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〈chapter:05-06〉

【前回のあらすじ】


カノンはプレッシャーに耐えられなかった!

「……あっ」


 私はすぐに、藪蛇をつついてしまいましたことに気づきました。


「あー、そやなー。やっぱ気になるわなぁー」


 苦笑を浮かべつつ、ロッキーさんは頭を掻きます。

 その隣では、ナオきゅんが般若のように顔をしかめていました。

 苛立っているその瞳にはありありと「このバカが。余計なこと言いやがってあとで絶対シバく」という容赦ない宣告が浮かんでいます。ヤバい。泣きそうです。


「せやな。簡単に言えば、見解の相違やな」


 そんな剣呑な空気を察してか、ロッキーさんは話の続きを切り出してくれました。


「まああのバカタレにも面子ってもんがあるやろうから細部は語れへんけど、ようはアイツのことを想ってしてやったワイの忠告を、あのバカタレが素直に聞き入れへんかったっちゅーだけのハナシや」

「忠告っていうと、やっぱり、マンガ関係のことですか?」

「おう。いちおう、師匠と弟子やからな」


 そんなことを言うロッキーさんの顔は相変わらず笑っていますが……

 その奥の瞳に宿る眼光といいますか、言葉の端々から感じられる凄みが、その話の重さを匂わせています。

 おそらくロッキーさんは、漫画家として、砂金さんにとても大事なアドバイスをした。

 それを出しである砂金さんは、ないがしろにした。

 その結果の、あの騒動。

 不和であり、対立。

 不協和音。

 それが意味するところは……


「……あの、もしかして破門、なんてことはないですよね?」

「さあのう。それはあのバカタレの態度次第や」


 つまり自分からは譲歩するつもりはない、と。

 それが受け入れられないようであれば、私が口にした『最悪』も有り得る、と。

 それまでのヘラヘラとしたロッキーさんの態度からは予想もできない硬質な態度に、私はおもわず黙り込んでしまいます。


「厳しい……しかしそれが、漫画道か。深いですね」


 ナオきゅんはその隣でしきりにうんうんと頷いていました。

 よくわかりませんが、ロッキーさんの言葉に感心したようです。

 正直今日のナオきゅんは、ちょっと空気に流され易すぎだと思います。


「とまあ、オモンないハナシはこれくらいにして……」


 ピタリ。

 ロッキーさんが足を止めました。


「……そろそろ今日の、メインディッシュといこうか」


 ニマァ……

 先程までの圧力を消し、ロッキーさんが示す先には、ジョージさんの家があります。

 いつのまにか私たちは目的地に到着していたようですね。


「じゃあワイはちょっと『準備』があるさかい、ふたりは先に行っといてぇな」

「あれ? ロッキーさんも、一緒に行かないんですか?」

「ええからええから」


 タイトなジーパンのポケットから虎柄の携帯電話を取り出したロッキーさんの顔には、なぜか悪戯小僧の笑みが張り付いていました。どうしましょう。とてつもなく不安です。


「とりあえず、ふたりだけで顔を覗かせてみぃ。ワイの出番はそのあとや」

 

 出番? 

 はて。いったいどういう意味でしょうか?

 ロッキーさんの意味深な態度は気になりますが、しかし目的地を前にしてあきらかにそわそわしているナオきゅんをこのままにはしておけません。


 あぁもう、そんなに目をキラキラさせちゃって……

 可愛いなぁ! 

 鼻血が出ちまいそうです。


「……ふぅふぅ……お、落ち着くのだ茉莉花音……まずはナオきゅんをジョージさんに紹介して……部屋に連れ込んで……欲望開放ホンバンは、それからだ……っ!」

「おいバカノン。何をブツブツ言ってんだよ」

「いえいえ、なぁーんでもありませんよっ♪」


 にっこり。

 こみ上げるパトスを抑え込み、満面の笑みで振り返ります。

 ここにきて獲物、もといナオきゅんに警戒心を抱かせる私ではありません。


「(ブルルッ……)な、なんだ。急に悪寒が……?」

「さ、行きましょナオきゅん。さあさあさあ♪」


 ちなみに今日の私の下着は勝負用です。

 本気と書いて、マジなのです。


 さらに念のため、カノンちゃんの部屋にはスタンガンが用意してあります。

 もちろん防犯目的ではなく、奇襲用です。


 お読みいただき、ありがとうございます。

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