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〈chapter:04-07〉

【前回のあらすじ】


カノンちゃんに迫る不吉な影の正体とは……!?

「おいバカノン。なんかケータイ鳴ってねえか?」

「え? 誰だろ?」


 平日のお昼の、このタイミングで着信……?

 そこはかとなく不安を覚えつつも、私はスマホを取り出してメールを確認すると……


【発信者】──渋沢丈治

【タイトル】──忘れ物

【本文】──マイドーター、財布を届けにきたよ。校門で待っているから(^^)v

 

 ビンゴ。

 悪い予感が的中です。


「っていうか私、ジョージさんのアドレスとか登録した覚えがないんですけど……?」


 いつのまにか知らないアドレスがケータイに登録されていることもさることながら、その本人が、私ですらついさっきまで知らなかった忘れ物をもって学校にやってきていることにもはや戦慄を覚えます。

 完全に悪質なストーカーの所業です。


「え? ジョージさん? 誰ですかそれは?」

「ああ、もしかして例の、バカノンの叔父さんか」

「ええ、そうなんですけど……」


 とりあえずまだ事情を知らないユリりんに、ジョージさんの説明をすると……

 すっ……と。

 話の途中で、なぜかユリりんは私から顔を背けてしまいました。


「……くっ……またカノンちゃんにたかる蛆虫が……すぐに摺り潰さないと……」


 なぜでしょう。

 その背中からはドス黒いものを感じます。


「カノンちゃん」


 くるり。

 こちらに向き直ったユリりんは、いつもの穏やかな笑みを浮かべていました。


「任せてくださいカノンちゃん。その変質者は、私が全力をもって駆除しますから!」

「ユリりん!? ちゃんと私の話を聞いてた!?」


 たしかにジョージさんは変態だけど、駆除されるほどの悪人ではないよ!


 ブブブッ。

 ブブブッ。

 そんな私たちを急かすように、ふたたびケータイがメールを受信。


 スパン短っ!

 さっきのメールから数分と経っていませんよ!?

 このまま放置していると、私のメールホルダーはおびただしい量の変質者からのメールで埋め尽くされてしまうことでしょう。


 ……はあ。

 仕方がありませんね。


「じゃあちょっと私、行ってきますね」

「あ、じゃあわたしもご一緒します!」


 食事の途中で重箱を布で包み、ユリりんが同行を申し出てくれます。


「ありがとー。じゃ、行こうかナオきゅん?」

「え? なんで俺がナチュラルに頭数に入ってんの?」

「え? だって常識じゃないですか?」


 病めるときも。

 健やかなるときも。

 たとえお財布を受け取りに行くときも……

 夫婦とはつねに、一緒にいるものです。


「……はぁ。ったく、めんどくせぇなあ」

「おやおや? とか言いつつも今回はやけに素直についてきてくれますねぇ。……はっ! さてはようやくデレましたか!」

「そんなんじゃねーよ。でもどうせおまえ、俺が行くって言うまでずっと駄々こねるつもりだったろ?」

「まあ、当然そうですけど?」

「当然じゃねえよ馬鹿野郎。……ちっ」


 舌打ちしつつ、渋々とナオきゅんは席を立ちます。


「……そりゃ、おまえだけだったら絶対に無視するけどなぁ、その『叔父さん』とやらまでこれ以上待たせるわけにはいかねえだろうが」

「うんうん。ナオきゅんの仰ることはもっともだけど、それは逆説的に少々私を雑に扱いすぎでは?」

「まあ、当然そうですけど?」

「全然悪びれてないですとぉ!?」

「もうっ、だからそうやって、すぐにわたくしを仲間はずれにしないでくださいっ!」 


 なんて。

 他愛のない『普段どおり』の遣り取りを交えながら……

 私はあきらかに『普通ではない』変態のもとへ、なんの覚悟もないまま足を運んでしまうのでした。


基本的にナオきゅんは常識人です。

ただちょっと、カノンちゃんを心の底から軽視しているだけです。


お読みいただき、ありがとうございました。

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