〈chapter:05-04〉
【前回のあらすじ】
新キャラ登場です。
「……あークソ、アカン。あのバカタレ、ケータイの電源切っとりやがる」
ボリボリと髪を掻きながらボヤく、先程まで私が拘束していた男の人。
「す、すいませんでしたぁ!」
「……ぐすっ。ごめんなさぁい……」
男の眼前では、ナオきゅんが土下座の姿勢で頭を下げています。
ついでにその隣で土下座する私の頭を、ゴリゴリと地面に押さえつけています。
あぁ……
おでこに当たる地面が冷たい……
「あぁ、ええってええって。とりあえずふたりとも、顔をあげぇや」
「で、でも俺……っていうかこのバカが、六道先生に大変失礼なことを……」
「だからええって。むしろそのジョーちゃんの勇気には、ワイは拍手を送りたいぐらいなんやで?」
なんて、人懐っこい笑みを浮かべてそんなことを言ってくれる男の人。
そのお言葉に甘えて、ようやく私たちは頭を上げます。
「そんじゃ、改めて自己紹介や。ワイは六本木鹿郎。知り合いにはロッキーなんて呼ばれとるから、ジョーちゃんたちもそう呼んでくれてかまへんで。んで、そっちのボウズは知っとるみたいやけど──」
「は、はい! ロッキーさんのご職業は、漫画家なんですよね! ペンネームは『六道鹿路』。先生の作品は、ほとんど拝見させていただいております!」
そうなのです。
この関西弁の殿方は、どうやらわりと有名な漫画家さんらしく……
ナオきゅんはそのファンであり、遅れてその正体に気づいたナオきゅんが慌ててロッキーさんの身体を拘束していた私を取り押さえて、先ほどの状況に至ったわけです。
ツンツンにセットされた硬質の髪。
瞳は切れ長の細目で、鼻梁はさほど高くないものの、全体的な顔のバランスはかなり整っています。
しかし人懐っこい笑みを浮かべるその表情は、どこか捉えどころがありません。ジョージさんと同じくらい高身長で細身なその体格も、飄々とした印象を強めています。
笑顔を浮かべた狐さん。
それがロッキーさんに対する私の第一印象です。
「なんやボウズ、ワイのマンガの読者さまかいな。そりゃ、有難いなぁ」
「い、いいえこちらこそ! 先生にお会い出来て光栄です!」
「で、そっちのジョーちゃんは──」
「ま、茉莉花音と言います! 先程は、大変申し訳ありませんでした!」
「ん? 茉莉やて」
と、そこで何かが引っかかったのか。
ロッキーさんはただでさえ細い目をさらに細めて、ジロジロと私を鑑賞してきました。
「だ、ダメですよロッキーさん! 私には、ナオきゅんという運命の殿方が!」
「あー、ちゃうちゃう。そういうんじゃないんや。……っていうかジョーちゃん、もしかして最近、ちょっと変わった男の家に転がり込んだりしとらんよな?」
「ふぇっ!?」
ななな、なんなんでしょうこの人は!?
ただの自己紹介からそこまで私の個人情報を汲み取るだなんて……
まさかエスパー!?
それともストーカー!?
……いや、まだです。
落ち着きなさい茉莉花音。
決め付けるのはまだ早い。
先ほどの早合点を繰り返してはなりません。
冷静さを取り戻した私はロッキーさんの言葉が単なるカマかけである可能性を考慮して、逆にこちらからもう一歩、踏み込んだ質問をしてみます。
「はて? 変わった男とは、いったいどういう男性ですか?」
「常軌を逸したシスコンや」
間違いありません。
それは高確率でジョージさんです。
っていうかこの人、本当に何者……っ!?
「あー、スマンすまん。そない、警戒せんといてやぁ。……っていうか、くくっ。なるほどなぁ、さすが渋沢センパイの娘さんや。さっきの行動といい、反応といい、センパイによう似とる」
「渋沢センパイ……って、まさかママを知っているんですか?」
「ああ。それに茉莉センパイのことも知っとるで? なんせワイは、渋沢センパイらの後輩やからな。で、ジョージはそんときの同級生で、今でもちょくちょく連絡を取りおうとる。ワイがジョーちゃんのことを知っとったんは、そういうワケや」
「はぁ……」
っていうかジョージさん、何勝手に人のこと言いふらしてんですか……。
HPの件といい、はしゃぎすぎでしょう……。
「まあええ。これもなにかの縁や。ちゅーか、そうとしか考えれん。そういうわけでよろしゅうな、茉莉センパイの娘さん」
「は、はぁ……」
そう言って、差し出されたロッキーさんの右手を。
いつのまにかそのペースに呑まれていた私は、苦笑いで握り返したのでした。
というわけで、ようやくジョージさんの友人が登場でした。
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