〈chapter:05-02〉
【前回のあらすじ】
ナオきゅんが藪蛇に足を突っ込みました。
とはいえ、現状のナオきゅんと私。
待ち合わせ場所を直接ジョージさんの家にせず(ナオきゅんはそもそもジョージさんの家を知らないので仕方がありません)いったん街中に集合にしたため、ジョージさんの家に着くまでのあいだは、実質ふたりきりの外出といっても過言ではありません。
ひと組の男女が、休日の街中を、共通の目的をもって散策する。
つまりこれは、やはり、まごうことなきデートなのです。
そしてそれをみすみすと逃す私ではありません。
ええ。
そうですとも。
ナオきゅんにジョージさんとの対面を断念させることは諦めましたが、しかしそれが、この甘美なひとときをすぐに消化してしまう理由にはならないでしょう。
むしろあとの苦しい展開が予測できるからこそ、ここで多くの幸せ成分を補充しておかなければ!
「ねえねえ、ナオきゅ~ん」
私はとなりを歩く仏頂面のマイダーリンに腕を絡め──即座に突き放されつつも。
めげずに猫なで声、かつ満面の笑みで話しかけます。
「見て見て、おいしそうなクレープ屋さん! ちょっと寄っていく?」
「昼メシはさっきコンビニで済ましたからいい」
「そういえばここのデパートのなかに、新しいテナントがいくつか入ったんだって。家具や雑貨のお店もあるらしいから、ちょっと見ていこうよ」
「興味ない」
「あー。もうこの映画やってたんだー。けっこう評判いいらしいよ」
「べつにいい。俺その原作になってる小説読んで、ネタバレしてるし」
「お、ゲーセンゲーセン。プリクラ撮ろうよぉ~」
「やだ。そういうの苦手」
「うぉうカラオケ発見! きゅぴぴぴん!」
「今はそういう気分じゃないから」
「ボーリングっ! ボーリングっ! あるいはバッティングセンターでもいいよ? それともスポッチャいっちゃう?」
「俺、ラ○ンド1の会員カード持ってねえよ」
「あ、あそこの喫茶店。このまえ行ってみたんだけど、内装とかすごくオシャレで雰囲気もイイ感じだったよ~! ちょっと気にならない?」
「全然気にならない」
「うひょう、ネコちゃんだネコちゃん。にゃーお、にゃーお」
「っていうかさぁ!」
おやおや?
ナオきゅんがなぜか不機嫌そうに、腕を組んでおりますぞぉ?
「いい加減、空気読んでくれよ。俺、さっきからあきらかに興味ナッシングだよな。一秒でもはやくおまえとふたりっきりのこの状況を終わらせようと努力してるよな? な?」
「え? たんに恥ずかしがってるだけじゃないの?」
「妄想力が逞しすぎるだろっ!」
あぁもうっ、と唸りながらナオきゅんは頭をガリガリ掻きます。
「いやいや、そんなんじゃねえよ。おまえバカなんだから、そんな見当違いな深読みしなくていいよ。さっきからの俺の態度は見たまんま、聞いたまんまで、純然たるこの状況に対しての関心のなさの現れだよ」
「いや、そんなに懇切丁寧にわたしへの無関心ぶりを説かれると、さすがに乙女心が傷つくっていうか……」
「あ、ごめん。いやべつにそこまで、おまえに興味がないっていうわけじゃなくて──」
「……はぁはぁ……ドM心に、火が点くというか……」
「むしろ本心からキモいと思っているだけだ」
ナオきゅんは真顔で言いました。
その汚物を見るかのごとき冷やかな瞳が、ゾクゾクと背徳的な快感を与えてくれます。
「いいから、さっさと俺を案内してくれよ」
「私の部屋に?」
「変な言い方するな。ジョージさんの家に、だ」
んー。
まあたしかに、引っ張るのもそろそろ限界ですね。
仕方がありません。
「じゃ、そろそろ行こっか」
「ちっ。だから最初からそうしてくれよ」
舌打ちしつつ、私のあとをついてくるナオきゅんを家まで案内しようとした──
そのときです。
「もういいです! 放っておいてくださいっ!」
どこか聞き覚えのある女性の悲鳴が、私たちの耳朶を打ちました。
あからさまな引きで申し訳ありません。
お読みいただき、ありがとうございました。




