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第四十話

ーーーーーファンドーーーーー

「あいつらはまだ帰ってこんのか?」

「まだです。」

 飛竜達が出撃してからかれこれ半日近くの時間が経っているが、いまだに誰も帰ってきてはいない。これはいささか異常な事態だと言える、そこまで飛竜は長く飛ぶ事が出来ない為だ。

「まさか・・・全滅したとか、いやそれはありえない。あってはならないのだ!」

自分に言い聞かせるように口に出したが、今の状態はどう見ても全滅した以外には考えられない。

「どうしますか、それと重大な事が判明しました。」

「何だ?これ以上悪くなることは無いと思うが聞かないふりはできん。」

「どうも海軍が出撃したようです。」

ドンと机を叩く。

「馬鹿な、敵の位置は分からない筈だ、・・・いや敵の逃げた方向が分かるからそれで見当をつけたつもりか?一体何時の事だ?」

「方角はその通りだと思います。出撃したのは二時間は前の事だそうです、どうも衛兵を口止めしてこちらに報告が来ないようにしていたみたいです。」

「何ということだ、海軍まで全滅したらどうなるか分かったものではないぞ・・・。」


ーーーーー翔鶴ーーーーー

「ヴァルト様、彩雲からの入電です。」

「何?早いな。」

「はい、『我、敵艦隊発見す、小型艦100隻ほどなり。敵艦隊母艦に向かい進撃しつつあり。1隻の大きさ約50メートルと認む、敵艦隊3列単従陣を成す。我引き続き港の偵察を続行せんとす。』です。どうしますか?」

ようやく着艦作業が終わったため一息つけると思っているときの事だ。彩雲が発艦してから三十分も経っていないのだが。

「不味いな、利根達はまだこちらに合流していないぞ。」

「現在合流のためにこちらに向かってきておりますが、いかがなさいますか?」

このまま近寄らせても負けることはあるまい、だが流れ弾で空母が傷つくのは論外だ。

「比叡、霧島、アドミラルシェーア、リュッツオウ、グラーフシュッペーを前進させ利根達と合流し迎撃させよ。今からだから夕方にもしくは夜戦になるだろう、充分に注意を払わせてくれ。」

「了解しました。」

「翔鶴以下空母及び直衛艦はここで待機しているともな。」

「はい。」

比叡達は30ノットで利根達との合流に向かう。正直な話、利根だけでも充分なのだが叩けるときに叩くのは戦争の基本だから殲滅することにしたのである。

空母部隊

翔鶴級2隻

オークランド級2隻

秋月級4隻


ーーーーー比叡ーーーーー

「艦長、利根他2隻との合流完了しました。」

「了解、全艦敵艦隊に向け航行を再開せよ。会敵予想時間は何時だ?」

「今からですと3時間ほどかかります。」

壁に掛けてある時計に目を移す、今は午後2時。この世界での日が暮れるのは午後六時位である、午後五時ともなればかなり暗い。

「分かった、ならば艦速を少し落とせ。会敵は日が暮れてからにする、今のうちに戦闘配食を配れ。夜間監視員は準備に入るように、晴嵐は釣光弾を搭載させろ。」

「はい。」

各戦闘艦に夜戦の指示が下され騒がしくなる、一番張り切っているのはポケット戦艦達である。何せ出撃するまでの半年間みっちりと旧連合艦隊将兵の扱きを受けている為だ。ようやく夜戦の腕前を示せるのだ、張り切ろうともいうものだ。半ば八つ当たりとも言えなくはない。


ーーーーー4時間後・比叡ーーーーー

艦隊は単従陣をとって航行する、駆逐艦が前方に立ちその後ろに比叡、霧島、アドミラルシェーア、リュッツオウ、グラーフシュッペーの順番である。艦橋の高い比叡のレーダーが敵艦隊を捉える。

『電探室です、前方に感あり、距離5万メートル、反応多数です。』

「そうか、全艦に通達『突撃せよ』。」

「了解。」

司令官からの命令が下された後全艦艇が動き出す。

「艦長、後は任せる。」

「了解しました、夜間監視員は前方に注意せよ。晴嵐を射出させろ。」

『了解。』

「背景照明が成り次第、照準、砲撃戦を開始する。」

「了解。」


ドン、バシュッ


晴嵐が全機打ち出され敵艦隊の上空に向かっていく。万が一被弾したときのために艦上に置いておくと吹き飛ばされるためだ。

暫しの時間がたち、水平線が明るくなり敵艦のシルエットが鮮やかに浮かび上がる。

「敵艦距離4万。」

「距離を詰めるぞ、最大戦速。距離3万にて撃ち方始め。」

「了解。」

機関が唸り艦首から立ち上る水柱が高くなる。最大戦速を出して距離を詰めつつ各砲塔では榴弾が装填される。

「間もなく距離3万。」

「転舵面舵一杯!左砲戦始め!」

比叡と霧島は舵をきり、全砲塔が左に向く。

「全砲塔旋回完了、砲撃準備よろし。」

「撃てー!」


ドドドーン


まずは試射である、交互撃ち方により間断無く砲弾を打ち出す。3射目で夾叉を得るが釣光弾が燃え尽きそうになり少し暗くなる、だが再び晴嵐から追加の釣光弾を落としたのでそこまで明るさに変わりはない。

「次より斉射に移行します。」

一方的な攻撃が加えられる。


ーーーーーアドミラルシェーアーーーーー

比叡からの突撃命令を受け増速していたアドミラルシェーアも射撃準備を整えていた、少し違う点があるとすれば光学照準だけでなくレーダー射撃も併用している点だろう。

「距離間もなく2万。」

「面舵一杯、左砲戦用意。グラーフシュッペー、リュッツオウに通信『我に続け』。」

「了解、面舵一杯。左砲戦用意。」

艦体が右に動きAB砲塔が左を向く。

「舵戻せー。」

『砲術長より艦橋へ、射撃準備完了。』


ドドドゥン


後方からは相変わらず巨弾が撃ち出されていく。

「グラーフシュッペー、リュッツオウ共に砲撃準備完了とのことです。」

「うむ、本隊に負けてなるものか、砲戦開始。」

『フォイエル。』

砲術長がすぐに応え砲撃が開始される。


ドドドン


初弾から命中が確認され、数隻が炎に包まれる。

「命中確認。数隻より火災確認しました。」

「よろしい、引き続き砲撃を続行せよ。」

ドイツ艦自慢の速射能力をフルに使って榴弾を叩き込む、獲物は腐るほどいるため的には困らない。なおこの結果を受けて各艦艇にはレーダー射撃も強化されることになった。(一部の反対があったため連動装置が比叡たちには積まれていない。)


ーーーーー帝国海軍ーーーーー

「戦列艦フォーム撃沈、ターメも炎上しています!」

「ど、どうしますか?司令。」

旗艦のナルハでは騒然としている、見たことも聞いたこともない攻撃で次々と艦が沈んでいるからだ。

「くそ、このままじゃ嬲り殺しにされる。前方の艦を避けて前方の砲火に接近するんだ!」

風を帆に送って必死に速度を上げるが一向に近寄った気配は無い、まだまだ受難は終わりそうもなかった。


ーーーーー利根ーーーーー

「アドミラルシェーア、リュッツオウ、グラーフシュッペー撃ち方始めました。」

「よろしい、では本艦は友軍の支援に当たる。探照灯を照射せよ。」

「了解。」

探照灯が照射されより鮮やかに写し出される、命中率を上げるためだ。本来ならば危険な行為でしかないのだが、敵の武器の有効射程は遥か手前なので安心して照射ができる。この照射のおかげで命中率は更に向上し海上には大量の炎上している船がいることになった。


ーーーーー帝国海軍ーーーーー

「このままではなぶり殺しにされます、降伏を進言します。」

「馬鹿な、皇帝陛下からお預かりした艦を敵に渡すというのか?ならば戦って死んだ方がましだ!」

「捕虜となれば汚名返上の機会はあります!これだけ一方的にやられていては無駄死にです!決断を!」

「嫌だ!その様なことは認められん!」

「そうですか・・・残念です。」

「何だと?ガハッ!」


ドタッ


胸から剣を生やし倒れる、副官が剣を刺したのだ。

「これ以上の無駄死には容認できません。許してほしいとは思いませんし言いません、部下を守るのも私の勤めですから。」

その後すべての帝国海軍の艦は停船し国旗を下ろし赤旗を掲げる、帝国では降伏の合図となっているからだ。


ーーーーー比叡ーーーーー

「敵艦隊停船した模様。」

「どういうことだ?遮二無二突っ込んできていたのに。」

「考えていても分からんか。偵察員なにか見えるか?」

利根から探照灯が照射されているが全体を写し出すことはできない、明らかに光量が足りない。

「見える範囲では変わりはありません。」

「そうか、では全艦探照灯照射。」

全艦艇から探照灯が照射され敵艦隊を鮮やかに映し出す、偵察員が改めて双眼鏡を向けて敵艦を確認すると、

「敵艦のマストに赤旗を確認。船上でも赤旗を振っているようです。」

「降伏の意志があるかと思われます、いかがいたしますか?」

アリシアから全乗組員に対しての授業でこの世界での降伏の手順も習っているため判別出来たのだ。

「全艦砲撃やめ、陸戦隊臨検用意。副長交渉を命じる。」

「了解。」

内火艇で敵艦に向かった副長によりすぐに帝国軍は武装解除に応じた、その後すべての艦をロープで結びヨルトリンゲルまで曳航することとなった。以上の事を翔鶴に打電し比叡達は合流のため再び引き返した、ちなみに砲身は帝国の艦船に向けられており不穏な動きがあった場合撃沈できるようにしている。



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