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初夜(はつよる)


××××年

何年かまでは覚えているが日にちまでは覚えていない。


あれ・・・。そういえば、私は何歳なのだろう・・・。

曖昧な記憶が感情を不安にさせる。もっとも、私にそんな余裕はないが。


揺れる船。

荷物のように一室に敷き詰められた「奴」。

もちろん、もともとはちゃんとした「人」だ。

だが、国は負けたようだ。


「奴」とは、戦争で負けた国なのだ。

皆、ボロボロの服を着て、生気は殆どないといっても過言ではない。


体育座りをしていた自分の腕を見た。

ホコリをかぶったうす黒い自分の腕はあまりにも汚かった。

髪もそう。やはり、すごく汚い。


周りの人々は家族か親戚のような血の繋がりのある者たちで寄り添い合っている。

だが、私の周りには誰もいない。




私は、異国の者だ。そのような私をほかに知る者は、いない。



傍にいた中年男性に聞くとこうなのだと。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



マトリカリア王国、

白の花を咲かす小さな国だった。


国、というよりも村だった。

市場は一か所にしかなければ、交通の便もない。

だが、自然のチカラが大きかった。

花や草木が生い茂り、果実や木の実もたくさん取れた。


それは「地」のチカラが豊富なのだろう。

そう判断した他国は一つの国を滅ぼした。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


私は、ここへ来る途中、何かの黒っぽい液体を飲まされたのは覚えている。

問題はここから。。

記憶障害か、

なにか。






「おら、エサだぜ。おまえらにやるよ。」

パンくずが床に放り投げられた。


「あと水だったかな。」

その上から水がかけられた。


パンくずには水が染み込み、食べられる状態ではなかった。

「・・・臭い。」


かけられた水はすでに腐っていた。


333の法則。


3分酸素がなければ死ぬ。

3日水がなければ死ぬ。

3週間食糧がなければ死ぬ。


食糧が与えられないまま2週間が過ぎた。

部屋には死人の匂いが漂い、むせ返る。


・・・死人の処理すらしてくれないのだ。


どんなに頑張っても、食糧がなければ1ヶ月後には確実に死んでいる。


さて、どうしよう。


なりの良い格好をした船員が出てきた。


「番号を呼ばれた者は前に出ろ。」


「0213、1115、0927、0101、0130、0222、0523、1130、0330、1217、、、・・・・0831」


…呼ばれた。

「0831」は背中の衣服に付いているプレート。

この船の中で私は「0831」だ。


船の見晴の良いところへと連れていかれた。

…眩しい。

久しぶりに太陽を見た。


本当に久しぶりだ。


「今からゲームの始まりだ。」


拳銃を持たされた。

・・・リボルバー式の拳銃だ。

このような、物騒なものを持たされてすることは決まっている。


「円になれ。」


皆、円となる。


「よーし、そのまま…。」


こりゃ、終わったな。


「前の者のこめかみに銃口を向けろ。」


このゲームをロシアンルーレットという。

簡単にいえば、金持ちの奴らが奴隷を使って遊ぶゲームだ。


拳銃に弾が1発だけ入っている。

その引き金を引くのだ。




「銃口」はやはり怖い。

しかも、それを同じ種族に向けろと!?

冗談じゃない!!


怒ってる人、泣いてる人、絶望的な顔をしてる人・・・。


しかも、リボルバー式は自身から見てどこに弾が入っているかが分かる。

これほど残酷なゲームはない。


「早く1115番から撃て!!」


「い、いやだ。撃ちたくない。。」


「早く!!」


その1115番には見えているのだろう。

・・・弾が入っているのだ。


たまたま1発目に入っていたのだ。


「うあぁぁぁぁぁ!!!!」


1115番は錯乱し、船の柱に銃口を向け、撃った。


「・・・そいつを取り押さえろ。」

そういうと、腰から刀を抜き出し、、、


ザッッ


1115番の心臓を貫いた。

「グァ…ッッ」


1115番は白目を向いて床に倒れた。


「どうせ貴様らは炭鉱場で死ぬまで使われるんだ。」


笑みを浮かべて・・







「だったら、今、楽に死にたいだろ?」






その後は有無を言わさず続けられた。

一人、二人、三人、四人・・・と減っていく。






・・・・残った。

なんという奇跡だろうか。


手にチカラが入らない。


頭が動かない。


目に涙が溜まる。




「お~ナイちまったぜ。こいつ。」


「根性ねぇなあ・・。」







私が撃たれる番だ。


残り二人。私とヒョロヒョロした男性。


「やめて・・・・。お願ぃ・・・。」




カチッ、鳴る。


引き金を引く。



「や・・・・・・・めて・・・・・え」





入ってる。確実に弾は入っている。

だって、ここまで来てたら、入ってないはずがない。






カチッカチッ

また鳴らす。








なにがしたくて鳴らすんだ。










やめろ。










やめて。








うるさい。









うるさいの。









『ビーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!』





「おねぇちゃんっ!」





「おねぇちゃんってば!」






だ・・・れ・・・?






「もう八時だよっ!?」




8時・・・・?






「学・校!!!」






え。






「うそっ寝過ごした!?」



「おねぇちゃん汗一杯かいてるんだけど。」


「ゆかりー起きたー?」



「おかーさん!!おねぇちゃん今起きたんだよ!!」

「えー?まだ出てなかったのー?」


「そーだよ!おねぇちゃんのブラシ借りようとして部屋にきたら寝てたんだよお!!」

「あらまー。」




「お母さん、遅刻届とか・・・出してくんない?」

「ダメ。」

「ちぇ。」





「おねぇちゃん!先行くからねっ!」

「はいよー。」








変な夢みたな・・・。


というか、夢だったんだ。


体をぺたぺたと触ってみる。

うん。私の体だ。



あーなんかパン食べてたら夢忘れちゃった。

夢覚えって出来ないんだよね。




結局2時間目に登校。


「うわ、遅かったねー。ゆかり、あんた何してたの。」

「ちょっと悪夢に取りつかれましてw」

「もうちょっと急いで登校しなさいよ。」

「やだぁ。せっかく遅刻したんだから精一杯ゆっくりしなきゃ。」

「アホか。」


パシっと頭を叩かれる。





「だよね。」






弁当も食べ終わる。

部活は特に所属してないし、結構なにもすることがない。


焦るのは・・・テスト期間前ぐらいだね。




「ただいまー」


「おかえりー大丈夫だった?」


「んーちょっと担任の雷落としちゃった♪」


「だめじゃない。」


「罰として買い物行ってきて。」


「えー。」


「・・・ペナルティ増やされたい?」


「スミマセン。行ってきます。」







母は父より怖い。


母の雷だけは落としたくないね。






「ただいまー。」


「ん。おかえり。」




なんかダルイなぁ。。。。


「お母さん、ちょっと先に寝るー。」


「宿題は?」


「・・・終わってますってば。」






ぼふ。とそんなに弾まないベッドに身を投げる。



「もう。寝るわ・・・。」


時計を設定し、床につく。




















また。夢を見た。



「ここは・・・どこ?」





船から投げ出され、波打ち際にいた。




「昨日と。同じ。」





夢はまだ続いている。




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