第14話 会合
「いやあ、先ほどは助けてくださってありがとうございます。竜の前に出された生け贄の気分でしたよ。」
そう言いながら話しかけてくるのは、商船隊の元締めだそうだ。どうも港に物資が入ってこなかったため、自前の船で食糧なども買いに行っていたそうだ。しかし行きは良かったのだが、帰りに海賊に捕まってしまったらしい。なおセシリア殿たちは商船隊と合流する前に艦内に収容している。船はもったいないが自沈させた。証拠があると後で何かと面倒になりそうだからだ。そのため海賊は全滅させたということにしている。ちなみに竜の前に出された生け贄というのは、地球で言うところの絶体絶命の意味だそうだ。
「いえいえ、こちらも偶々手を貸しただけですから。」
「そうですか・・・、でしたら一緒に港まで行きませんかな?港に帰ったら私の屋敷もあります。せっかくお知り合いになれたのですから、食事でもご一緒いたしましょう。」
港には入ってみようと思っていたので正に渡りに船だな。
「それはありがたいですね。ですが後続の艦が来るまで時間がかかりますので今日はここで停泊しても宜しいでしょうか?」
「おお、かまいませんとも。」
「楓君、本隊とは明日合流できるかな?」
「明日の0600時に会合予定です。」
「では明日合流出来次第、出発しましょう。」
「わかりました、私も娘の薬を早く届けたいですし、では今晩はこれくらいで失礼させていただきます。」
そう言って分かれたがこの商人は、商売のためならばどんな罪でも犯しそうだ。先ほどから我々の船を見る目が尋常ではない。帆も無く素早く自由に動ける船なだけでも欲しがるのは当たり前だろう。今日の警備はいつも以上に気をつけるように伝えておこう。大和に帰った後、そう言うと私は楓君に艦隊の合流を指示と警備を厳重にするよう命令するのだった。