第十五話
------商船・マーメイド号-------
「旦那様、奴らまだ着いてきてます。」
「くそ、あえてゆっくり追いかけてこちらを嬲るつもりか、距離はどれくらいだ。」
いかんせん先ほどの不意打ちで損傷した船がいる為(最初は共に航行していた、用事があるため同行したいと申し入れされたため)、こちらは思うように速度が出せない。損傷した船は切り捨てられない、赤字になってしまうからだ。
「だ、旦那様、大変です。」
「何だ、海賊に追われる以上の驚きがあるか。落ち着いて話せ。」
「は、はい、(深呼吸中)・・・前方から船が接近しています。見たことの無い船です。あと何か光ってます。」
見たことの無い船だと、だがその船を囮にすれば俺たちは逃げられるかも知れない。俺たちの金のために、その見知らぬ船には犠牲になってもらおう。光っているというのは何かは分からんが生き残った後に聞けばいい。金がないと娘の命が・・・。
「よし、その船の方に針路を向けろ。接触するぞ。」
「了解です、旦那様」
------遊撃艦隊・旗艦アドミラル・シェーア------
「ふむ、こっちに向かって来ているな、両艦隊の距離はどれだけ離れている?あと発光信号に対しての反応は?」
「本艦からは2万メートル、後方の帆船はさらに3万メートルほど離れており合計で五万メートル離れてます。発光信号に対しての反応は依然ありません、多分分からないのではないのでしょうか?」
「やはり発光信号は分からないと考えるのが妥当か、となると直接接触してからも時間はあるか、島風に通達、本艦に先駆け接触せよ、なお敵対行動をとった場合、撃沈を許可する。以上だ」
「了解しました、言語は翻訳されるので大丈夫と思いますが、敵対行動はとって欲しくないですね。」
「こればかりは彼らの懸命な判断を期待しよう。」
一人の伝令が入ってきた、「失礼します、島風より『我了解せり、これより接触に入る』との事です。」返信のあと増速して離れたそうだ、駆逐艦の仕事は早いな、そう思いつつ返信を待つことにする。
-------商船・マーメイド号-----
「旦那様、一隻近づいてきます、ものすごい速度です。」
「何、俺の船より早いってのか。」
この船は快速を売りにしている、大きさはそこそこだが確実に、早く運ぶのが身上なのだ。
「はい、それに大きさもこの船の3いや、4倍くらいはあります。実際その目で見てみた方が早いと思います。」
「確かにそうだな、どれどれ。」
そう言うと、遠眼鏡で見ると絶句した。確かにこの船の4倍はありそうだ、それに何だ、あの速度は。まるで魚の様じゃないか、良いな、あの船ぜひほしい。そう思っていると大きな声に現実に引き戻された。
-------駆逐艦・島風-----
拡声器を用いて呼びかける、距離は1000メートル程だ。まったく発光信号が使えればこんな苦労はしなくても良いものを、手間をかけさせる。
「我は、駆逐艦島風なり、貴船隊いかなる状態にありや、我知らんと欲す、なお後方の船はいかなる存在なりや?早急なる返答を求む、なお一旦停止されたし、これ以上の接近は敵対行動と判断し攻撃する。以上。」
さて、どんな返事があることやら。念のため主砲は帆船に向けている。
『こちら商船マーメイド号他5隻なり、現在、海賊に追われつつあり。救援求む。停船すれば餌食になるため不可能なり』
「ふむ、アドミラル・シェーアに連絡、前方の船、民間の商船の模様、後方の船は海賊の模様、援助要請有り、指示求む、以上」
少したってアドミラル・シェーアより返信があった。
「『救援せよ、海賊船にも接触せよ、ただし攻撃された場合一時離脱し本隊と合流せよ、無理をすること無かれ』以上です。」
「了解した、マーメイド号へ、救援の件了解せり、南へ転舵されたし、これより本隊が通過するため、妨害せぬよう重ねてお願いする。・・・ようし、最大戦速、海賊に殴りこむぞ。」
「了解しました。」
かくして、戦いは始まるのだった。
マーメイド号:全長40メートルの帆船、快速が売り




