第36話 帝国の主要港
ーーーーー秋月・艦内ーーーーー
「こんなものが本当に浮かぶのか?」
不安げな顔で聞いてくるのはレナ嬢だ。
「このような乗り物に乗るのは不安ですかな?」
逆に聞くと顔を真っ赤にして答えた。
「こ、怖くなどない!!それよりも貴殿の方が不安なのではないか?」
若干声が上ずっているが、強がっているのがまるわかりだ。まあ木ならば浮かぶのが理解できるようだが鉄はなあ、まあ浮かぶのだと思って貰えればそれで良いか。
「緊張せずに肩の力を抜いてください、ほら窓から良い景色が見えますよ。」
窓に目を向けさせようとしても踏ん張って動こうとしない。そんなに怖いかな?別に沈んでいくわけでは無いんだから、これを見ると潜水艦に乗せてみると面白そうだなとか思ってしまう。私から見れば竜の方が怖いんだがな。
「はっはっはっ、情けないなレナよ。」
そう言っている公爵は窓から景色を見ているが膝が笑っている、小鹿のバンビみたい。
「そう言うお父様だって膝が笑っているでしょう‼」
端から見ていると面白いものだな。思わず笑ってしまう。
「笑わないでください‼」
「いや、申し訳ない。悪気は無かったのだ、ただ親子の触れ合いとは見ていて微笑ましいと思ってしまってね。気分を悪くしたのなら謝る、すまなかった。」
私が頭を下げると彼女は驚いていたが、館長の言葉でそちらに注意を戻す。
「司令官、間もなく大和が見えてきます。」
「分かった、指示に従ってくれ。楓君に戻ったら艦橋に上がるとも伝えてくれ。」
「了解しました。」
ゆっくりと大和に近付くする秋月から海を眺める。感傷に浸る暇はないが少しくらい堪能しても良いだろう。
ーーーーー戦艦大和・第一艦橋ーーーーー
「お帰りなさい、司令官」
「ただいま、艦長。何か変わったことはあったかな?」
留守の間は艦長に艦隊の指揮を頼んでいた、有事の際は独断も許可している。
「潜水艦隊から帝国の主要港と思われる都市を発見したそうです。上空からの写真撮影をしたいので艦載機の使用許可が欲しいそうです。」
「はて?偵察に関しては指揮官に一任しているはずなんだが・・・」
偵察に行かせる時にそう命じたはずなんだが。
「はい、ですが戦闘の可能性が高いので許可が欲しいそうです。いかがいたしましょう?」
都市を偵察すれば船舶の建造能力、整備能力、倉庫の数で備蓄物資の量が推測できる、戦いが長期になる可能性が否定できないのでどの様な情報でも欲するべきだろう。
「偵察を許可する、ただし夜間に行うこと、陽動のために複数で偵察と軍事施設に攻撃を行え。」
「了解しました、連絡します。」
艦長が従兵に通信室に連絡に行くように伝えた。
「予備の艦隊がいないか、そしてどの様な状態なのか判れば良いのですが。」
「結果は神のみぞ知る・・・だな。」




