〈chapter:08-05〉
【前回のあらすじ】
砂金さんがキレちゃいました。
「ぁアン!? テメエ、なんつったもういっぺん言ってみろコラァ!」
その瞬間……激昂して立ち上がったのは。
普段のおっとりした態度や雰囲気からは想像もできない、怒りのあまり口調まで変わってしまった私の親友──ユリりんでした。
「し、東雲!?」
「おうおう、さっきから黙っていればずいぶん好き勝手にわたくしのカノンちゃんをけなしてくれますねぇ! それは親友であるわたくしへの挑発ですか!? 挑戦ですね!」
「ちょっ、ユリりん落ち着いて落ち着いて! すとっぷすっとぷ、委員長キャラが崩壊しちゃってるよ!」
「わたくしは委員長である前に、カノンちゃんの親友です!」
なんとまぁ。
嬉しいことを言ってくれるじゃありませんか。
しかしユリりんが私の親友として憤ってくれているのであれば、私もユリりんの親友としてこのまま彼女を暴走させるわけにはいきません。でもいったんこうなってしまったユリりんを鎮めるのは容易ではないことは、すでに過去の経験から実証済みです。
はてさて、いったいどうすれば……
「……っていうかさぁ」
と、そこで。
それまで全く興味を示さなかったナオきゅんが、初めて自発的に口を開きます。
「さっきの砂金の言葉、裏を返せばさぁ。バカノンがあんたと同様に普通じゃない、特別な過去を背負った人間なら、少なくとも同じ土台に立つ『対等な人間』として、その言葉に耳を貸してくれるってことか?」
「へ? いやべつに、そんな意味でウチは言ったわけじゃ──」
「今さらビビんなよ。面白いこと教えてやるから」
そう言ってナオきゅんは淡々と、私の身の上話を語ります。
「ざっと簡単に説明するとだな。バカノンのいまのオヤジさんは、おそらく本当の父親じゃない。そしてバカノンのオヤジさんとオフクロさんは、ふたりとも同い年の幼馴染で、今年でようやく二十八歳だ。この意味が、わかるか? そうだよバカノンのオフクロさんは、十五歳でバカノンを産んだんだよ。それもレイプされて孕まされた、当時から付き合っていたオヤジさん以外の男の子どもを、な」
そんな……
こうして強調するまでもない。
取るに足らない、私の家庭事情を聴いて。
「なっ!? そ、それ、は……っ」
砂金さんは絶句。
先程までの血気を完全に失って、顔面を蒼白にしています。
ふーむ……
今更の再確認ですけど、やっぱりうちの事情で、他人が聞いたら相当にショッキングな話なんですね。
実感します。
「そんでオマケだ。俺はむかし、オフクロからDVを受けてて、そっちの委員長は実家が『東雲組』っていうヤクザ屋さんで、小学校でバカノンと知り合いになるまではクラスの誰とも口を利かないようなネクラだった。べつにそのことで自分を『特別だ』なんて自慢するつもりはねーけどよぉ、これでいちおう、おまえは俺たちのことを自分と同じくらい『不幸な人間だ』──『対等』だって、見てくれるのか?」
そんなふうにナオきゅんは淡々と。
私たちの『過去』を。
自分やユリりんの『傷』を。
私のために、自ら開いて、意固地になっている砂金さんに見せつけます。
突きつけます。
おまえひとりが、不幸なわけじゃないんだぞ、と。
そんなことを、『逃げ』の言い訳にするんじゃないぞ、と。
そして……
「……はぁ。じゃあ委員長、頼むわ」
「はい。わかりました」
「え? あれあれ? どうしたのふたりとも?」
ガタン。
ガタン。
なぜか示し合わせたようにナオきゅんとユリりんがふたりして立ち上がって、テーブルの横で、正面を向いて対峙しました。
「直江くん。わたくしも少々気が立っています。手加減は、できませんよ?」
「ああ、思いっきりやってくれ」
そしてユリりんは……バチィッ!
容赦なく、ナオきゅんの頬をぶったのでした。。
さすがに少々、話が強引だったかーとも思います。
でもこういう『家庭の事情』って、意外と身近にあったりするものです。
これも作者の体験談だったりします。
お読みいただき、ありがとうございました。




