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〈chapter:03-01〉  ジョージさんと同居です。

第三章です。


はたしてカノンちゃんは、どのような経緯でジョージさんのもとに居候することになったのでしょうか……?

 さて、私とジョージさんの前日譚はもう少しだけ続きます。

 ごく普通の中学生である私がどうして変態である叔父と同居することになったのか……

 その経緯が気になる方は、どうかいましばしご付き合いくださいませ。


                 ●


 あのあと……

 つまり私こと茉莉花音まつり・かのんがすったもんだのすえに、

 公園でこれからしばらく同居する予定の叔父さん(女装ver.)と衝撃の対面したあとのこと。


 バンダナ男たちのせいで図らずも衆目を集めてしまった私たちは、

 とりあえず公園を出て私たちの同居先……

 言い換えるなら私の居候先である、叔父さんの家に向かいます。


 その途中で叔父さんは、自身の女装を以下のように説明しました。


 (問)叔父さんとの初顔合わせに緊張していた私と同様に、叔父さんも気を揉んでいた。

       ↓

 (解)だから女装した。


 ……うん。

 見事に意味がわかりません。

 さすがに説明不足を察してくれたのか、さりげなく車道側を歩く美男子(女装済)は話を続けます。


「一説によると、人のイメージは第一印象で八割が決まるという。そしてそれは、その後なかなか覆らない。だが逆説的に、大事なファーストコンタクトで好印象を与えることができれば、それはその後の人間関係をよりスムーズに進めることができるというわけだ」

「だから叔父さんは、数ある選択肢のなかから『女装』を選んだと?」

「ああ。ギリギリまで『着ぐるみ』かで迷ったが、こちらを選択した」


 いや、その選択肢はそもそもおかしい。


「なにせ俺たちはこれからしばらく、同じ家で生活をともにするパートナーだからな。その相手にあまり『異性』を感じさせず環境に適応してもらうには、自身の印象を『同性』に塗り替えるのが一番効率的だと判断したんだ」

「……なるほど。それで叔父さんは、そんな恰好をしているわけですね」

「ああ」

「だからそれはけっして叔父さんの、個人的な性癖というわけではないんですね?」

「オフコース。俺に女装趣味はない」


 自信満々に言い切る叔父さん。

 女装については大事なことなので二回確認しましたが……

 まあ、たしかにこうして説明されてみれば。

 叔父さんの言い分も、まったくわからないというわけではありません。


 事実そうした叔父さんによる『気遣い』によって、私の叔父さんに対する心象は、ビフォーとアフターでずいぶんと変わりました。

 具体的にはすでにこの美形すぎる叔父さんは私の中で『尊敬できる年長者』ではなく『残念な人』に分類されており、いちおう私のデフォルトなので敬語は使っていますが、そこに敬意という概念は存在していません。

 本当にそこまで計算づくなのかどうかはわかりませんが……

 少なくとも直前まで私がこの叔父さんに抱いていた『気遣い』とか『気後れ』とかは、この時点で見事に吹っ飛んでいました。

 ま、確実に『不安』は増していますけど。


「そんなことよりもフェアレディー。これからキミのことは、マイドーターと呼んでもいいかな?」

「いや、話の切り替えが突飛すぎるうえにさすがに意味がわかりませんよ」

「俺のことはジョージと呼んでくれて構わない」

「え? なにこの距離感。血縁者とはいえさすがに図々しすぎません?」

「だってマイシスターのドーターなら、俺のドーターも同然だろう?」

「なんですかその欧米風の定義は……」


 ファミリーの括りが大雑把すぎます。


「嫌かい?」

「はぁ。まあ、べつにいいですけど……」

「サンキュー。感謝するよ。やっぱりマイドーターは優しいね」


 にっこりと、まるで聖者のように微笑む叔父さん。


 っていうか怖い。

 この叔父さんの笑顔とか、自信とか、自由とか、とにかくもう全てが怖い……。


 同じ言葉を使っているのに、まるで未知の生物を相手にしているような祖語感。

 先ほどの不良たちとはまったく異なる悪寒が私を包みます。


(……もしかして私、早まりました?)


 はやくも叔父さんとのコミュニケーションに危機感を抱き始めた私。

 その脳裏には、数日前の、茉莉家での会話がフラッシュバックしていました……


次でようやくカノンちゃんの両親が登場です。


お読みいただき、ありがとうございました。

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