〈chapter:08-01〉 ジョージさんは不在です。
【前回のあらすじ】
けっきょくカノンちゃんは、ジョージさんと仲違いしたままです。
さて。
連休明けの月曜日。
土曜日、日曜日から、引き続き今日も朝からジョージさんとは冷戦状態で一言も喋らないまま登校してきた私は、昼休み、隙を見て目的の人物に話しかけました。
「ねえねえ、砂金さん」
「……あ?」
ぎろっ。
後ろから声をかけると、購買に向かうため廊下を歩いていた砂金さんが立ち止まりました。
その鋭い碧眼が、愛想笑いを浮かべる私を射抜きます。。
不機嫌そうな声にはありありと、拒絶の意志が込められていました。
うーん。
やっぱりまだ、砂金さんの意思は変わらないみたいですね。
まあ。だとしてもそんなこと、自己チューな私には関係ないのですけど。
「今日の放課後とかヒマかな? かな?」
「んだよ。アンタにはカンケーねえだろ」
「ちょっと大事な話があるんだよ。できればふたりだけで話したいんだけど……ダメ?」
「……あー。それはもしかしなくても、この前の件について、だよな?」
「もちろん」
「なあ茉莉。あの話は、アレで終わりだって言わなかったっけ?」
「私、それに『はいそうですね』って納得しましたっけ?」
「おい。あんまチョーシに乗ってんじゃねえぞ」
「砂金さんこそ、あんまり私を甘く見ないほうがいいですよ?」
「……へぇ。言ってくれるじゃねえか」
……うぉう。
半笑いのまま、こちらを見つめる砂金さんの目が、尋常でなく冷たいです。
背後にブリザードと、シロクマさんの幻影が見えます。
しかしここが正念場。負けられません。
そんな、靴の裏にひっついたガムを見つめるような視線に耐えることしばし……
「……はぁ」
ようやく砂金さんが折れてくれました。
「わかったよ。降参降参。ウチの負けでいーよ」
「よかった。話を聞いてくれるんですね」
「まあ薄々、こうなるだろーなとは思っていたからな……」
「へえ」
「そりゃアレだけウチの事情だけ一方的に話して『はいこれで終わり』じゃ、アンタも納得いかねーだろうよ。そりゃ筋が通らねーってことぐらい、ウチにもわかる」
「それは話が早くて助かります」
「でもな」
ギロリ。
砂金さんの眼光が強まります。
その碧眼の下には、先日よりもさらに濃いクマが刻まれていました。
よく見れば目元も少々、腫れぼったい気がします。
「今さらアンタに何を言われたところで……ウチの意思は、変わんねーぞ?」
「結構ですよ。私はただ、私が言いたいことを言ってすっきりしたいだけですから」
「けっ。ホント、言ってくれるじゃねえか。で、話はどこでするんだ? 学校か?」
「あ、それはですね……」
私は事前に候補として考えていた、町中にある、とある喫茶店を指定します。
そこは先日ジョージさんに教えてもらったばかりのお店なのですが……
場所がちょっとわかりにくいところにあるせいか、内装とかはすごくオシャレなのに人が少なくて、しかもボックス席が個々に区切られているから、こういう内緒バナシにはすごくベストな場所なんですよね。
「……ああ、その店ならウチも知ってるわ。入ったことはねーけど」
幸いにも砂金さんも、そのお店には心当たりがあるようなので。
「じゃあ放課後、そこで」
「ああ」
と、スムーズに段取りを決めた私たちは、ひとまずそこで別れます。
砂金さんはそのまま廊下を進み、私は踵を返して教室へ。
「……ぷふー」
あー、キンチョーしましたー。
教室に戻り、私は深々とため息を吐き出します。
それにしても怖かった。
砂金さん、眼力ありすぎ。
寿命が三年は縮まりましたよ。
まあとにかくこれで用事はひとつ済んだのですから、とりあえず弁当でも……
「……カぁ~ノぉ~ンん~ちゃ~ん……」
ひゅ~どろどろどろ……
「ひぃいい!」
そこで私は、悪霊に遭遇しました。
さて、次でようやく委員長のターンです!
お読みいただき、ありがとうございます。




