せに眠れるだろう。

 そう思う。 

【七野楓】

小柄な黒髪ショートカットの大和撫子といった風の、霊能力者でもある美少女。

頭が良く、真夜とは同じクラス。

真夜と変わらない程度の霊力のようだが……。

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