〈chapter:01-01〉 ジョージさんは変態です。
初めまして。
陽海と申します。
チャレンジだらけの拙作ですが、少しでも気に入ってもらえると嬉しいです。
注意です。
あとで文句を言われても困るのであらかじめ断っておきますが……
この物語はごく普通の女子中学生である私と、
変態である叔父さんとの、
平々凡々な同居生活を綴ったものです。
なのでエンターテイメント性には著しく欠けると思いますがそれでも構わないという物好きの方だけ、どうぞページをおめくりください。
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ドタドタドタドタッ!
定期的にクリーニング業者がワックスをかけ直してくれるというピカピカのフローリング張りの廊下に、私の乱暴な足音が響きます。
目指すはこの家の主の部屋。
渋沢丈児。
通称『ジョージさん』。
ママの弟であり、私の叔父にあたる人物の部屋です。
私は部屋の前に到着するなり、扉をノックすることさえ忘れて中に突撃しました。
「ジョージさんジョージさん! アレはいったい、どういうことですか!?」
「やあ、おはようマイドーター。今日も元気だね」
「すっとぼけないでください!」
フーフーと息を荒げる私に対し、革張りのリクライニングチェアに腰かけてパソコンに向かっていたジョージさんは、クルリと椅子を回転させて優雅に微笑みました。
「とにかく落ち着きたまえマイドーター。せっかくの可愛い顔が台無しだよ?」
「うっ……!」
歯の浮くようなセリフ。
たったそれだけのことで……私は二の句の詰まってしまいます。
まったく。
ジョージさんはズルいです。
この、とことん常識が欠如した変態のもとへ居候するようになってはや数日。
当然その間、毎日顔を合わせている私とジョージさんですが、それでもこうして正面からその美貌と向かい合ってしまうと、いまだに身体が硬直してしまうのです。
ギリシャ神話の神々を模した石膏像のごとき、人間離れした美貌。
かたちのよい柳眉。長い睫毛。切れ長の瞳。
筋の通った鼻梁。薄い唇。
男のくせに肌はびっくりするほど滑らかなで、まるで高級陶磁器のよう。
顔の輪郭はシャープで鋭く、同時に精悍さも感じさせ、百九十二センチという長身は見事な十等身。
しかも細身の筋肉質。
びっくりするほど腰が細くて手足が長いです。
そのうえ烏の濡れ羽色の黒髪には枝毛の一本さえも見当たらず、どこかミステリアスな妖艶さまで醸しているというのだから、もうケチのつけようがありません。
ええ、認めましょうとも。
ジョージさんは絶世の美男子です。
これほど日常という単語が似合わない人間はそうそういません。
たぶんこのままパリコレとかの舞台にあげても、ぶっちぎりで優勝してしまうんじゃないでしょうか?
「それで、いったいなにをそんなに慌てているんだいマイドーター?
俺が相談に乗れることなら何でも言ってくれ。
力になろう」
あくまで真摯な瞳のまま、帰国子女であるというジョージさんは独特の言葉づかいで、そんなことを言ってきます。
口調は穏やか。
声音は耳に心地いいウィスパーボイス。
こちらを見つめる黒真珠の瞳には慈愛と包容の色。
たぶん免疫のない女性なら、この時点でオチていることでしょう。
私もナオきゅんという魂の伴侶がいなければ、この無駄に外見だけパーフェクトな叔父さんに心を奪われていた可能性は否めません。
ですが……
「……ジョージさん。それ、なんですか?」
すでにその正体を知っている私は騙されません。
「ん? それとは?」
「とぼけないでください! それといったら、それです。あなたがたったいまパソコンで編集している、それのことですよ!」
震える声音。
バナナで釘が打てそうなほどに凍えた氷点下の瞳で私が見つめるのは、先ほどまでジョージさんが向かい合っていたパソコン。
そこに表示された、ただいま編集中らしい無数の画像です。
ジョージさんは相変わらず無駄にアルカイックな笑みを浮かべたまま、
「ん? これはちょうど、マイドーターの成長記録を整理していたところだが?」
きっと数百枚にも及ぶ膨大な『私の写真』の前で、むしろ誇らしそうに胸を張ります。
「……じょ……じょっ……」
私の身体は小刻みに震えていました。
喉は無意識のうちに、この数日間で何度目になるかわからない『ある言葉』を吐き出そうとしています。
ちなみに念のため注釈しておきますと、私とジョージさんはあくまで叔父と姪子の関係であり、つい先日まで別々に暮らしていたジョージさんが、パソコンを用いて私の成長記録とやらを編集していい理由にはなりません。
よって断言します。
「ジョージさんは、変態です!」
基本的にひとつの章をこれくらいのページ数にまとめて、チョイチョイ投稿していくつもりです。
あらすじにも書きましたが小説の四コマ漫画バージョンをイメージして作った作品なので、そんな感じで読んでいただけると嬉しいです。
お読みいただき、ありがとうございました。