第52話 上陸準備ー2
ーーーー海岸線防衛部隊(帝国)ーーーー
「しっかし暇だなー」
背伸びをしながら雑談に興じている兵士がいつものように海岸を見ている。現在帝国の一個大隊が警備に付いているが何もないのでだらけているものたちが多いのだ。しかしそれも仕方がないことであろう、他の部隊は華々しい戦果を上げているのに自分達は何でこんなところにいないといけないのかという不満が溜まっているのだから。
「仕方がないだろう、命令は命令だ。真面目にやらないと怒鳴られるぞ。」
「大丈夫だって、大隊長も愚痴ってたからな。まあ命の危険がないだけめっけもんなんだけどな。」
「確かにな、ここにいる限り事故にでも遇わなきゃ死ぬことは無いわな。」
「「ははははははは」」
この時まともに見回りをしていたのならば艦隊を見つけることは出来ただろう、ただ何かできたかどうかは別問題だが。
「行ったか。」
「はい、しかしいくら後方とは言え気を抜きすぎですね。戦時中ということは分かっているですかね?」
「まあ、割りを食うのはあいつらの方だしいいんじゃないか、さて連絡を頼むぞ。」
「了解しました。」
彼女らは一足先に上陸し海岸の情報収集を行っていたのだ。海岸に敵部隊がいることが分かったのも詳しい地形が判明できたのも彼女達のお陰なのだ。
「隊長、返信入りました。」
「何と言っていた?」
「『了解せり、貴部隊の活躍に感謝す、これより一時間後に上陸作戦を開始する。上陸予定地点より速やかに離れられたし。』以上です。後もう一報ありますがいかがいたしましょうか?」
「もう一報?聞いておいて損はないだろう。教えてくれ。」
もったいつけながら彼女が報告する。
「では読み上げます、驚いて大声出さないで下さいよ。『発戦艦大和、危険な任務誠にご苦労、部隊に帰投した後一日の休暇を与える。総司令官ヴェイス、追伸部隊宛にワイン、ビールを1ダース届けさせたので楽しむとよい。』以上です‼」
あふれでそうな歓喜で大声を出しそうになるが彼女たちは精神力でそれを押さえ込んだ。
「よ、喜ぶのは後だ。」
「はい、隊長。」
ある意味戦闘から最も遠いような雰囲気になってしまった。まあ突っ込みは無粋だから止めておくとする。
ーーーーー強襲揚陸部隊ーーーーー
「オーライ、オーライ。よーしそのまま下ろせ。」
特型大発にタイガーを下ろし固定する、いくら特大発とはいえ2両しか乗せることは出来ない。(マウスは1両)後は随伴歩兵が一個小隊付いていくことになっている。
「しかし乗せるのも一苦労だな、もう少し軽い戦車が欲しいな。」
蝦夷型強襲揚陸艦は巨大ではあるが実際に揚陸に使うのは大発だ、乗せるのにも限界はあるからもう少し軽い方が良いと思うのはどうしようもない。
「すまんな、次に出すのはもっと軽いのにしよう。三式中戦車や四式中戦車でいいかな?」
「え?」
後ろに総司令官がいるとは思っていなかった彼女は腰を抜かさんばかりに驚いた。
「驚かせたかな?済まないね、だが現場の意見は来てみないと分からないからね。それで戦車以外に必要な物はあるかな、次の召喚の時に出すことにするが」
ようやく固まっていたのが動くようになったのか、ガチガチに緊張しながら話してくる。
「出来ることならば上陸時の直接支援用に砲撃挺が欲しいです、艦の主砲では威力が強すぎます、その点砲撃挺は大発と同じように進撃出来ますので適時支援が可能です。」
「成る程、では日本陸軍で使われていた砲撃挺と海軍のカミ車で良いかな。他にはないかな?」
少し考えて
「歩兵達の移動用にジープやハーフトラックかあると良いと思います、後は偵察用に装甲車や高速の軽戦車があれば言うことはありません。」
「今回は敵を国境まで押し返すのが目的だから余り必要ではないだろうが、いずれ必要にはなるな、分かった。それらも次に召喚するとしよう。貴重な意見をありがとう、これからも励んでくれ。 」
最後に激励の一言を賜った後、ここを後にされた。よし総司令官の為にも頑張るぞ。一人気合いを入れるのだった。
「順調に上陸準備も終わっているね。」
「はい、これでしたら一時間後の上陸も問題ないでしょう。」
「だが油断はいけないからね、まずは一つずつ勝ちを拾っていこう。」
「そうですね。」
上陸開始まで後一時間、時間は進んで行く。




