〈chapter:08-04〉
【前回のあらすじ】
オサレなカフェでガールズトーク(男の娘を含む)。
「砂金さん、もう一度ロッキーさんとお話してみようよ!」
「ヤダ」
「なんで!? 夢を諦めちゃうの!?」
「ああ」
「もったいないよ! せっかくの夢でしょ!? それを簡単に捨てちゃうなんて!」
「アンタには関係ないだろ」
「だとしても! やっぱりこのまま投げ出しちゃうのはもったいないって!」
「仕方がねーだろ。師匠が、ウチには才能がないって見切りつけたんだから」
「でもそれはあくまでロッキーさんの判断で、砂金さん自身は納得していないよね!?」
「だからそういう問題じゃねーんだって。けっきょくウチがいくら吠えたところで、結果を出している師匠がそう判断したんなら、それが現実だ。受け入れるっきゃねーんだよ」
「違うよ! それは逃避だよ!」
「違わねえよ。ただの事実だよ」
「違う違う! そもそもそんな簡単に諦められるなら、それはもう『夢』でも『目標』でもない! 都合のいい『憧れ』だよ! でも砂金さんは、そうじゃなかったんでしょ!? 無理っぽいから捨てられるような、安っぽいものじゃなかったんでしょ!?」
「アンタに何がわかるってンだ!」
バンッ!
とうとう砂金さんがテーブルを叩きながら上半身を乗り出してきました。
コップが倒れて水が広がっていきます。
構わず砂金さんは続けます。
「っていうか、なんなんだよアンタは!? いったい何様だ!? なんのつもりだ!? いったいどんな権限や権利があって、ウチにそこまで口出ししてくるんだよ!? いいだろ、ほっとけば! たかだかちょっと、話しただけのクラスメイトなんだから!」
「よくないよ! ほんのちょっとでももう『関わっちゃった』んだから、私はもう、あなたを知らんぷりできないの! ほっとけないの!」
「自己チューか!」
「自己チューだよ!」
「ふざけんなこの無責任が! 開き直ってんじゃねえよ! 黙れ! 迷惑だ! 失せろ!」
「失せないし黙らないね! だって私は、自己チューだもん!」
「~~~ッ! てンめェ……ッ!」
ギリギリギリ……
砂金さんが歯軋りしながら、鬼のような形相で睨みつけてきます。
その右手はすでに私の胸元を掴んでいました。
さらにその手を、横からユリりんが掴んでいます。
「……ふたりとも、いったん落ち着きましょうか。とにかく砂金さんは、席について。そしてカノンちゃんはちょっと、頭を冷やしましょう? ね?」
「「 …… 」」
言われるがまま、完全に売り言葉に買い言葉になっていた私たちは席に腰を降ろし、乱れていた呼吸を整えました。
その間にユリりんは自前のハンカチでこぼれてしまったテーブルの水を拭いてくれます。
気が利きます。
あとナオきゅんはずっとこちらも見ずにケータイをイジっていました。
関心が無さすぎます。
「とにかく、だ」
沸騰していた熱がひと段落して……
やや冷静さを取り戻した砂金さんが、それでも譲らない硬質な声音で、揺らがない答えを口にします
。
「ウチはもう、漫画はやめる。師匠のとこにも近々顔を出してその旨を伝える。それでいいじゃねえか」
「だからよくないよ! 考え直そうよ!」
「だからもう、これは十分に考えた上での結論なんだよ! わかれよ!」
「わかんないよ! たとえどんな理由であれ、大事な夢や目標を捨てようとする弱虫の気持ちなんか、わかりたくもないね!」
「……ッ!」
その瞬間、たしかに私は……
ぷっつん。
と、何かが『キレる』音を聴きました。
「はっ。上等だよ茉莉ぃ」
そして砂金さんは。
「もうこれ以上アンタと話す気はねェ。……でもな、これだけは言ってやる!」
感情に任せるままに。
「平々凡々と生まれて、平和に育って、平穏に、なんの苦労もなく、ぬるま湯でぬくぬくとやさしい人間たちに囲まれて育ってきたアンタなんかに……」
その一言を……口にして、しまったのです。
「アンタ『なんか』に、ウチの気持ちがわかるもんか!」
ちなみに砂金さんは打たれ弱いので、
こうして強く迫られると『キレる』→『泣く』→『逃げる』のコンボを発動します。
なので、見かけてもあんまりイジめないでください。
お読みいただき、ありがとうございます。




