第10話 鹵獲
-----戦艦・大和-----
「敵船による攻撃の損害ありません。」
「ご苦労様、下がっても宜しい。」
「失礼します」
そう言い敬礼した後、副長は下がった。
「あの船はあんな旧式な兵器で、こちらの装甲を抜けるとでも思ったのか?馬鹿か阿呆か・・・いや両方だろうな。」
「バリスタごときで抜けるほどやわな装甲ではないんですけどね、もう一隻の方は、おとなしく帆をたたみましたし良しとしましょう。」
ちなみに攻撃してきた船は、高角砲と機関砲の集中砲火で穴だらけとなり浸水したので炎に包まれている。もう少しで沈むだろう。
「そうだな、良い情報源になるだろう、秋月に連絡、商船と再接触し本隊と合流せよ、信濃には、戦闘終了、合流されたし、だ」
「了解しました、通信室に連絡入れます。」
「あと臨検部隊を召集してくれ、ちょっと行ってくる。」
「臨検部隊の件は分かりましたが、直接行かれるのは納得できません。危険ですので他の者に行かせてください。どうしても行かれるならば私もご同行いたします。」
「うーん、残ってくれた方がありがたいんだけど。まあいいか、じゃあ同行頼むよ。」
花が咲いたような笑顔で「はい、全身全霊を持ってお守りします。」と言われてしまった。そんなに私の護衛任務がいいのかな?そう思いながら内火艇の準備をさせる。
-----海賊船------
「おい、小型船がやってくるぞ。」
部下たちが騒いでいるようだ、
「うろたえるな、攻撃してこないということは降伏したのを認めてくれたということだ。」
「・・・そうですね。あちらの人物が立派な方ならば良いのですが・・・」
我々は海賊ということになっている、捕まれば殺されるか、良くて奴隷だろう、私一人の身で部下が助かるのならば、いかなる屈辱でも甘んじて受けよう。そう考えていると、下ろされた縄梯子から一人の少年と美女たちが上ってきた、合計20人ほどだろうか。
「ふむ、マストは3つ、一つは舵取り用の物かな。3000メートルまで攻撃できる武器はどこかな?」
少年が船の事を珍しそうに見ている。どこか微笑ましい光景だ。
「この船の指揮官はどなたですか?」
美女の一人が問いかけてくる。私は一歩前に出て答える。
「私がこの船の船長のセシリア・ウィンブルグだ。部下たちには寛大な処置をお願いしたい。」
「あなたが船長ですか、あなたの部下たちの処置は司令官に決めていただきます。・・・あれ?司令官はどこに行かれた?」
近くの兵に聞いている。
「マストに登っておられます、一番前のです。」
「何っ!司令官!危険です、降りてきてください!」
「おお、いい風景だぞ、楓君。あとこの船の船長さん、一つ聞いていいかね?」
いきなり話が振られ驚いてしまい、声が上ずってしまう。そして言われた一言に戦慄する。
「に、にゃにかな?」
「何で海賊の船に紋章を彫った遠眼鏡があるのかな?それに海賊船にバリスタが装備されてるなんておかしいね。」
!!マストには遠眼鏡を、置いたままだった。しくじってしまった。仕方ない彼には事実を話そう、ここで捕まった我々に故郷に帰っても口封じをされるだけだ。成功すればそれでよく失敗すれば切り捨てられるそんな作戦なのだ。事実を話せば待遇も期待できるかも知れないし。駄目で元々だ。