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〈chapter:03-05〉

【前回のあらすじ】


カノンちゃんはママ(ヤンデレ)の交渉に屈しました。

 ともあれ。

 そのような経緯でママの提案を受け入れたときに。

 たとえ叔父さんがどんな変態であれ、ある程度までは我慢する覚悟はできていたつもりなのですが……

 いやしかし、これは参りました。

 あまりに想定以上の叔父さんの変人っぷりに、はやくも心が折れそうです。


 しかしそうした私の心情など露知らず、自宅までの道すがら、家の周辺を案内してくれると言って隣を歩く叔父さんは先ほどからすこぶる上機嫌。

 あからさまに気の抜けた返事しかしていない私に、叔父さんは絶えず笑顔で話題を振ってきてくれます。


「ああ。ここのテナントに入っているパスタ屋は、値段のわりにそこそこ美味い。品ぞろえも豊富だから、一度立ち寄ってみるといい」

「……はあ」

「その制服、可愛いね。キュートなマイドーターにとても似合っているよ」

「……はあ」

「ここの喫茶店は知り合いが経営していてね。静かで趣味のいい店だから、フレンドとの待ち合わせや、勉強などで利用するといいだろう」

「……はあ」

「その制服、とても似合っているよ。まるで昔のマイシスターのようだ」

「……はあ」

「この美容院は俺の行きつけだ。今度、紹介してあげよう」

「……はあ」

「それにしてもその制服は、マイドーターの髪によく映えるね。まるでマイドーターのためにあつらえたようなフィッティングしているじゃないか。素晴らしい」

「……はあ。それはどうも、ありがとうございます」


 ……。

 それにしても叔父さん、やたら制服を推してきますね。

 なにか特別な思い入れでもあるのでしょうか? 


 聞くところによると私の通う白鷺中学校は、かつてママやパパ、叔父さん自身も通っていた母校らしいですからね。

 そのあたりが、なにか関係しているのかもしれません。

 まあただ単に、叔父さん個人的な趣味という可能性も否めませんが。

 だとしたらドン引きです。

 

 とはいえ、今はそんなことよりも……


「ねえねえ、あの人超きれい系じゃない?」「モデルかなぁー?」「女優さんかも」「なんにしてもオーラが違うよね~」「うわ足長ぁ~い。顔ちっちゃぁ~い」「……でも、隣のあの子は何かな?」「姉妹にしては歳が離れすぎているような……」「っていうかぶっちゃけ、ぜんぜん似てないよね」「たぶん遠い親戚かなんかでしょ」


 はいはーい。

 正解ー。

 私はこの人の親戚ですよー。

 でもじつは男ですよー。

 っていうか大きなお世話ですよー、この野郎ども!


 ……はぁ。

 とまあ、こんな具合に。

 先ほどからすれ違う人々。

 そのすべてが老若男女を問わずに振り返り、叔父さん(女装)の美貌に見惚れ、感嘆や嫉妬の溜息を漏らしているのです。


「……あぅぅ」

「ん? どうしたんだい、マイドーター?」


 変態の叔父さんを相手にしなければならないストレスに加えて、慣れない視線まで浴びて、私のMPはすでにレッドゾーンに突入。

 つい立ちくらみが……


「おっと」


 叔父さんは迷うことなく、姫君を案じる王子様のように片膝をつき、恭しく両手を広げてきました。


「もしかして具合でも悪いのかい? ノーグッド、それは大変だ。無理はよくない。マイハウスまで運ぶよ、さぁ」

「……いえ。丁重にお断りします」


 この歳でお姫さま抱っこはありません。

 しかも女装男子を相手に。


 っていうかこの人、本当に私の衰弱の原因に気づいていないの? 

 鈍感なの? 

 それとも美形様にはこの程度の羨望や嫉妬は日常茶飯事だから、しょうがないっていうんですか???


 思わずムッと眉根が寄ります。

 するとあくまで無自覚な叔父さん(変態)は、心から心配そうに、優しいハスキーボイスで語りかけてきました。


「とにかく、体調が芳しくないようなら遠慮せずに言ってくれ。俺にできることはなんでもしよう」

「……はぁ」


 まあ……

 悪い人では、ないようですが。


さて、いよいよ次回、カノンちゃんが魔境(ジョージさんの自宅)に突入です。


お読みいただき、ありがとうございました。

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