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〈chapter:08-11〉

【前回のあらすじ】


 オッサンのテヘペロ。

 その瞬間、私たちの怒りが爆発します。


「ちょ、ロッキーさん! これはどういうことですか!? あなた、説明不足にも程があるでしょう!」

「し、仕方ないやろジョーちゃん! そんときはワイも徹夜明けで、頭の回転が鈍っとったんやから!」

「だとしても、それはあまりにも配慮が足りない発言だと思いますが!」

「そ、それにそこバカタレも悪いんやで!? ワイがそのあとでいちいち何かを言おうとするたび、ろくに話も聞かず途中で逃げ出しおって! たしかジョーちゃんらと初めて会ったときもそうだったよなぁ!?」

「だとしても!」

「その、そもそもの原因を作ったのは六本木さんですよね!」

「だったらやっぱり、完全にロッキーさんが悪いじゃないですか!」

「もはや鉄板です! 交通事故なら10─0です! アメリカ人が驚くほどの慰謝料を請求できるレベルですよこれは!」

「とりあえず土下座ですよ土下座! ド・ゲ・ザ・っ!」

「頭が高ぁ~い! 控えぇ~! 今すぐそこに控えなさぁ~い!」

「む、無茶苦茶や! なあボウズ、おまえからもなんとか言ってくれぇや!」

「……ロッキー先生、無駄っすよ。残念ながら人類のオスは、永遠に口ではオンナに勝てないっす……」


 唯一の中立派だったナオきゅんにまで見放されて、さすがのロッキーさんも「うぐっ!」と自分の不利を悟ったようです。

 そして、その一番の被害者である砂金さんはというと……


「……」(ぷるぷる)


 先ほどからうつむき、肩を震わせて、声を押し殺しています。

 伺うその横顔は、朱に染まっていました。

 当然です。

 ロッキーさんのあまりに迂闊な発言のせいでここまで振り回されたのですから、砂金さんには、怒る権利があります。


 さぁ砂金さん!

 遠慮なくそこのお馬鹿さんの頬をひっぱたいてやりなさいよ!

 なんだったら踏んじゃっても構いません!

 私が許します!


「……ふぇぇ……よ、よかったよぉ……」


 ところが……砂金さんは。

 そんな私の予想に反して、静かな安堵の吐息とともに、そんな言葉をこぼします。

 その目元は気色に緩み、口元は笑みを作っていました。


 えぇーっと……これは……


「……ひぐっ……うぇぇ……よかったよぉ……ウチはまだ……師匠に、見捨てられたわけじゃなかったんだ……」

「砂金さん……」(きゅん)

「砂金さん……」(きゅん)


 ひしっ。

 私とユリりん、左右から再びポロポロと涙をこぼす砂金さんを挟み込みます。

 今まさに、『砂金さんを温かく見守ろうの会』が結成した瞬間です。


「……な、なんやこの雰囲気。これじゃあまるで、ワイが悪モンみたいやないか?」

「しゃーないっすロッキー先生。女に泣かれたらもうしゃーないっす」


 対面では男衆が、なにやら納得いかなそうな顔を浮かべています。

 それでも、最低限の空気を読む力はあったのでしょう。

 もしくはそれは、最低限の男の常識でしょうか。

 ともあれ。


「す、すまんかったのう、バカ弟子」

「し、しじょぉ~っ」


 ほんの些細なキッカケですれ違い、離れかけていた二人は……

 やはりほんの些細なキッカケで、ようやくよりを戻したのでした。


 よかったね、砂金さん!


 お読みいただき、ありがとうございました。

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