第八話
ーーーーー大淀ーーーーー
「二式水戦、零式水偵の収容が完了しました。」
「御苦労様、下がって良いわよ。」
「失礼します。」
二式水戦と零式水偵を艦内に収容し終えたあと艦橋には重い空気が立ち込めている、梅が沈んだ事が響いているのだ。
「魚雷の誘爆か、こればかりは対処のしようがないな。駆逐艦の最大の武器を外すわけにはいくまい。」
「はい、元から他の部分に当たっても似たような状態になりますから・・・、駆逐艦の装甲なんかは弾片防御しか出来ませんから。大淀の方はどうしますか?」
「この島が安全ではない以上他に行くしかあるまい、あれが全部では無いのは確実だろう。あれらが来た方角は?」
あれとは先程戦った竜のことだ。五匹であれだけの被害が出たのだ、数十匹も来れば壊滅するのは火を見るより明らかだ。この世界に来て早々に死にたくはない。
「方角は東からです。」
「そうか・・・。ならば一日南下し、その後東に向かおう。大陸がある可能性はそちらの方が高そうだ、今は敵と戦う可能性を少しでも減らすことが肝要だ。そして本拠地となる所を見つける、ドッグを造らなければ修理もままならないしな。」
艦の前方を見ると痛々しい様子が見える、一番砲塔は左舷に向いたまま、二番砲塔は天蓋がぶっ飛んで焼けただれ右舷の一番高角砲も使い物にならない、主砲の近くにあった12.7ミリ機銃は当然消滅している。
「この痛ましい状態も見ていたくはないがな・・・、今は生き残りの艦艇と共に落ち着ける場所を探す。」
「了解しました。」
従兵が入ってくる。
「失礼します、準備が整ったようです。」
「・・・そうか。」
死んだもの達を弔い先に進む、生き残った我々にはそれくらいしか出来ないからだ。伝声管で全艦に伝える。
『手透きの者は最上甲板に上がれ、戦死者を送る。敵が来る可能性が高いため簡易に行う、以上。』
ーーーーー大淀・最上甲板ーーーーー
「総員最敬礼、捧げ銃。」
空砲を撃ち、梅が沈んだ所を旋回する。軍楽隊が君が代を鳴らし全員で歌う。これで死んだもの達は同じところに眠れるだろう。
「最敬礼止め、艦隊出港。輪形陣を組め、これより我々は拠点を探しに出発する。」
艦隊となり南下を開始する、この世界でも油断は出来ない。我々は強者であるが無敵ではないのだから。当分修理できない大淀には我慢してもらおう。




