〈chapter:04-02〉
【前回のあらすじ】
ナオきゅんはツンツンです。
「……っ!」
心臓がドコンドコンとビートを刻み、全身の血液が沸騰します。
理性?
なにそれ?
はたしてそれはこの局面で、重要視されるものなのでしょうか?
……断じて否っ!
私は本能の赴くまま、机から身を乗り出してナオきゅんに飛びかかりました。
「ナオきゅん好き好きらいしゅきぃ! 結婚してしてぇえええっ!」
「うぉっ、ついに気が狂ったかバカノン! えぇい離れろ! あっちいけ! クラスのみんなが見てるだろうが!」
「イヤだね離さない! 今日こそナオきゅんを私のお嫁さんにするんだぃ!」
「それ逆じゃねぇ!?」
「大丈夫、うちのパパは常日頃から『俺の娘に手を出す男は全員去勢してやる!』って息巻いてるけど、お嫁さんに関してはノーコメントだから!」
「そりゃあふつう娘が嫁をつれてくるとは思ってねえだろうよ!」
「ナオきゅんぐらい可愛ければお嫁さんになれるよ!」
「なぜそこでおまえがキレる!?」
「じゃあ私をお嫁さんにしてくれるの!?」
「断固として断る!」
「ほらっ! それじゃあやっぱり、ナオきゅんがお嫁さんになるしかないじゃない!」
「いやだから、そもそもおまえのなかでそれ以外の選択肢はねえのかよ!?」
「ブブー。残念ながら茉莉花音シナリオは、ナオきゅんルート一択ですぅ~」
「いつのまに立っていたのかもわからないうえにオリハルコン製かよ……。理不尽すぎるだろ、このクソゲーフラグ……」
「うふふふ私の愛からは逃れられませんよぉ……?」
ようやく観念して私の愛を受け入れてくれたのか、疲れた顔で抵抗の気配をなくしたナオきゅん。
これは好機です。
今のうちに丹念に、ナオきゅんにプニプニほっぺに私の匂いをマーキングしないと。
うりぃ!
うりうりうりぃ~っ!
「すとぉぉぉぉぉ~っぷですっ!」
そのときです。
ドンッ!
と、私たちのすぐ近くの机に荷物が乱暴に降ろされる音。
同時に制服に包まれた細長い腕が伸びてきて、愛し合うふたりを無情にも引き離します。
「かかかカノンちゃん、いったい朝から、何をしているんですか!?」
「委員長、遅ぇよ!」
「あ、ユリりん、おはー」
なぜか救世主を見つけたような顔のナオきゅんと、笑顔で手を振る私。
私たちの視線の先には、たった今登校してきたらしいこのクラスの委員長こと、東雲百合江ちゃんの姿があります。
ストレートロングの艶やかな黒髪に、おっとりとした垂れ目。
一見して日本人形のように整った顔立ちを持つ美少女ですが、しかしその体格は、一般的な女子中学生の標準を大きく逸脱しています。
具体的にはその胸に、規格外の生物兵器をふたつも装備しているのです。
赤くもないのにその戦闘力は、私のゆうに三倍以上……
おそらく『E』はあります。
多くの女子からは羨望を。
男子からは崇拝を。
一心に集めるそれらを今日も『たゆんたゆんっ』と豪快に揺らしながら、垂れ目巨乳のクラス委員長はなぜか『キッ』と、ナオきゅんを睨みつけました。
「それに直江くんも、こんな人前で堂々とカノンちゃんを誘惑しないでください!」
「いや、ふつう男が誘惑する立場っておかしいだろ……?」
ちなみに私とユリりんは大の仲良しです。
親友といっても過言ではありません。
その付き合いは小学校に上がる前からであり、パパやママの交友関係上、幼稚園にあがるころには私はたびたび、ユリりんの実家に出入りしていました。
「この泥棒猫が! カノンちゃんから離れなさい!」
「おいまた委員長がヒートアップしてるじゃねえか。バカノン、何とかしろよ!」
「あぅあぅ~」
しかしそのときすでにナオきゅんから引き剥がされ、ユリりんのふかふかマシュマロ大山脈に顔を包み込まれていた私は、ヘブン顔で蕩けていました。
正直、現世のこととかどうでもいいです。
「マジ使えねぇな!」
ナオきゅんの絶叫が、どこか遠く聴こえます……。
というわけで、ナオきゅんにライバル(?)出現です。
お読みいただき、ありがとうございました。




