表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
53/60

〈chapter:08-07〉

【前回のあらすじ】


 ナオきゅんがフルボッコ。

「なに? 俺たちが『異常』で、それでおまえに何か迷惑をかけたわけ?」

「そ、それは……」

「あ、先に言っておくけど今のこの状況は別枠な。バカノンのこれはたんなる『お節介』で、本当は俺たちなんのカンケーもねえから」


 さりげにひどいことを言って。

 ナオきゅんは淡々と、困惑する砂金さんに告げます。


「いいか砂金。たしかに他人に迷惑をかけていい気になって自分の世界にどっぷり浸っている自己チュー野郎のことは『異常』って言うけどな、俺たちの……少なくとも俺のこれは、『意地』って言うんだよ」


 たとえば辛く、今でも夢に見るだけで吐いてしまうような経験をしたあとで……

 それでも『傷』を胸に隠し、『痛み』を堪え、努めて『普通』に生きようとしているナオきゅん。

 その生き方は。

 生き様は。

 まさしく、ナオきゅんの『意地』と言って差し支えないでしょう。


「いいか砂金。たしかに一度ひどい体験をした人間が、それを口実に『異常』ぶって生きていくのは簡単だ。でもそれが、いったい何になる? 自分は可哀想。だから仕方がない。そうやって諦めて、トクベツぶって、自分自身を甘やかして、それはいったい自分に何のメリットがあるっていうんだよ?」


 少なくともナオきゅんは……私たちは。

 そんな『異常』に、なんの価値も見いだせません。

 まあそもそも私は、私の家庭事情を『異常』だなんて思ったことはないんですけどね。


 たしかに背景は複雑だし、正直それを知ったときはショックも受けました。


 でも……それでも。

 そんなことよりも。


 これまで、パパやママは十分すぎるほど私を愛してくれていましたし。

 これからも、ずっと私を愛し続けてくれることでしょう。

 だから私はパパとママと娘。

 だから私は茉莉花音。

 だから私たちはまぎれもない『普通』の、本物の家族。

 それでいいじゃないですか。

 少なくとも私はそれで十分だと思っています。


「で、砂金。おまえの過去や事情はよくわかった。同情もするし、斟酌もする。そのうえで訊くけど……今のおまえの『意地』は、いったいどこにあるんだよ?」


 他人を突き放して。

 誰からの理解も得られず、ただ自分の世界に浸って満足するような『異常』ではなく。


 他人を突き放してでも。

 たとえ誰からの理解を得られなくても、ただ自分の意思を貫くような『意地』。


 信念。決意。矜持。

 それが今の砂金さんには欠けていると、ナオきゅんは指摘します。


「正直、むかしのおまえはスゴかったんだなーと思うよ。そんな家庭環境で、たったひとりで、よく心が折れなかったと思うよ。それは俺も認める。でもな」


 そこから自力で抜け出して。

 ロッキーさんの庇護を得て。

 ぬるま湯に浸かって。

 甘やかされて。

 その『意地』は……『強さ』は。

 少しずつ、ゆっくりと、脆くなってしまったのでしょうか。


 仕方がありません。

 人は、変化する生き物なのですから。

 良い方向にも。

 悪い方向にも。

 得てしてそれは、他人に指摘されるまで気づかないものです。

 だからナオきゅんははっきりと言います。


「今のおまえは……正直、カッコ悪ぃよ。見るに耐えねえ。まるで、自分の言うことが罷り通らないからって駄々こねてるガキだ。……いや、それも違うな。そうだな。今のおまえはまるで何かを言って否定されるのが怖いから、それを言われる前に自分から逃げだそうとしている、たんなる弱虫だ」


 そしてけっきょく話は、もとに戻ります。

 しかし『不幸な生い立ち』という『トクベツ』な逃げ道があった前回と違い、

 それを自分と同じくらいの『トクベツ』によって正面からそれを否定された砂金さんは……


「……だ、だってぇ」


 じんわりと、その碧眼に涙を滲ませました。

 ちなみにナオきゅんの言葉攻めに、カノンちゃんは内心ハアハアしています。


 お読みいただき、ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ