〈chapter:09-01〉 ジョージさんは変態です。
【前回のあらすじ】
ロッキーさんと砂金さんは仲直りしました。
さて……そんな具合に。
砂金さんとロッキーさんがなんとか無事、元鞘に収まって。
これで話が終わりなら、物語として話がキレイにまとまったんでしょうけどねぇ……
「……はぁ」
残念ながら現実にはその後があり、蛇足というものがあります。
それは演劇で言うなら舞台裏。
小説で言うなら後日譚、といったところでしょうか。
ともあれ。
「ねぇ、ジョージさん」
「ん?」
かちゃかちゃ。ことり。
私はその日の夕食中、同じ食卓を囲みつつそれまで一言も会話を交わしていなかったジョージさんに、箸を置いて話しかけます。
「どうしたんだいマイドーター。もう、いいのかい?」
「ええ、ええ、もう十分ですよ。ジョージさんの腹芸は、もうお腹がいっぱいです」
その瞬間『ピクッ』と、ジョージさんの柳眉がかすかに動きます。
それは一瞬で消えてしまうほどの、儚いものでしたが……
あー、そうかー。やっぱりそうなのかー。
私は確信しました。
「ねえジョージさん。怒らないから正直に話してくださいね。
いったいどこからどこまでが、ジョージさんの筋書き通りだったんですか?」
「はて? いったい何のことだいマイドーター?」
きょとん。
ジョージさんは本当に心当たりがないといった面持ちで首を傾げます。
でもその反応……さっきからママが嘘をついてるときの反応とそっくりなんですよ!
さすが姉弟。
ママという経験値がなければ、思わず騙されてしまいそうなポーカーフェイスぶりです。
ええ、ええ、いいでしょう。
そっちがそのつもりなら、こっちは好き勝手に喋らしてもらいましょうとも。
「まずあとになって私が違和感を覚えたのは、この一件、ナオきゅんがあまりにも協力的すぎるんですよ」
それが私への愛ゆえに……ということであれば、嬉しい限りなのですが。
残念ながらそう思い込めるほど、私はピュアな人間ではありません。
なによりそれを信じられるほど、ナオきゅんは私にデレていません。
悲しい現実です。
ぐすん。
「……どうしんたんだいマイドーター? 泣いているのかい?」
「泣いてなんかいませんよ!
と、とにかく、今回の砂金さんの件に関しては、ナオきゅんは最初から妙に協力的でした」
砂金さんとの話し合いに、自分から同席を申し出たり。
あまつさえその場に、タイミングを見計らってロッキーさんを呼び出したり。
「それは……たぶんジョージさんが、ナオきゅんにそのような指示を出したんでしょ?」
ナオきゅん、今日はずっと嬉しそうにメールを遣り取りしてましたからねえ。
たぶん間違いありません。
「それに、ジョージさんが紹介してくださったあの店。話の最中はあんまり気にしていませんでしたけど……きっとあの店にも、ジョージさんが何かしら根回しをしていたんじゃないですか?」
話し合いの場にあの場所を選んだのはたしかに私ですが、こちらに越してきたばかりの私が思いつく『そのような場』など、限られています。
そしてお店のオーナーさんは、ジョージさんの知人ということ。
ならばあらかじめ連絡をしておいて、私たちが到着してから『そのような細工』をしたとしても、なんら不思議はありません。
でないとあの時間帯に、ロッキーさんの来店までお客がゼロというのは不自然すぎます。
それにロッキーさんのあのときの反応。
それはおそらくお店のマスターさんが、私たちの隙を見て入口に『只今準備中』の札でもかけていたためではないでしょうか?
「そして何より、先日ジョージさんと口論となった話題。あれは私を、砂金さんにつっかかっていくよう誘導していたんですよね?」
土壇場になったとき、私が怖気付かないように。
あるいは変に冷静になって、一歩踏み込むことを躊躇わないように。
曖昧だった想いに方向性を持たせ、意思を決意に昇華させる。
鉄は熱いうちに叩け。
つまりはそういうことです。
だからようするに……
今日のあの顛末は、すべて、この叔父さんのシナリオ通りだったというわけです。
最終章です。
もうちょっとだけ、お付き合いください。
お読みいただき、ありがとうございました。




