〈chapter:07-01〉ジョージさんとケンカです。
【前回のあらすじ】
ナオきゅんにフラグが立ちました。
その日の夜。
夕方ごろまで歓談に興じていたナオきゅんとロッキーさんたちを見送って、
疲れ果てた私がいったんお風呂に入って気持ちをリセットして、
リビングのソファにぐったり横たわっていると……
ピトッ。
火照った頬に、冷たいものが触れます。
「マイドーター、喉が渇いただろう?」
「……ありがとうございます」
むぅ。
変態のくせに、気が利くじゃないですか。
できればそういう気配りは、先ほどみせてほしかったですけどね。
あぁ……愛しのナオきゅん……
今日はずっとジョージさんとばかり話をしていて、全然私に構ってくれませんでした……
くっ、思い出しただけで腹が立つ!
やってられっかぁ!
「んぐんぐんぐ。ぷはーっ!」
私はジョージさんから手渡された冷えたミルクを、一気に飲み干します。
美味い! やっぱり風呂上りにはコレですよね!
「少しは、落ち着いたかい?」
あちらはホットミルクなのでしょうか。
ほのかに湯気の立つマグカップを手にしたジョージさんが、私の隣に腰を降ろしてきました。
ざざっ。私は距離をとります。
ずぃっ。ジョージさんは距離を詰めてきます。
ざざざっ。端まで逃げます。
ずいずいっ。すぐに追い込まれました。
はぁ。
仕方ないですね。諦めます。
「……っていうか」
大きなソファでさも当然のように密着してくるジョージさんを、
じろり。
私は冷ややかに睨みつけました。
「ジョージさん。そう見えたんなら、もっと早くにフォローしてくださいよね」
「それはソーリー。バット、あのときはああして『何事もなかったかのように』振舞っておいたほうが、ベストだと思ったんでね」
「いやいやジョージさん、めっちゃナオきゅん誘惑していたじゃないですか! ケータイ番号まで交換して、あれ、ぜったいナオきゅん勘違いしていますよ!」
もし間違いが起こったらどうするつもりなんですか!?
変態のせいでマイダーリンが変な世界に目覚めないか、私は気が気でありません。
「……? なんのことだい?」
きょとん。
ジョージさんは首を傾げます。
きぃぃ!
しらばっくれやがって!
その綺麗すぎるツラをギタギタに引っ掻いてやろうか!
「マイドーターは何か誤解しているようだが……俺が言っているのは、ロッキーたちと合流する、その前のことだよ?」
「えっ……」
思わず──息が、詰まってしまいました。
「え、えっとジョージさん、それってつまり……」
「ああ。直前までマイドーターが玄関前で話し込んでいた『誰か』との会話、よくわからないが、とにかくロッキーたちには悟られたくなかったんだろう?」
おそらくジョージさんのいう『誰か』とは……
ズバリ砂金さんのこと、でしょう。
まあ、ちょっと考えれば当然ですか。
砂金さんと私、あのとき玄関前でけっこう大きな声でお話をしていましたし、そのときからすでにジョージさんは、花瓶を手に廊下でスタンバイしていたのでしょうから。
筒抜け、とまでは言わずとも。
そのときの会話を近くにいた『第三者』が盗み聞きすることは、そう難しいことではありません。
「今日はマイドーターは、ずっと不自然なまでに明るく振舞っていたようだし、その『誰か』のことを、ロッキーたちのまえで話す素振りは見せなかった。だから俺も気遣ったつもりだったのだが、余計なお世話だったのかな?」
「……いえ」
まあ今日私がはしゃいでいたのは、わりと素だったのですけど……。
「そしてこれから俺ができればマイドーターの相談に乗ってやりたいと思っているのも、やっぱりいらない世話焼きになるのかな?」
「…………いいえ」
っていうか、ずるいですよジョージさん。
そんな言われ方をすると……
相談、しないわけにはいかないじゃないですか。
弱っているときに優しくする……
ジゴロの基本ですね。
お読みいただき、ありがとうございました。




