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〈chapter:08-02〉

【前回のあらすじ】


 委員長が見ています。

「……っ!? ゆ、ユリりん!?」


 あまりの禍々しさに一瞬本気で悪霊かと思いましたが、

 よく見るとそれは、私の親友こと東雲百合江ちゃんでした。


「か、カノンちゃん! ふぇええええんっ」


 そしてなぜか涙目のユリりんは、そのまま私の胸元にダイブしてきます。


 ぼいぼいんっ。

 その際に慎ましい私の『それ』とは違い、非常に豊満なユリりんの『それ』がクッションとなって、地味に私を傷つけました。……なにこの格差社会?


「カノンちゃん! カノンちゃぁあああああんっ!」

「どうどう、落ち着いてユリりん? どうしたの? 何をそんなに怖がってるの?」

「捨てないで! お願いだからわたくしを捨てないでくださいぃぃ!」

「本当にどうちゃったの!?」


 今日のユリりんはテンションが高すぎてちょっとついていけません。

 とにかく私は興奮するユリりんをなだめ、気が鎮まるのを待ってから話を再開します。


「で、どうしたの? 私に捨てられるとか、なんで?」

「だ、だって! カノンちゃん、先日はわたくしにナイショで直江くんを家に招待したっていうし、今日は今日で、ずっとわたくしの話に上の空で、かと思えばさっき砂金さんに『放課後ふたりっきりで会わないか』って……」

「あー」


 そういえば今日の私、砂金さんとの段取りのことばかり考えていて、そう言われてみればそうだったかもしれませんねぇ……。


 っていうかユリりん、さっきの私たちの話、どこで聞いてたの?

 もしかして私、監視されてる?


「おいおいなんだ、痴話喧嘩なら外でやれよ」


 と、そのときです。

 自販機にジュースを買いに行っていたらしいナオきゅんが、紙パックをストローで吸いながら教室に戻ってきました。

 その右手にはしっかりと、ケータイが握られています。


「……ナオきゅん、まだ、ジョージさんとメールしているんですか」

「バーカ。俺はともかく、ジョージ先生がそんなヒマしてるわけねーだろ」

「じゃあなんでケータイをずっと持ちっぱなんですか?」


 ナオきゅんは朝からずっと、ことあるごとに着信をチェックしています。

 べつにナオきゅん、そこまでケータイ依存者じゃなかったですよね?


「馬鹿野郎。それでも、も、もし仮に、ジョージ先生から連絡がきたらどうすんだよ。

 ……先生を待たせるとか、失礼すぎるだろ?」


 うん。

 その発言はざらにメールを一日単位で放置する私に対して、失礼に当たらないのでしょうか?

 それにナオきゅん。発言の内容はともかく、その表情はあきらかに『熱烈なファン』というより完全な『恋する乙女(男の娘?)』の反応ですよ? 


 正直、嫉妬で気が狂いそうです。


「な、直江くん! なんなんですかそれは!? 昨日、その場にいなかったわたくしへの嫌味ですか!? 牽制ですか!? どちらにしても受けて立ちますよ!」

「そうそうナオきゅん! 昨日のこと、ユリりんにどう伝えたんですか!? ユリりん、なにかひどく誤解をしていますよ!?」

「あ? べつに。ただ訊かれたからありのまま、ジョージ先生やロッキー先生に出会えた幸運と、おふたりと言葉を交わせた幸せなひとときのことを語っただけだ」


 あれ?

 そこに私、含まれてなくない?


「と・に・か・く! これ以上、わたくしの目の届かないところで好き勝手はさせませんよこの泥棒猫め! カノンちゃんは、絶対に渡しません!」

「ああ、どうぞうどうぞ。もう用は済んだから、あとは煮るなり焼くなり委員長の好きにしてくれ」

「あのぅ……ナオきゅん、冗談でもそういうこと言われると、繊細な十代の乙女としてはけっこう傷つくんですけど?」


 せめて半分!

 ジョージさんに対する気遣いの半分でもいいから、私にプリーズ!


「ところでさっき、委員長が『砂金さんに』とか言ってたけど、どったの?」

「あ、いえ、それがですね……」


 さすがに砂金さんのプライベートを語るわけにはいかないので、私はかいつまんで先日ちょっと砂金さんと知り合いになったことや、そのときに交わした話題について今日改めて彼女と議論する予定などを、説明しました。


「ふーん」


 そして関心のないことにはとことんドライな彼にしては珍しく、そんな私の話を、ナオきゅんはストローを齧りながら最後まで聞いてくれたのでした。


 ちなみに委員長はキホン、カノンちゃんをストーキ……げふんげふん。

 もとい、見守っています。


 お読みいただき、ありがとうございました。


 

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