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〈chapter:03-06〉

【前回のあらすじ】


とりあえずこの段階ではジョージさんの人となりを、慎重に観察しているカノンちゃんです。

 しかしそんな釈然としない私の胸中のモヤモヤは、叔父さんの家に到着するなり、跡形もなく吹き飛んでしまいました。


 洋風の、デザイナーズハウスとでも言うのでしょうか。

 いかにもパパが『三十年ローンで頑張って建てました!』という私の実家とは風格からして異なる、庭にも幅にも余裕のある二階建てガレージ車庫付きの一軒屋。


 格子状の門を開けてなかに入ってみると、デザイナーさんの工夫なのか、実際よりも広い印象を受ける庭園の花壇には鮮やかな季節の色彩が咲き誇っており、その横に立てられた小さなビニールハウスには、何種類かの野菜が栽培されていました。

 敷地を埋める芝生は丁寧に刈り込まれていて、垣間見える緑が瑞々しいです。

 庭の端に植樹された緑葉樹が、心地よさそうな陽だまりを作っています。

 木陰にはガーデニングチェア。

 まるで海外ドラマに出てくるホームセットのような見事な庭園です。

 なにこのステキ空間っ!


「うわぁー、すっごいすごいっ! とってもステキな庭ですね、叔父さん!」

「気に入ってくれたのなら何よりだよ。そして俺のことはジョージと呼んでくれ」


 やんわりと呼称を訂正してくる叔父さんに背中を押されて、家のなかに。

 すると外観からの予想通り、全体的に洋風テイストになっている室内は、しかし予想以上のクオリティをもって私を歓待してくれました。


たとえば廊下。


「えっ!? もしかしてこの家、床暖房ですか!? 冬は冷え性を気にしなくていいの!? それになになに、この照明!? かぁ~わぁ~いぃ~いぃ~♪」

「それはティファニーの限定モデルでね。アールデコ風なのが気に入っている」

「ふわっ、すごいですよ叔父さん! トイレが広いよ! 内装もオシャレ! しかも全自動のうえウォシュレット、消臭機能つきですか!」

「現代人として当然の設備だ。もちろん二階にも同じものを設置してある」


 たとえばキッチン。


「キャー、このカップすっごい綺麗! 使うのがもったいない!」

「それはバカラのグラスだ。気に入ったものを、自分用にするといい」

「うぉおおおおなんだこのバケモノ冷蔵庫ぉー! そして夢のシステムキッチンー! シンクきれーい! 収納スペースが多くてべんりーっ! しかも調理道具が充実! 中華鍋まであるときた! 叔父さん、あなた私にいったい何をご馳走する気ですか!?」

「料理は和洋中と一通り嗜んでいるから、何でも言ってくれ。喜んで腕を振るおう」


たとえば居間。


「ふぉおおおおついに最新の超巨大薄型プラズマテレビまでもが降臨んんんんん! すげーすげー、これ、わたしが両手広げたぐらいあるよーっ! それに……この、瑞々しい空気! ハウスダストの気配がゼロ! これがウワサにきく、マイナスイオン機能付き空気洗浄機の力なのか……っ!」

「マイドーターの肌は敏感だからね。ホコリと乾燥は大敵だ」

「あはは! あはは! なにこのソファ! フッカフカだよ! バインバインだよ! なかに何を仕込んでいるのぉー!?」

「それは知り合いの職人が手掛けた一点ものだ。皮製品はやはり、ドイツ製に限る」


たとえば脱衣場。


「ほぉうぁあああああ! ついに出会えたね憧れの低周波洗濯機くん! それに乾燥機くんも! これで雨の日の湿気も怖くない! んでこっちは……ヤタ! マイナスイオン機能つきドライヤーはっけぇーんっ! それにアイロンも! わっ、これちゃんとロールやウェーブにも対応してるよ! やっべぇ明日からの身だしなみに迷っちゃうぅううう!」

「いちおう必要最低限のスタイリングセットは用意しておいたが、ほかに必要なものがあれば言ってくれ。マイドーターの髪質は俺が守る」

「ふぅっふぅ♪ ふぅっふぅ♪ んもぉー、叔父さんったらこの浴室にいったい何人の女を連れ込む気なんですかぁー? こんなの、下手したら浴槽で水泳の練習できちゃいますよぉー? 私、バタ足の練習とかしちゃいますよぉー?」

「『風呂は命の洗濯』という名言があるからね。ゆっくりとくつろいでくれ」


 そして……


 ここまでの充実ぶりに終始ハイテンションだった私は。

 なんの心構えもないまま。

 完全に油断して。


 とうとう二階に用意された、『あの部屋』に突撃してしまうのでした……


BGMは『デーデン、デーデン……』で有名な、映画【ジョーズ】のテーマ。

背後から確実に、ジョージさんの脅威は迫っています。


お読みいただき、ありがとうございました。

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