〈chapter:08-09〉
【前回のあらすじ】
砂金さん号泣。
そうやって──しばらく泣きじゃくる砂金さんをユリりんと一緒に宥めて。
ようやく混乱や嗚咽が収まって。
ひと息ついて。
注文したホットココアやレモンティーなんかで口を潤せたあとで。
「……なんか、ごめんな。ふたりとも」
すっかりしおらしくなった砂金さんがそんなことを言ってきました。
きゅん。
きゅん。
普段はツンツンしている彼女の殊勝な態度に、私たちはすっかりデレてしまいます。
「そ、そんなことないよー」
「そうですよ。同じ女の子なんですから、砂金さんの気持ちはよくわかりますよー」
「……」(ずずっ)
私たちがそうフォローすると、砂金さんは目を逸らし、唇を尖らせてホットココアを啜りました。
その頬はうっすら朱に染まっています。
何この可愛い生き物?
でも……たぶんこれが、砂金さんの素顔なんでしょうね。
いくら外見や言動が大人びて見えても、やっぱり私たちと同じ、中学二年生。
年相応の女の子なのです。
カランコロン……
ちょうどそのとき、新たな来店者を告げる店の呼び鈴が鳴り響きました。
「ちーっすナッちゃん。久しぶりやなー。なんや、あの表の看板は?」
「それよりもロッキー。さっきからみんながお待ちかねよ」
黙々とカップを拭いていた女マスターと親しげに会話をする声。
その声には聞き覚えがあり、反射的に私たちが視線を入口に向けるとそこには──
「──えっ!? ロッキーさん!?」
「うぇ!? ししし、師匠!?」
「あら。あの人が、例の砂金さんの想いび──」
「うわぁああああああ何言ってんだよ東雲! しっ! お願いだからしっ! なっ!?」
「──ええ、そうですね。すいません。なんでもありませんわ」
「……? なんや。呼ばれて来てみれば、えらい賑やかやな」
「え? 呼ばれたって、ここに? ロッキーさんが?」
「ああ、そうだよ。俺が先生を呼んだんだ」
そのように申し出たのは、さっきまでずっとケータイをイジっていたナオきゅんでした。
そういえばナオきゅん、先日、ジョージさんのメアドと一緒にちゃっかりロッキーさんともメアドを交換していましたね。
ナオきゅんはそれを使って、ロッキーさんをここに呼び出したのでしょう。
「でもナオきゅん!? いったいどうして!?」
「いやー。っていうかさぁ、ぶっちゃけ砂金の問題って当人同士の問題じゃん? だったらふたりで話し合ってもらったほうが早いし確実だろ?」
「だけど! それが上手くいかないから、砂金さんはこんなに苦しんでいたんじゃないですか! それなのに勝手に……」
「……いや、いい。直江の言うとおりだよ」
ふぅ、と砂金さんは小さく呼吸を整えて。
うっすらと残る目元の涙を拭いて。
覚悟を決めて。
意地を張って。
これまで避け続けていたロッキーさんと、向かい合う決意を固めます。
「師匠、話があります」
「おう、なんや」
どかっ。
この張り詰めた空気を察してくれたのでしょうか。
ロッキーさんは空席となったナオきゅんの隣に腰を降ろし、砂金さんを促します。
「このバカタレが、ようやくまともに話をする気になったんか。さっさと喋れ」
「はい」
そして砂金さんはロッキーさんに。
ロッキーさんの言うことは真摯に受け止めたということ。
でもそのうえで、漫画はまだ続けていきたいのだということ。
かくなるうえは、ロッキーさんのもとを離れても精進していく覚悟だということ。
それらを一息で、一気に語りきったあとで……
「……はぁ?」
ロッキーさんはそれこそ狐につままれたように、特大の疑問符を浮かべるのでした。
なんだかんだで尽くすナオきゅん。
まさに男の娘の鏡ですね!
お読みいただき、ありがとうございました。




