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〈chapter:08-06〉

【前回のあらすじ】


 委員長がプッツンしました。

「えっ!? ちょ、ふたりともなにしてるの!? えぇ!?」

「……いいから、バカノンはちょっと黙ってろ」

「そうですカノンちゃん。ちょっとだけ、ガマンしててくださいね」


 そう言ってユリりんは……バチィッ! 

 またしても、見ているこちらの耳がキーンとするような強烈な平手打ちをナオきゅんにかましました。

 しかもナオきゅん、それを甘んじて受けているように見えます。

 ……なにこの唐突な展開? 

 SМプレイ?


「お、おまえらいったい、何やってんだよ……?」


 砂金さんは呆然としていました。

 その気持ち、わかります!

 でもそんな置いてけぼりな私たちを無視して、ユリりんの暴挙は続きます。


 まずはもう一発ビンタ。

 追加で反対側にもう一発ビンタ。

 続けざまの三連発にさすがにナオきゅんが揺らぐと、ユリりんは足を払って姿勢を崩します。

 倒れるナオきゅん。その腹部にユリりんのローファーの爪先がめり込み、次いで顎を蹴り飛ばします。

 そのままガンガンガン。容赦のないヤクザキックの連発。……これはエグいっ!


 ってうか!

 私たちの他にお客さんがいないとはいえ、さすがにこれはマズいんじゃないかな!?


「……」(キュッキュッ)


 そう思って女マスターを見ると、彼女は眉一つ動かさずにコップを磨いていました。


 さすがジョージさんというハイレベルな変態のお知り合い。

 異常事態に対するスルースキルが尋常じゃないですね。


「……い、委員長、ギブ、ギブ」

「あら? もうですか? 直江くん、オトコノコのくせに情けないですよ?」


 そんなことを言いながら、さらなる追撃のため振りかぶっていた足を床に降ろし、ユリりんが私にいつもの委員長スマイルを向けてきます。……怖っ!


「どうですか、カノンちゃん? これでいちおう、勝手にカノンちゃんの過去を語った直江くんへのお仕置きは、十分ですか?」

「え? あぁ、はい……?」


 っていうかこれ、私のための『お仕置き』だったの?

 べつに私はそんなこと、全然気にしてないのに……。


「ではこれにて、直江くんへのお仕置きは完了ですね」


 ユリりんはナオきゅんへの『お仕置き』をやめて、隣に戻ってきました。


「なら次は……わ、わたくしへの、お仕置きですね!」


 そして顔を赤らめて、そんなことを言ってきます。


「え!? なんでそうなるの!?」

「だってわたくしも直江くんを止めなかったのですから、だったら直江くんと同罪です! さあさあカノンちゃん! イケないわたくしにお仕置きを! さぁ!」


 ちょ、やめてユリりん!

 そんな息を荒くしてグイグイこないで! 

 胸元を開かないで! 谷間を見せつけないで! 凹むから!


「っていうか! 私はべつに! ナオきゅんにもユリりんにも怒ってないから! お仕置きの必要とかないから!」

「そこをなんとか!」

「何か目的がすり替わってない!?」


 ともあれ言葉を尽くしてなんとか興奮するユリりんを説得すると、ようやくユリりんはご褒美をもらえなかった子犬のような表情で「……わかりました」と項垂れつつも、席に腰を落ち着けてくれました。ほっ。


「……なんか俺、ボコられ損っぽいな」


 腫れ上がった頬をさすりつつ、ナオきゅんも席に戻ってきます。


「そんなことないよー。ナオきゅんの愛は、ビンビン伝わってたよーっ♪」

「で、砂金。ちょっとは俺たちのハナシ、聞く気になったか?」


 あれ?

 私の愛はスルーですか?


「……あ、アンタら、ちょっとおかしいんじゃねえか? 異常だよ」


 そして砂金さんは……そんなあくまで通常営業の私たちを見て。

 なにか理解しがたい、おぞましいものを見るような顔で呟きます。


「ふーん。『異常』、ね。たしかにそうかもしんねえな。

 ……で、それがなんなの?」


 ナオきゅんは呆れたように、鼻を鳴らしました。


 ちなみに委員長のヤクザキックは家族直伝です。


 お読みいただき、ありがとうございました。

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