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〈chapter:06-02〉

【前回のあらすじ】


 速攻でナオきゅんの心が折られました。

「で、ボウズ。おまえはこのあと、どないするんや? まさかこのまま泣き寝入りか?」

「……っ!」


 意地悪く問いかけるロッキーさん。

 ナオきゅんの瞳に生気が戻ります。


「んなわけ……あるわけないじゃないですか! まだまだ俺はイケますよ!」

「よっしゃ、その意気や! やっぱガキんちょはそうやないとのう!」

「うす! それじゃあ行ってきます!」

「ちょい待ち」

 ガシッ。

「ぐぇ!」


 ふたたび勢いよく特攻しようとしたところで後ろからシャツの襟を掴まれ、ナオきゅんは首を絞められたニワトリみたいな悲鳴を漏らしました。


「ゲホゲホッ……な、なにをするんですかロッキー先生!」

「若人よ。たしかに元気なんはガキの特権やけど、それだけじゃあ問題は解決せぇへんでぇ? オンナの扱いと一緒や。若さに頼ってとにかく回数こなせばいいってもんやない」

「まあ私としては、たとえ一日二桁でも付き合うことに吝かではありませんが!」

「それじゃあいったい、俺にどうしろと?」


 私の発言は当然のようにスルーです。

 もう慣れました。


「ひとつ、ためになる話をしてやるわ」


 ナオきゅんの真摯な瞳を受けて、ロッキーさんが滔々と話し出します。


「むかしむかし、今からもう十年以上前になるか。この街に、とてもヤンチャなヤンキーがおりました。んでそいつはある日、いくら声をかけてもいっこうに自分になびかないとある女子の家に、力づくで押し入ろうとしました。せやけどその現場を運悪く、その家に住み着いとる凶暴な『番犬』に見つかってしもうて……

 そいつはどないなったと思う?」

「い、いえ……」

「どうなったんですか?」

「翌日、そいつは全身ボコボコ痣だらけで全裸に剥かれケツからモップを生やした簀巻きの状態で、近くの公衆トイレから発見されましたとさ」

「「 …… 」」


 さぁー。

 一気に血の気が引きます。ドン引きです。


「とまあそんなことがあって、このへんでも有名だった不良くんは、今じゃあ町の『キティハウス』で看板娘として立派に働いとるっちゅーワケや」

「ああ、どうりでミチルさん、興奮するとヤンキー口調になるわけですね……」


 繁華街にある雑貨屋『キティハウス』といえば、メジャーどころからマニアックなものまで幅広いキャラクターグッズを手頃な値段と豊富な品揃えで取り扱った人気店であり、そのオーナーである通称『ミチルちゃん』は、私も知っている、オカマキャラで親しまれているこの町の有名人です。


「で、話を戻すけど、そういうことがあって、その事件を機にそいつは文字通り、身も心もすっかり様変わりしてもうた。けどそうなってからは不思議と『番犬』の『飼い主』とは気が合うようになったんか、今度は本人にお呼ばれしてちょくちょく家に遊びに来るようになった。そんときにはもう『番犬』は、そいつになぁーんもせんかったわ」


 あー、たしかに。

 ママって、そういう『ちょっと変わった』お友だちが多いですもんね。


「どや? この話から得られる教訓は何や?」

「えぇーそんなこと言われても、変態の考えることなんてわかりませんよぉー」

「まあたしかにジョージはまぎれもない変態やけど。そこを頑張って! 何とか!」

「……その『番犬』の警戒対象には、明確な『区切り』がある」


 ポツリと、ナオきゅんが呟きます。


「それでもし『番犬』……弧来先生が、俺の考えているとおりの判断基準の持ち主なら、その線引きは自分の身内に、第三者が危害を加えるかどうかです。そしておそらくその基準はきわめてシビアであり、異性ではたとえ本人とどれだけ仲が良くてもアウト。むしろ警戒の対象にさえなるはず」

「で? 続けてみぃ」

「はい。しかしですね……ロッキー先生の話を聞く限りでは、そうした線引きにも『抜け道』があります。たとえばその護衛対象と仲のいい同性。あるいはもはや、異性とは認識できない人物。そういった人物ならば……弧来先生はそれを、その人の『友人』枠として、許容できるのではないでしょうか?」

「ということは、つまり?」(にやにや)

「つ、つまり……」(ごくり)

「つ、つまりどうすればいいのかな、ナオきゅんっ!? 教えて教えて!」(はあはあ!)


 焦らさないでナオきゅん! 

 はやく! はやくファイナルアンサーを!


「つまり俺『女装』をすれば……問題は、ないってことですよね?」


 ご褒美キターッ!


 郷に入りては郷に従え。

 朱に交われば赤くなる。 

 つまり変態の懐に飛ぶ込むには、自らもまた変態にならなければなりません。


 お読みいただき、ありがとうございます。

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