第二十五話
----前衛艦隊・旗艦比叡----
「少将、レーダー室より6機の不明機がこちらに接近中だそうです。いかがいたしましょう?」
副官からそう聞かれ、返答を考えているのは前衛艦隊指揮官猪口真弓少将だ。
「早朝に来た不明機と同じ方位か?」
「はい、同じ方位からです。速度は先ほどのに比べると若干遅いそうです。どうしますか?」
「ふむ、攻撃されるかどうか分からんが、警戒をしておいて損は無いだろう。全艦に第2級戦闘態勢、及び輪形陣を展開し対空戦闘の準備をするよう伝えよ。直衛隊には高度を取り攻撃されるまでは手出しをしないように伝えよ。」
「了解しました。」
命令が伝達されると共に乗組員たちが慌ただしく動き出す。その騒々しい艦橋の中で少将の呟きを聞くものはいなかった。
「さて、これから接触するであろう者たちは、どのような考えを持っているのか。大変に楽しみだ。」
-----飛竜・レイウェル公爵-----
「もうすぐ見えてくるか?」
護衛についている騎士に問いかける。飛行しているためかなりの大声を出さないと隣にいるものに話すのも一苦労だ。今年で40になるレイウェルにはこたえることだ。
「もうまもなく着くかと思われます。ですが相手が帝国の奴らだったら、」
その時視界に前衛艦隊の姿が映る。
「な、何だ、この船は、これ程巨大な船は見たことがないぞ!」
その時一番大きな船から光が瞬いた。(一番大きな船とは霧島と比叡のことで光が瞬いたというのは発光信号のこと)
「一体なんの真似なのだ?」
一人の騎士が同僚に訊ねる。ベテランがまるでヒヨコのような顔になり不安を隠しきれていない。
「分からない、あのような魔道具は見たことがないぞ。」
「分からないものをいつまでも考えても仕方あるまい。あの船に降りよう、ここで無駄な議論を重ねるより乗り込んで直接きくとしよう。」
公爵がそう言い高度を落としたので護衛も付いていく。そして比叡の前部甲板に下り立った。
「私はヨルトリンゲル領、領主レイウェル公爵である。この部隊の責任者と話がしたい。出てきてくれないだろうか。」
一人の士官が前に出てくると
「もうすぐ少将が参られますので、しばらくお待ちください。」
到着まで騎士たちは静かに待っているのだった。




