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第四十一話

ーーーーー翔鶴ーーーーー

『我、拿捕艦多数につき艦砲射撃を断念し本隊と合流せんとす。』

「以上が比叡からの報告になります。」

「分かった、返信は『了解す、会合地点にて待つ。』以上だ、下がってよろしい。」

「はっ。」

通信兵が退出する、敵艦隊の半数近い数が拿捕出来たのは良かったが、艦砲射撃が出来ないのは痛い。ならばどうするか、攻撃隊を出しても今回は敵も警戒しているだろうから確実に前回よりは被害が大きくなる筈だ。

「楓くん、誘導爆弾は積んであったかな?」

「少々お待ちください。」

パラパラと資料を捲って確認してくれる、積んでいる兵器を全部覚えるなんて真似は出来ないからそこら辺は臨機応変にというところだ。

「・・・積んであります、実戦試験用に20発だけですが。内訳は誘導爆弾が10発、誘導ロケット弾が10発です。」

「誘導爆弾はドイツのフリッツXか?ロケット弾はどのタイプだ?まさかV1号とかではないよな。」

「誘導爆弾はフリッツXの方が良かったのですが重量が重量ですので(1.5トン)アメリカのAZON誘導爆弾です、これならば通常爆弾に取り付けるだけですのでそこまで重くはなりません。誘導ロケット弾は日本陸軍のイ号無線誘導弾です、搭載数は甲型と乙型が半々ですね。」

エロ爆弾か。(注、試験中に熱海の旅館に命中したため、噂話に女湯に飛び込んだ等とも言われたためこの様な不名誉な名前がついてしまっている。それでも同時期に開発された桜花等の特攻兵器とは違い人命を粗末にせず世界的に見ても先進的な発想であったのは間違いない。)

「よろしい、明日の未明にファンドに対する攻撃を実施する、攻撃隊の編成急げ。」

「了解しました、何機まで出しますか?」

「烈風32機、流星20機。水平爆撃による実戦試験とする。一撃目はイ号誘導弾、その後に誘導爆弾で仕上げだ。烈風は爆装させずに増槽だけの装着にしろ、目標は軍事施設のみに絞れ。」

写真で見る限りこの港には小規模なドッグが存在している、さらには明らかに人力で使用していると思われるクレーン等だ(ただし地球でも紀元前の数学者、アルキメデスの手により人力のクレーンや熱光線照射可能な巨大鏡などが存在する)。これ等は民間でも軍事でも使えるため区別がしにくいのが難点である。

「了解しました。」

海戦が6時間ほどかかっているので夜明けは間もなくだ、その為攻撃隊の発進準備が整ったのは夜が明けてから1時間ほどたってからだった。


「発艦準備完了しました。」

「分かった、艦首を風上に立てろ。」

風上に艦首が向けられ発艦態勢が整えられる、艦首から吹き上がる蒸気噴出口からの蒸気が揺れること無く真っ直ぐに後方に流れる。

「搭乗開始。」

『搭乗開始!』

スピーカーから命令が発せられ搭乗員が愛機に飛び乗る。

「どうぞ。」

「ありがとう、班長。」

「戦果を期待しています。」

コックピットに座りエンジンの油温の確認や方向舵の確認をしていた整備班長から機体を受け取り素早くチェックを済ませる。油温、正常、プロペラ回転数、異常なし、方向舵、異常なし。発進準備完了、そう判断し整備班長に手を振る。車輪止めを確保していた整備員が待機所に駆け込むのが見え、カタパルトの上に機体が運ばれ発艦合図を今か今かと待つ。発艦指示要員が艦首近くに待機して艦の上下動が問題ないかを確認し旗を振られる。

「ぐぅ!」

首にGがかかり呻き声が出る。なお、ポンロク手当ては出ない。基本的に発艦はカタパルトによるものなので出しているとキリがないからだ(ただし水上機は別)。

『帽振れー。』

『頑張ってこいよー!』

『戦果を期待しているからなー!』

次々と機体が上空に上がり攻撃隊の発進完了には10分で終了した、攻撃隊は上空で編隊を組んでファンドに向かっていく。

「発艦完了しました。」

「分かった、別動隊と合流する。最大戦速で会合地点に向かえ。」

「了解しました。」

輪形陣を保ったまま30ノットで会合地点に向かう、攻撃隊にはあらかじめ伝えられているので迷子になる心配はない。なおイ号誘導弾は主翼折り畳み機能がないので爆弾槽が閉じれない、その為流星の最高速度が20キロ程落ちているが大した問題にはなっていない。


ーーーーーファンドーーーーー

「一体どうなっているのか、さっぱり分からん。」

飛竜がほとんど全滅されたあげく滑走路も破壊されたので生き残りも離陸することが出来ない、必死に穴を埋めているが士気が落ちて一向に捗らない。

「副官、いつ頃になれば滑走路は埋まりそうだ?」

穴埋めの指揮をとっている副官に聞いてみると

「明日までには使えるかと思います、ですが今日中には無理です。」

「ならば住民にも協力させろ、今は一刻を争う。」

「了解しました。」

街に行こうと副官が出ようとした瞬間に爆発音が響き渡る。

「一体何事だ!?」

そう叫んだが唐突に浮遊感に見舞われ、意識を失ってしまう。司令官という頭を喪失した部下達は成す術もなく右往左往するだけだった。


ーーーーー流星隊長・友永丈市ーーーーー

『イ号誘導弾の命中確認、しかしドイツ製の誘導装置は素晴らしいですね、少佐。』

「全くだ、しかしそうなると雷撃隊の神業が拝めなくなるな。」

『そうですね、でもこいつら相手には魚雷は効果が薄いのではありませんでしたか?』

「うん、その通りだ。装甲をもっと貼ってくれれば効果はあるかもしれないが当分は使わんだろうな。さて今度は俺達の番だぞ。」

『了解です。』

「では3000メートルからの水平爆撃に移るぞ、僚機は着いてきてるか?」

『ばっちり着いてきてます、他の小隊も予定通りの地区の爆撃に移ってます。』

「よし、ではしっかり爆撃頼むぞ。」

『分かりました。』

眼鏡型の照準機を覗き込みに入る、流星改は二人乗りなので水平爆撃の際は後部搭乗員が爆撃手を担当する。

『ちょい右。』

「ちょい右ヨーソロー。」

『進路そのまま。投弾まであと5、4、3、2、1、投弾今。』


ガコン


機体から爆弾が離れていき機体が浮き上がる、爆弾の後部から立ち上る煙を正確に兵舎に向けて動かす(動かす方法はジョイスティック)。

『当たりました。』

「ようし、じゃあ帰るぞ。」

上空で旋回し投弾を終えた機体が集合するのを待つ、ものの5分もたたないうちに全機が戻ってくる。

「桜より弁慶へ、集合完了、帰艦しよう。」

『こちら弁慶、了解。全機集まれ。』

無事に攻撃を終え帰還していく攻撃隊に対して帝国の者たちは指をくわえてみているしかなかった。

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