〈chapter:04-01〉 ジョージさんの襲来です。
【前回のあらすじ】
カノンちゃんと変態の同居生活が確定しました。
「ねえねえナオきゅん、ちゅーしてくださいっ♪」
「いや、意味わかんねーから」
というわけでジョージさんとの同居生活が始まって一週間ほどが経過した月曜日。
五月六日。
つまりはGWが明けた登校日の初日。
私は新居であるジョージさんの家からから慣れない道のりを使って学校に登校し、教室でいつものようにカバーのかかった文庫本を読んでいた彼の隣に着席。
GW中に疲れ切ったマイハートをケアすべく、口をタコのように尖らせてニュッと突き出しました。
愛しのマイダーリンはそれを一瞥することもなくスルーです。
いつものことです。
ふふ、この照れ屋さんめっ!
ちなみにこの、やや小柄で吊り目で童顔の、
確実にそのへんの女子よりも可愛い『男の娘』……もとい美少年は直江秋良くん。
愛称は『ナオきゅん』。
私の同級生であり、幼馴染みでもあり、かつ前世から運命で結ばれた魂の伴侶です。
「……なんだろう。なんか今無性にイラっとしたわ。バカノン、おまえまた、変なこと考えてねーだろうな?」
「うふふそれは、私とナオきゅんが以心伝心しているという解釈でOK?」
「あれ? だったらなんでおまえまだ生きてんの?」
「んもうナオきゅんったら、今日も素直じゃないんだからっ。可愛いなぁっ♪」
「……おまえは今日も普通に気持ちわりぃな。あっち行けよ」
ジト目で辛辣な毒を吐きながら、椅子ごと身体を引いて距離をとるナオきゅん。
ゾクゾク。
あぁ、これこれ……っ。
これがないと、やっぱり一日がはじまった気がしませんねぇ……っ!
とくにここ数日は慣れない新生活によって表面上はそれなりに取り繕っていましたが、やはり心中は確実に疲弊していたのでしょう。
こうしたナオきゅんの態度は格別です。
「すーっ」
私はさも大森林のなかで立ち尽くすかのように瞳を閉じ、両手を広げて、深呼吸。
マイナスイオンをたっぷりと含んだナオきゅんの冷たい視線を全身に浴びました。
「キモっ」
そんな私を見てナオきゅんはさらに引いていました。
可愛いなぁ、もうっ!
「……なんだよバカノン。今日はいつにも増してキモいじゃねえか」
でもそうした私の行動に、幼馴染みなりに何かを感じ取ってくれたのでしょうか。
ナオきゅんは読んでいた文庫本を閉じて、ようやく私のほうを向いてくれました。
愛を感じます。
「えっ、気になる気になる!? やっぱり気になっちゃいますか!?」
「気になるというか、気に障る」
「んもうっ、素直じゃないんだからぁ♪」
「……どうせろくでもないことなんだろうけど、延々とそのテンションに付き合うのはめんどいからさっさと喋れ」
「えぇー。どうしよっかなぁー♪」
「調子に乗るな」
「ひぃ」
握り締めた拳を掲げるナオきゅんに、条件反射で頭を守ってしまいます。
ナオきゅんが拳を下げるのを待って、私は話を再開しました。
「……んー、でもべつに、大したことはありませんよ」
「本当に?」
「はい。ただこのGWから今までほとんど会ったことのない、美形でお金持ちで優しい変態の叔父さんと同居生活を送ることになっただけです」
「……なんつーかそれはもう、短編小説ならそれだけで丸々一話ぶんくらいはネタがつくれそうな激変ぶりだな」
ナオきゅんは面倒くさそうにボリボリと頭を掻きました。
「……あー。で、なんでよ?」
「へ?」
「だからいったいなんで、そんなマンガやドラマみたいな急展開になっているわけよ?」
「……ナオきゅん。私のいうこと、信じてくれるんですか?」
自分で言っておいてなんですが、にわかには信じがたい話だと思うのですが……?
「んなの、あたりまえだろ。
おまえが嘘をついているのかどうかぐらい、目を見りゃ一発でわかるっつーの」
ナオきゅんは、ひどくつまらなそうに眉をひそめました。
「……いちおうこれでも、おまえの幼馴染みだからな」
「……っ!」
瞬間、私の脳裏で『パァ……』と無数の花弁が咲き乱れました。
ナオきゅんは躾はしっかりとする方針です。
お読みいただき、ありがとうございました。




