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〈chapter:08-10〉

【前回のあらすじ】


 修羅場にロッキーさんが召喚されました。

「おいバカタレ。われ、さっきから何を言うとんのや?」

「え? いや、だからウチは、もうこれ以上師匠に不愉快な思いをさせたくはないから、いったん師匠のもとを離れて──」

「いやいやいや、せやから、そこからしておかしいやろが! なんでわれ、ワイがおまえに漫画の才能がないから辞めろとか、ほざいたと思ってんねん!?」

「え?」

「はぁ!?」

「えーと……どういうことですか、ロッキー先生?」


 それぞれ驚きの表情を浮かべる私たちを代表して、ナオきゅんがその真意を訊ねると。


「いや、だから言葉のままやって」


 なんて、ロッキーさんはなかば呆れ顔で。


「そもそもワイは一度も、そのバカタレにンなこと言った覚えはあらへんで?」


 すべての根底を揺さぶる爆弾発言を、口にしたのでした。


「うぇ!? ちょっと、どういうこと砂金さん!?」

「いいい砂金さん!? これはいったい!? もしやわたくしたちを、からかっていたのですか!? たばかっていたのですね!」

「ち、ちげーよ東雲! 勘ぐるな! っていうかえ? 師匠、えぇっ!?」

「……とりあえず落ち着けよ、おまえら」


 完全にテンパる私たち。

 対照的に冷静なナオきゅんが、この場を取り仕切ってくれます。


「あー。とりあえずロッキー先生、先生のほうからもいちおう、最初から事情を説明していただけますかね?」

「お、おう。そやなぁ……たしか最初は、そこのバカタレが、また投稿用の漫画を描いてワイのとこに持ってきたのが始まりやったかのぅ」http://syosetu.com/blog/list/


 話によると砂金さんは、定期的にオリジナルの作品を書き上げては、それを新人賞などに投稿するまえにロッキーさんに目を通してもらって、アドバイスや指摘をいただいていたようです。


「でも、ちょっと前からこのバカタレもバカタレなりに壁にぶち当たっとってのう。正直マンネリ気味だったんや。だからワイはこう言ったんや。『気分転換に、いったん漫画から離れてマジメに学校にでも通ってみろ』って」


 なるほど。

 煮詰まった時の気分転換は大事ですよね。


「どうせこのバカタレのことや。学校でも漫画漫画でろくに授業も受けず、ダチも作らずに自分の世界に引きこもっとったんやろ? でもそれじゃあアカン。けっきょく漫画は、作者の人間性やからのー。つまらん人間からはつまらん作品しか生まれんし、面白い漫画を描くには人生を楽しむのが一番や。少なくともワイはそう思っとるし、せやからこのバカタレにせっかくの今しかできん学生生活を楽しんでこいって言ったんやで?」

「うーん……こうして聞くと、べつにロッキーさんの発言に、間違いがあるようには思えませんねぇ」

「流石ですロッキー先生。感服しました」

「たしかに砂金さんは、もう少し学校での態度を改めたほうがいいかもしれませんね」


 そうしたロッキーさんの説明を受けて、私たちの意見は砂金派からロッキー派へと、鞍替えの様相を見せ始めます。

 ところが。


「えっ……師匠、そんなこと言ってなかったじゃないですか……?」


 愕然とした面持ちの砂金さんが、ここにきてさらなる問題発言を投下しました。


「え?」

「ふぇ?」

「……えーと」

「なんやわれ、ワイが嘘ついとるとでも言うんか!?」

「い、いや、そんなことはないと思いますけど……」

「ちょ、どうどう、落ち着いてロッキーさん。それに砂金さん。だったらそのとき、ロッキーさんはあなたになんて言ったの?」

「『われ、漫画はもういいから学校に行け』って……」

「「「「 …… 」」」」


 ずーん。

 重苦しい空気が、一気にその場に降臨しました。

 誰もが二の句を告げられずに、洋楽のBGMが、どこか遠くに聴こえます。


 それから……ややあって。


「つまり……すべては、ロッキーさんの説明不足だとでも?」

「……てへっ」(ぺろっ)


 年甲斐もなくテヘペロする関西人に、本気の殺意が湧きました。


 人に何かを伝えるときは、はっきりと、確実に、わかりやすくが基本です。 

 皆さんもお気をつけください。


 お読みいただき、ありがとうございました。

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