〈chapter:08-08〉
【前回のあらすじ】
ナオきゅん説教モード。
「だ、だってウチは、これ以上、師匠に嫌われたくねぇんだよぉ……っ」
そして決壊します。
今まで砂金さんを守ってきた防壁が。
砂金さんの本音を塗り固めていた、建前が。
ポロポロと、安い金メッキのように剥がれ落ちて。
ボロボロと、彼女がうちに秘めていた本音がこぼれ落ちてゆきます。
「ぇぐっ……う、ウチだって、そんなことはほんとうはわかってるんだ。ウチはただ、逃げるだけだって。なんやかんやと理由をつけて、本音から目をそらして、夢を諦めようとしているだけだってのは、てめえらなんかに言われなくてもわかってんだよぉ……」
「なら、それならなんで──」
「だから! 師匠に、これ以上嫌われたくねぇんだって!」
情けなく、食い下がって。
無様な姿を晒して。
はじめて、こんな自分を受け入れてくれた人に。
あたたかい居場所を与えてくれた人に。
尊敬する人に。
大好きな人に。
嫌われたく──ない。
(……っ!)
そのことを理解した瞬間に、私たちは動き出していました。
「いや、でもなぁ、そうは言っても実際問題──」
「もうっ、バカバカバカ! ナオきゅんの鈍感! KY! わからず屋! これ以上、砂金さんを追い詰めないでよね!」
「そうですよ直江くん! やっぱり直江くんは、ぜんぜん乙女心というものをわかっていませんね! 死ねばいいと思います!」
「──えぇっ?」
ポカンと、口を開けて呆然とするナオきゅん。
その対面では机の下をくぐって移動した私とユリりんが、左右から挟むようにして嗚咽を漏らす砂金さんを抱きしめています。
「……ひっく……だって……だってよぉ……」
「うんうん、わかる。わかるよ砂金さん。もう十分だよ」
「おひとりで、誰にも相談できずにずいぶんと悩んだんでしょうね。でももう大丈夫ですよ? わたくしたちがついていますから」
「え? え? なにこの展開? え? なんで俺が悪人みたいになってんの?」
唐突な展開に目を白黒させるナオきゅんに、『キッ!』と、女性陣から鋭い視線が突き刺さります。
「当たり前じゃない! 女の子を泣かせる男は、いかなる状況であろうと法律で極悪人と決まっているんだよ!」
「そうです直江くん! 直江くんは有罪です! 罰として今すぐケータイから、カノンちゃんのアドレスを消してください!」
「いや、それくらいべつにいいけどよぉ……」
「よくないよ!」
少しは抵抗してよ!
「でもなんで、おまえら急にそっち側についてるわけ? さっきまであんなに、砂金を批判してたじゃねえか?」
「それはそれ、これはこれなんだよナオきゅん!」
「そうなのですよ直江くん! 乙女の世界において、恋はすべてに優先されるのです!」
「ま、茉莉ぃ……それに東雲ぇ……」
「よしよし、つらかったねぇ。苦しかったねぇ。こんな可愛い女の子を泣かせるだなんて、ロッキーさんはヒドい男だねぇ」
「べ、べつに師匠はそんな、ひ、ひどくなんて……」
「そうですよね。ええその通りです。こんなに可愛い砂金さんが慕う殿方ですもの、きっとなにか、深い事情があるんですよねぇ。でなければ、このわたくしが許しません」
「で、でもでもぉ……」
「うんうん」
「ええ、ええ」
とまあ──そんな感じで。
泣きじゃくる砂金さんのフォローにまわった私たちの正面では、完全に悪役となってしまったナオきゅんが、面白くなさそうにすっかり飲み干してしまったお冷の氷を『ガリガリッ』と噛み砕いています。
「……ちっ。これだから、女ってヤツぁ」
基本的にこれがナオきゅんの役回りです。
そりゃあ、カノンちゃんに対する風当たりも強くなりますよね。
お読みいただき、ありがとうございました。




