〈chapter:04-08〉
【前回のあらすじ】
ついにヤツが動き出します。
「ねえねえ、誰、あの人!?」
「モデル?」
「俳優?」
「芸能人?」
「誰でもいいからあんな甘いルックスで、愛を囁かれてみたい……」
「抱かれてみたい……」
「ボロ雑巾のように扱われたい……」
「っ!? な、なあおい、冗談だよなサナエ?」
「トモカ! お願いだからこっちを見てくれよ!」
「だってユイ、俺たち付き合ったばかりじゃん!?」
「うん、でもごめんねユウスケ」
「タっくん、これからもいい友だちでいましょうね」
「あ、でもケイ。ふたりで決めたアドレスは変えるからそのつもりでね」
「「「 ち、ちくしょぉおおおおおお! 」」」
「うわぁ……」
大変です。
校門前が、ちょっとした大惨事になっています。
その原因は言うまでもなく、フランス映画に出てくる『待ち合わせ場所で恋人を待つ美青年』さながらに、校門に背中を預けて空を眺め時間を潰しているジョージさん。
薄手のジャケットにサングラス。
高級そうな時計にシルバーの首飾り。
革靴に、その長い足を際立たせる立体ジーンズ。
そのシンプルながらもバランスのとれた『大人の色気』を高密度で撒き散らせている超絶美形の降臨に、いつのまにか校門前には多くの人だかりができています。
そしてその半分……
つまり女子たちは目をハートマークにしている一方で。
男子たちは自分よりも圧倒的に上位な『雄』を前に戸惑いを隠せません。
なかには唐突に彼女に別れを告げられ、涙目で走り去っていく男子の姿もありました。
あわわ、修羅場です。
地獄絵図です。
どうしてあの叔父さんは、登場だけでここまで場を混沌とさせることができるのでしょうか?
「あ、あの人が、カノンちゃんの同居人……っ」
そしてなぜユリりんは般若のような顔で、ギリギリと爪を噛んでいるのでしょうか?
「っ!? ま、マジかよ……っ!?」
「ん? なになに、どうしたのナオきゅん?」
そのうえこちらは珍しいことに。
普段はクールなナオきゅんまでもが、なぜか目を見開いており……
「ちょっと、そこのあなた!」
「いったい何者ですか!?」
「生徒の関係者ですか!?」
そのときです。
ようやく騒ぎを聞きつけてきたらしい先生方が登場。
生徒たちの人垣を掻き分けて、厳しい表情でジョージさんに近づいていきます。
「あなた、いったい何者ですか!? とりあえず素生と目的を仰ってください!」
「また、それらを証明できるものがありますか?」
「場合によっては警察を呼びますよ!」
マズいマズい。
これは非常によろしくない展開ですよ。
ジョージさんに(おそらく)他意がないとはいえ、事態がここまで大事に発展してしまっている以上、学校の治安を司る彼らが出張ってくるのは当然の成り行きです。
しかも血相を変えてジョージに詰め寄る先生方のなかには、神経質なことで有名な数学の先生。
鉄拳指導でしられる生活指導の先生。
さらには私たちの担任である、朝比奈先生の姿までもがあります。
「っ! ちょ、ちょっと私、行ってきますね!」
「あ、おい待てよバカノン!」
「カノンちゃん!」
「いいからふたりは、そこにいてください!」
同伴のふたりまで巻き添えをくらわせるわけにはいきません!
ナオきゅんたちをその場に残し、慌ててジョージさんのもとへ向かいます。
いかにジョージさんが変態とはいえ、身内にサイフを届けさせたあげくに警察沙汰というのはあまりに忍びありませんからね。
とにかくここは私が関係者だと名乗り出て、ジョージさんの潔白を証明しないと……
「って、人ジャマ! どいてどいて!」
んもう!
野次馬のせいで、全然前に進めないじゃないですか!
そうしているあいだにも、先生たちはジョージさんに詰めて寄って……
「……あれ? もしかして、ジョージ先輩ですか?」
と……不意に。
場の空気が変わりました。
なにせそれまで他の先生たちと同様にジョージに詰め寄っていた朝比奈先生が。
なんの脈絡もなく。
それまで一言も発していないジョージさんの名前を、呼んだのですから……
なぜか学校に犬とかが紛れ込むと、大騒ぎになりましたよね。
あれ、ぜったい犬の方もチヤホヤされるのを狙っていたと思います。
お読みいただき、ありがとうございました。




