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〈chapter:05-01〉 ジョージさんの友人です。

【前回のあらすじ】


 ついにジョージさんの魔の手が学校にまで忍び寄ってきました。

 ここから新章に突入です。

 そうして、ジョージさんとの同居生活が晴れて学校の公認となってから五日後……

 休日の土曜日。

 正午過ぎ。

 五月にしてはやや強すぎる日差しの町中を、私服姿の私とナオきゅんが並んで歩いています。


 ナオきゅんはロングTシャツにポロシャツ。

 ジーパンとスニーカーといった、ラフながら清潔感のある服装です。


 一方で私はおろしたてのシャツにホットパンツ。

 作りの細かい上品なミュール。

 肩に下げたバックは昨日購入したばかりの今年の流行モデルで、チャームポイントである髪留めは、幼いころからここ一番というときに愛用しているお気に入りのものです。


 なにせ今日はこのとおり、ナオきゅんと『デート』なのですから。


 ぐふふ。

 ナオきゅんと『デート』。

 大事なことなので二回確認しました。

 頬が緩んでしまいます。


「……なあバカノン。なんか、キショいこと考えてねぇか?」

「いえ何も」


 おっと危ない危ない。

 私は表情筋を取り繕い、「なんでもないですよー」という澄まし顔を作ります。


(しかしこのチャンスを作ってくれたジョージさんには、感謝しないといけませんねぇ)


 ──なあバカノン。

 ──お願いだから、俺をジョージさんに紹介してくれよ。頼むっ!


 とはつい先日のこと。

 私の通う高校にジョージさんが現れてひと悶着を起こした際に、ジョージさんの姿を見たナオきゅんがそれから数日後、頭を下げて私に申し出たことでした。

 ただでさえナオきゅんからの『お願い』なんて珍しいのに、そのうえ頭まで下げてくるなんて、只事ではありません。

 しかもそのときナオきゅんから得た『答え』は、さらに私を驚愕させるものでした。


「とはいえ私としては、いまだに半信半疑なんですが……」

「ん? なにがだよ?」

「いえナオきゅんを疑うつもりはありませんが、その、ジョージさんの職業がねぇ……」


 あの変態の叔父さんが、売れっ子の小説家さんだなんて。

 その変態っぷりを日常的に見せつけられている私としては、にわかに信じられません。


「なんだ。おまえまだ、狐来先生のこと疑ってんのかよ?」

「ええ」


 それにナオきゅんがそうしたジョージさん、もといペンネーム『弧来こらい』の狂信的なファンだということも信じられない──というか、こちらは信じたくありません。


 だって娘の私だからすぐにわかりましたけど……

 あのペンネームって、ママの名前のアナグラムですよ?

 なんかもう、ここまでくると虫唾が走るというより感心してしまうレベルです。


 そんな変質者に愛しのナオきゅんが憧れを抱き、あまつさえ直接顔を合わせて言葉を交わしたいなんて言い出してくることに、杞憂を抱かずにいられましょうか。

 なにせナオきゅんは普段のクールなその言動からも見て取れるように、憧れの人間がすぐ近くにいるとしても、普通なら決してこんなミーハーなことを言い出すような人間ではないのです。

 それはこの数日間の、悩みぬいたのであろうその葛藤期間からも推し量れます。


 しかしそれでも。

 ナオきゅんは、その気持ちを抑えきれなかったようです。


 ですがだからこそ。

 そこまで深いファンの気持ちを、あの変態の素顔に晒して幻滅させることだけは避けたいのです。


「ねえナオきゅん。もう一度言っておきますけど、ジョージさんは身内の私から見ても、ものすごくハイレベルな変態ですよ? いつ捕まってもおかしくない犯罪者予備軍ですよ? ファンとしては、むしろ逢わないほうがいいかも……」

「かっ。たくおまえは、何も分かってねぇなぁ!」


 ナオきゅんは露骨に眉をしかめました。


「いいかバカノン。狐来先生の行いがそう見えるのは、お前の目が腐っていることを差し引いても、それは『弧来』という作家が、その日常生活からすでに常人には推し量ることのできない境地に達していることを意味しているんだよ。それくらいわかれ」

「とりあえず、ナオきゅんがもう手のつけようのない信者だということは理解しました」


 あと、さりげなく呼吸するように私を罵倒しないでください。

 興奮してしまいますがな。


「……はあ」


 まあもっとも、なんだかんだと言ったところで……

 結局のところ、私がナオきゅんのお願いを断るわけがないんですけどね。


 ナオきゅんは基本無関心ですが、ハマるとどこまでもハマる性格です。


 お読みいただき、ありがとうございました。

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