表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
彼女がいた証拠  作者: とち
春風と二股
1/5

1

 幸せは不幸せだ。

 

 いつだって一番大切なものを失うかもしれない恐怖と、隣り合わせだから。

 

 それならいっそのこと、最初から持たなければいい。

 

 そう思った。



 十真子(とまこ)は急いでいた。入学式から遅刻などしたくない。

 掛けると目の大きさが半分になる眼鏡を、五分程探し回った。


「あっ」

 

 ついさっき、顔を洗おうと鞄に放り込んだことを思い出した。華奢な手で眼鏡を探り当てる。そして、いつものように顔面に押し込んだ。手入れの行き届いた黒髪を軽く梳かした後、新品のパンプスに足をしまう。

 

 スーツを着るのは今日で二回目だった。店で初めて試着した時には、顔から火が出るほど恥ずかしかった。見たことのない自分の姿があった。

 

 口の上手い店員が、似合うと言ってくれたフリルのついたブラウスに、黒のタイトなスカートを合わせる。ジャケットは心なしか、少し余裕があった。体型のせいかもしれない。


「行ってきます」

 

 十真子はつぶやいた。

 

 振り返ると誰もいないワンルームの部屋が見渡せた。自分の好きなものだけが飾ってある。

 

 地味な人生に少しくらい花を添えてもいいだろうと、親元を離れることを決めた。一人暮らしという響きに華やかさを感じていただけで、自分自身何も変わっていない。

 

 ただ、退屈から逃れたかった。

 

 若者によくありがちな悩みを、若者らしい方法で解決してみる。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ