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〈chapter:04-09〉

【前回のあらすじ】


ジョージさんがカノンちゃんの学校に殴り込みです。

「ああ、えっと……キミはたしか」

「え、あ、はい! あのわたし、高校のときの後輩なのですが、ジョージ先輩は覚えておられませんか!?」

「そうだ、思い出した。たしか朝比奈(朝比奈)……だったかな?」

「っ! は、はいそうです! 一学年下だった、朝比奈です!」


 ジョージさんの反応に、朝比奈先生の顔が『パァ……』と輝きます。

 それどころか普段は『学校一のクールビュティー』と名高い朝比奈先生が、その美貌を耳たぶまで真っ赤に染めて、指を絡め、まるで憧れの先輩を前にした初心な後輩のごとくモジモジしています。

 ……誰だこの可愛い人?


「おやマイドーター。来ていたのかい」


 そこでようやく現場にたどり着いた私に、ジョージさんが気づきました。


「ど、ドーター!? ジョージ先輩は、結婚なされていらしたのですか!?」

「あ、朝比奈先生、落ち着いてください! 先ほどから論点がズレていますよ!」

「普段の冷静なあなたに戻ってください! それに茉莉くん、彼は君の知り合いかね!?」

「あ、はい。この人は渋沢丈治さん。私の叔父さんで、現在の下宿先の家主です」


 それから私はかいつまんで。

 自分が両親の都合で親戚であるジョージさんの家に居候していること。

 そして今日はジョージさんが忘れ物を届けにきてくれたのだということを説明しました。


「というわけです。これで、わかってもらえましたでしょうか?」

「そうですか。ジョージ先輩は、まだ独身なんですね……きゃっ」

「あ、朝比奈先生? べつにそこは、とりたてて注目する情報ではないですよ?」


 なぜか頬を染める朝比奈先生に、数学の先生が慌てて注釈を入れます。


「とにかく渋沢さんは、生徒たちによくない影響を与えているようなので早々にこの場を立ち去ってください。そして茉莉さんは職員室に来るように。いくら親御さんの懇意があるとはいえ、生徒をそのような特殊な環境下に置いておくことはさすがに問題が──」

「ちょっと待ってください、先生」


 そうした数学の先生のごもっともなご指摘は、とりあえず口調だけはいつものクールさを取り戻した朝比奈先生の冷ややかな声が遮りました(でも視線はジョージさんに釘付けです)。


「あの、ジョージ先輩? 再確認ですが、とりあえず現状は、茉莉さんの両親がお仕事の都合で日本に不在。そのため叔父に当たるジョージ先輩が茉莉さんを引き取り、保護者の立場を請け負っているという認識で、間違いはありませんか」

「ザッツライト。問題ない」

「そう……苗字を聞いたときからもしかしたらと思っていたけど……やはりあなたはあの、渋沢先輩と茉莉先輩の娘さんだったのね……」

「あ、朝比奈先生、パパとママのこと知ってるんですか?」

「当然よ。私たちの世代で、渋沢先輩たちのことを知らない人はいないわ」


 ちらり、と感慨深そうに私を一瞥して。

 朝比奈先生はすぐに話を戻します。


「とにかくそういうことでしたら、現在の茉莉さんの保護者はジョージ先輩ということ。つまり進路指導や授業見学などの、茉莉さんにかかわる保護者の呼び出しには、親御さんに代わってジョージ先輩が学校に足をお運びになるということですか?」

「オフコース。その通りだ」

「……だったら問題ありません。茉莉さんはそのままジョージ先輩のもとへ居候をしてください。学校は、私が全力で説得してみせます!」

「「 あ、朝比奈せんせぇっ!? 」」

「それに茉莉さん」


 声が裏返っている先生たちを無視して、朝比奈先生は私に向き直ります。


「これからもなにか不都合があったら、どんどん私に相談してきてね。むしろ私のことを、不在のお母さまだと思って接してくれても構わないわ。そうすると私は、ジョージ先輩の奥さん……きゃっ」


 まるで思春期の女子のように、頬に手を当てて身悶えする二十六歳|(独身)。

 うん、萌えました!


「大丈夫です、先生! 私、すべてを理解しました! これからはできるだけ学校で不祥事を起こして、どんどんジョージさんとの接点を作りますね!」

「ありがとう、茉莉さん。私はこんなにも先生想いの生徒を持てて幸せよ」


 私と朝比奈先生はガッシリと固い握手を交わします。

 他の先生たちはポカンと間の抜けた表情をしており、ジョージさんはただ微笑むのみ。


(それにしても……もしかしてジョージさん、ここまでぜんぶ計算づく?)


 たしかに入れていたはずの財布の紛失。

 それを届けにきたジョージさんが『たまたま』かつての後輩と再会して。

 結果的に学校公認の、『私の保護者』という立場を手に入れる。


 ……これって本当に、ただの『偶然』で済まされる話なのでしょうか?


 キーンコーンカーンコーン。

 そうこうしているうちに昼休憩の終わりを告げるチャイムが鳴り響きました。


「……はあ」


 なんにせよけっきょく私は、昼食を食べられそうにありません。


偶然か策略か。

それはジョージさんだけが知っています。


お読みいただき、ありがとうございました。

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