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〈chapter:07-03〉

【前回のあらすじ】


 ジョージさんがちょっとマジメに語っています。

「マイススターも、そうだった」


 黙り込んでしまった私に、ジョージさんは気遣うように話しかけてきます。


「マイシスターはあんな性格だから、まわりで困っている人、苦しんでいる人、追い詰められている人たちを見つけるとすぐに手を出してしまうお人好しだった。それが本当に仕方のないことなのか、本人の自業自得なのか、そんなことを考えもせずに、な」


 そしてその結果、ママは多くの人を救って……

 それと同じくらいたくさん、裏切られて。

 傷ついてきたことを、私は知っています。


「人を救う。人を守る。人を助ける。それらはたしかに美しい。マイシスターの美徳であり美点だ。だが同時に、短所であり欠点でもある。いいかいマイドーター、人はね、本来ひとりで生きていくものなんだ」


 だから人を助けるのは驕りで……

 人に助けを求めるのは甘えで……

 そんなものはけっきょく、毒にも薬にもならない。

 その場しのぎの自己満足と他力本願にすぎないのだと、ジョージさんは言います。


「そ、それは……」

「ん? 薄情だと思うかい? 寂しい考え方だと思うかい? だけどマイドーターも中学生だ。ちょっとだけ、わかる部分もあるだろう?」

「……」


 たしかに、そのとおりなのです。

 私もこれでも、中学二年生。ざっと十年以上は生きています。

 そんなまだまだジョージさんの半分にも満たない短い人生ですが、その中でも、ジョージさんの指摘する人の『驕り』や『甘え』は、何度となく目の当たりにしてきました。


 そしてその、結果も……


「たしかに余裕のある人間なら、自己満足として、弱者に手を差し伸べることはできる。それは余裕のある人間の特権だ。そしてときとして弱者は、誰かに助けを求めることしかできない現実がある。それは認めよう。だが果たしてそれは本当に、仕方のないことなのか? そこに至るまでに、彼は、彼女は、他の選択肢をえらぶことはできなかったのか? もしそれができたのにそこに至ってしまっているのだとしたら、それはもう、完全にその人の自己責任じゃないのかな?」


 甘えきった人間を助けても、根本的な問題は解決しない。

 むしろ『次があるかも』と期待させてしまうぶん、悪循環かもしれません。


「それにマイドーターのクラスメイト……イサゴ、と言ったね。イサゴはたしかに、その身の上や生まれ育った環境は、彼女にとってどうしようもないものだっただろう。しかし彼女は、そこから自らの意思で、決意で抜け出した、とても強い子だ。尊敬に値する。そしてそんな彼女が導き出した結論に……クラスメイトとはいえ、ほとんど赤の他人に過ぎないマイドーターが、希望的観測のみでなんの根拠もないアドバイスをして、本当によい結果を与えられるだろうか?」


 すでに人生の不条理を経験していて……それでも負けなかった彼女に。

 私のような人間が、あくまで『期待』でしかない助言をしたところで。

 それは本当に、彼女の役に立つのか?

 助けになるのか?


「いいかマイドーター。なにも俺は、マイドーターの『誰かを助けたい』というその心を、意地悪で否定したいわけじゃない。むしろその気持ちは尊ぶべきものだと思っているし、今後も大事にしていってほしいと願っている。だけどその一方で、その『対象』はちゃんと、線引きしてほしい。選別して欲しいと、言ってるだけなんだ」


 仮に『誰か』を助けるとして。

 闇雲にその『誰か』を選ぶのではなくて。

 事前にその『誰か』のことをよく知って、調べて、吟味しておけば……

 自らのそうした行いが、空振りに終わる可能性は低くなる。

 負わなくてもいい傷を、経験しないで済む。

 正論です。

 合理的です。

 言うことに筋が通っています。


 たしかにジョージさんの言うとおりにすれば、私は、ママは、無駄に傷つくことなく人を助けていくことができるでしょう。できたでしょう。さすがはジョージさん、大人ですね。変態のくせに、まともなことを言うじゃないですか。ちょっぴり見直しましたよ。


「ジョージさん……」

「わかってくれたかい、マイドーター……」


 そして私は、そんな姪想いの叔父さんの頬に手を伸ばして……

 ぐわし!

 からの、ゴッツンコ!


「ワッツ!?」


 思いっきり、その頭に頭突きをかましてやりました。


 これはあくまでジョージさんの人生観ですので、ご了承ください。


 お読みいただき、ありがとうございます。

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