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〈chapter:06-07〉

【前回のあらすじ】


 砂金さんはフェードアウトしました。

 キキィッ……

 立ち去っていった砂金さんと入れ替わるようにして、

 ジョージさんの家の前に、先程見たばかりのミニワゴンが停車しました。


「ろ、ロッキー先生? 俺、ホントにこれで、大丈夫ですかね……?」

「安心せぇボウズ。仕上げはカンペキや。このワイが保証したる」

「うふふっ。久々にいい仕事をしたわぁ♪」


 運転席にミチルさんを残し、車から降りてくるのはふたつの人影。

 ロッキーさんとナオきゅん。

 そしてナオきゅんは予定通り、ジョージさん対策としての『女装』を済ませています。


 もともと素材からして、学校一の『男の娘』として名高いマイダーリンです。

 セミロングのウィッグを被り、うっすらとナチュラルメイクを施したその顔のクオリティは然ることながら、さらに上手く体型を隠したワンピースに薄手のカーディガン、肩から下げるポーチバックに、かたちのいいくるぶしが丸見えの可愛らしいサンダルなど、ナオきゅんの持ち味である『清楚さ』や『気品』を際立たせるアイテムセレクトには、ただただ頭が下がります。

 そしてそんなナオきゅんの艶姿を見た瞬間……


「ん、んほぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」


 先程までの悩みなどすべて吹き飛んで私は発狂──もとい、絶叫しました。

 奇跡! 

 ここに天使が舞い降りた!


「……なんだよ、うっせぇなバカノン」

「な、ナオきゅん!? ペロペロしていい!? いいよね!? いいはずだうっしゃぁ!」

「やめろ馬鹿野郎! 何考えてんだ離れろ気色悪い! いつも以上に意味不明だぞ!」


 えぇい意味なんてそんなもの、この可愛さの前では無駄無駄ぁ! 

 私は本能に導かれるまま天使と化したナオきゅんに掴みかかってスーハースーハークンカクンカと、

『可愛いものを愛でたい』という生物としてのごく自然な欲求を満たします。


「ついに手に入れた私の嫁! もう離さない!」

「正気に戻れバカノン! あぁ! せっかくの服にヨダレが! シワが!」

「あらあら、大好評ねぇ。その興奮っぷり、渋沢センパイを思い出すわぁ……」


 このまま仕事に戻るつもりなのでしょうか?

 ミニワゴンの運転席に座ったままのミチルさんに、ロッキーさんが手を振ります。


「そんじゃま、ミチルちゃん、ゴクローさん。あとはワイに任せときぃ」

「うふっ。ジョージさまに、ヨロシクねぇ。……あ、それと」


 ミチルさんはナオきゅんに『だいしゅきホールド』する私に視線を向けて。


「カノンちゃん、って言ったかしら。今度、ウチの店に遊びにいらっしゃぁ~い。もしよかったら昔の渋沢センパイやジョージさまのこと、色々と教えてあげるわよ~ん?」

「あ、はい! ありがとうございます!」

「んふ。そのときはもちろん、ジョージさまも一緒にね♪」

「任せてください!」


 ビシッ。

 片手で敬礼する私に、ミチルさんは満足気な笑みで手を振ってくれます。

 

 ブルルルッ……

 そしてミニワゴンが発進。

 ミチルさんは町中へと消えていきました。


「それにしてもジョーちゃん。なんや、さっきはえらいシリアスな顔しとったけど、ワイら待っとるあいだに何かあったんかい?」

「はて? 何かありましたっけ?」


 そんな気もしますが、今はそれどころではありません。

 すでに終わってしまった過去よりも、大事なのは現在。

 私は一瞬を生きる女なのです。

 なので。


「ペロペロ! おねがいだからナオきゅんもっとペロペロさせて!」

「クッ! ウゼェ! いい加減に、離れろッ!」


 ゴッツンコ☆


「~~~ッ、まだまだぁ!」

「うぉ、しぶとい!? っていうかキモい! えぇい離れろ!」


 ゴツゴッツンコ☆ 

 ベリッ! ゲシゲシゲシゲシ……ッ!


「ふぬぬぬ……テンション上がってキターッ!」

「こいつ不死身か!?」

「あー、ボウズ。たぶんそれ、逆効果やで? ジョーちゃん完全に悦んどるわ」


 ロッキーさんの言うとおり、アドレナリンが大量分泌されているのか、ナオきゅんのゲンコツや足蹴にいつもより興奮してしまう私なのでした。


かくして『男の娘』が降臨。

次回、ジョージさんとご対面です。


お読みいただき、ありがとうございました。

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