〈chapter:03-08〉
【前回のあらすじ】
完全に油断していたカノンちゃんに、ジョージさんの毒牙が襲いかかりました。
「そ、それにしても──」
私はこの話しを引っ張ることに本能的な危険を覚えたため、なんとか別の話題を探します。
目についたのは、部屋の中央に置いてある円形の小型の机。
そのうえにかけられている、細かいレースの刺繍が入った純白のテーブルクロスです。
「あのテーブルクロス、とってもオシャレですよね。とくにあそこにワンポイントで入っている花の刺繍が、とってもキュートです!」
「それはマイドーターの好きそうな花をイメージして縫ったんだ。マイドーターには、春の花がよく似合う」
「……あ、あとあのカーテン! この派手すぎず薄すぎない、ほのかなピンクの色具合が絶妙ですよねっ!」
「ああ、あれは俺も、自信作だ。あの色合いを出すのにはなかなか苦労したよ」
「それにこの机やあの本棚! まるで今のわたしの身長にあつらえたみたいにピッタリじゃないですか!」
「家具作りについては、むかし少々齧ったことがある。素人芸で申し訳ないが、大事に使ってやってくれ」
「それにあのパソコンも、なかなか頼もしそうで──」
「いちおう最新スペックのパーツを使って組み上げて、必要なソフトはひととおりダウンロードしておいた。使い方がわからなければ、遠慮なく聞いてくれ」
「ベッドもフカフカで、とっても寝心地良さそうで──」
「念のため一回手洗いして日干しておいたから、多少は柔らかくなっていると思う。それでもまだ固いようだったら、言ってくれ。すぐに洗い直そう」
「こっ、この衣装棚も、じつに使い勝手が良さそうで……ってあれ? もうすでに中身が入ってる……?」
「ああ。マイドーターの私服の好みまではさすがにわからないが、下着類はある程度揃えておいたほうが便利かと思ってね。ベーシックな白をメインに、あと基本の色を何種類かずつ取り揃えておいた」
「あ、アウトーぉ!」
とうとう堪えられなくなって、私は両手を頭の上でクロスさせました。
もう駄目です。
無視できません。
やっぱりジョージさんは変態でした……っ!
「……? どうしたんだい、マイドーター?」
唐突に床に両手をついてさめざめと嗚咽を漏らす私の行動が理解できないのか、ジョージさんは小首を傾げてさりげなく肩に手を置いてきました。
当然、私はそれを振り払います。
「キシャー! 触るなこの変態!」
「ど、どうしたんだいマイドーター? なにか、俺の行動が気に障ったのか?」
「気になるもなにも、ジョージさん!」
ビシッ!
私は部屋を指さします。
「この部屋、ちょっと頑張りすぎでしょう!? 『ジョージさんプロデュース』っていうかもはや『メイド・イン・ジョージ』みたいになってるじゃないですか!? あなたいったい、どこの万能日曜パパですか!?」
「大事な娘の関わるものにはできうる限りすべてに手を通しておきたい……。そういう、ありふれた父性愛のなせる、いわば愛の力だね」
「いやそれはむしろ、重度のストーカーのみが持ち得る異常な執着心ですよ!」
「大丈夫。俺はキミのストーカーではなく、ファミリーだ」
「なお性質が悪い!」
家の中と外。
どこにも逃げ場がないじゃないですか……っ!
「冗談じゃない。こんな変態と、一緒に暮らせますかーっ!」
ようやく正気に戻った私は、踵を返してこの異常空間からの脱出を図ります。
「っ! させるか!」
しかし唯一の退路である扉は、いちはやく動きを察知した変態によって塞がれてしまいました。
「……っ、そこをどいてくださいジョージさん! マジで警察を呼びますよ!?」
「ふっ。その頃には、すべてが終わっているだろうがな……」(ニヤリ)
「な、なんですとっ!?」
携帯電話を握り締める私に、不敵に笑うジョージさん。
怯える私。
停滞する空気。
加速していく緊迫感。
そして次の瞬間、彼がとった行動とは……っ!?
愛情と狂気って、紙一重ですよね?
お読みいただき、ありがとうございました。




